第2話 羞恥の楽園

 うぇーい、学校だるいよー。



 さぁ、例のAV事変から約1時間ほど経ちました。そして勃ちました。はい。

私はもうここから立ちたくありませんっ!もう憂鬱どころじゃないんですよ。

 インターネットで済ませず、わざわざブックオフに赴いたリスクは此処にあると言っても過言ではない。いつもはなぁ、ソッチ系のビデオを購入する時には必ずビニール袋を貰っていた!真っ黒なやつをなぁ!だがしかし、「レジ袋有料」という悪魔のような文字を目の当たりにした途端、最早病気レベルの貧乏性を発症してしまったのである。そして、今に至る。





 レジ袋とは、羞恥心の軽減のためにあるのだ。本来受ける筈もなき辱めを防ぐ、性欲暴発男の救済アイテムである。工作次第ではオ◯ホにもなるし。

......何言ってんだこいつ。俺は寝不足である。頭上の時計の針は天辺を指している。


 普段温厚な笹塚さんが、例の事を言いふらすとは思えない。思いたくもない。俺は忘れないよ、あの眼を。その瞳の中に含まれた五割の驚愕と、四割の侮蔑。残る一割は慈悲であると信じたい。いや、その残り一割も軽蔑だろうな。

 

 彼女の海馬から俺の記憶を抹消したい。忘れてくれ。いや、忘れないだろうなぁ。俺がその立場だったら言いふらしてるし。屋上からビラだって撒く(その行動力があればね)。俺含め、その手の高校生はそっち系の噂が大好きだ。令和の時代、アナログでエロを貫く漢だ。最高だね。もうトイレの個室には二度と入れないだろうな。花柄のトイレットペーパーが一個余分に置かれているだろう。ああ、明日が楽しみだ。おやすみなさい。









 無機質なアラーム音が室内に反響する。スヌーズモードに設定しているのでじきに鳴る。どうも寝付きが悪い。賢者タイムの二日酔いとでもいうべきか。ちょっとした倦怠感が下半身に絡みついている。寝逃げでリセットは出来なかったが、勝負に挑む覚悟は十分に出来た。あとは羞恥の楽園に足を運ぶのみである。

 



 扉は目の前。登校中、空に浮かぶ雲が紫色に見えた。眼科に行ったほうが良いのだろうか。実際、扉の窓を覗くと、その奥は暗闇に見えた。病んでいる。けじめをつけろ、自分。笹塚さんを信じろ。俺を思って黙っててくれているはずだ。



 

 取手に手をかけ、横に引いた瞬間、こんな声が俺の耳に入ってきた。





「よう荻窪、早漏は治ったか?」







Now it's the beginning of the party!!!





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