第7話 あまえた彼女(2日目)

そんなふうに僕達はずっとダラダラしていた。僕は常に彼女と少しの隙間を空けて寝っ転がっていた。僕はまだ彼女とこの距離を埋めては行けないような気がしていたんだ。彼女と僕は、性的な関係を結ぶような、そんな卑しい関係ではないという謎のプライド(?)のようなものがあったからだ。

しかし、この隙間を絶対に保持しようとすると、逆に何か性的なことを意識いているように思われそうで嫌だった。僕はこの隙間を大切にしながらも、この隙間が憎らしくもあった。

彼女はずっとテレビを見ている。僕もそれに合わせてテレビを見ていたが、暇な時間に本当は本を読むのが僕の趣味だ。僕は久しぶりに本棚から本を取り出して読み始めた。恋愛小説である。なんか彼女の前で読むのも恥ずかしいと思ってしまうが、まあいいだろう。

「何読んでるの〜?」

彼女に聞かれた。恥ずかしくてあまり答えたくなかったが仕方ない。

「恋愛小説だよ、小説けっこう読むんだ」

「へえ〜、珍しいね」

小説を読むと珍しいと言われる時代になってしまっているようだ。小説ほど色々な感情を引き出してくれるいい物はないのに。

「暇な時になんか読んでみなよ、意外と良いもんだからさ」

「ん〜、分かった」

こういう場合の勧められたものは実行しないのが普通だろう。勧める側も実際にやることを期待している訳ではない。

しばらくの間、僕は黙って小説を読んでいた。彼女は相変わらずテレビをみて笑っている。二人とも違うことをしているが、隣同士にいてお互い楽しんでいる。お互いに同じことをしていた方が良いような気もしていたが、実際にはこれもなんだか良い時間のように感じた。

しばらく経った時、彼女がこちらを向いた。気にせずに小説を読んでいる僕を見つめている。僕は小説に集中できなくなって彼女に言った。

「なーに」

「ん〜別に」

別にらしい、僕は小説に再び目を向けた。

「ねえ」

彼女が声を掛けてきた。

「だからなにー」

「なんにもだけど」

どうやらかまって欲しいらしい。普段の彼女のキャラクターでは言いづらいんだろう。可愛いところもあるんだなぁと思った。

「おいで」

僕が言ったのに僕がびっくりした。柄にもないセリフを不意に吐いてしまった、彼女との距離を保とうとしていたのに... 男は不意にこういったセリフを自然に言えるようにできているんだろうか。

「うん」

彼女は僕に近づいてきた。僕は彼女の髪を撫でた。黒く輝いていてツヤツヤな髪だった。彼女はそのまま目を閉じて眠り始めた、疲れていたから甘えたくもなっていたんだろう。僕もそろそろ眠くなってきた。彼女とくっついたままで、僕も眠ることにした。彼女の鼓動を感じながら、僕も眠りについていった。


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