第17話 激化2
金金金……この世界金が全てだ。
金を手に入れるためなら何でもするし何人でも殺そう。敵だろうと味方だろうとも。
どうせ自分が幸せになるための駒。
銃の弾薬のように使い捨てが効くものだ。
だからこそ俺は死なずさらなる金を手に入れるために駒に端末と偽った爆弾を持たせた。
爆弾だという事はあの駒達には伝えていない。だからせめて恐怖もなく安心して死ねるだろう?なんと優しい経営者だろうか俺は……。
なんて事を思ってせっせせと金を鞄に詰めていると化け猫は突然俺に死を運んできた。
最初は何事かと思い動揺したよ。だが弾丸が放たれた瞬間に不思議と心は落ち着いていて怒りも恐怖もなかった。
しかし唯一の使い捨ての駒と思えなかった子供に銃を向けられるのはほんの少し悲しくはある。何故ならあの子供と俺は少し似ていたからだ。他者は軽く叶えられる夢を叶えられず必死に諦めずもがきながら手を伸ばし続けるその姿が俺と重なって好感的だった。
あぁ、叶えたかった。都会にいる金持ち達の様な超大金持ちになって札束の温泉に入るという夢を……。
〜〜〜〜〜
目的を終えて通路を走っていると丁度俺が居た社長室で爆発が起こった。
「っぶな、そりゃああんな騙し討ちされたらふっ飛ばすくらいに怒るよな」
騙し討ちが起こってから数分での仕返し。しかし真っ先に社長室を潰した辺りこの基地の構造をある程度把握しているのか、はたまた偶然か……。
いや、そんな事はどうでもいい。
今は逃げる事に専念しなければ。
走りながら視線を外に向けるとアニマルハートと敵のSSの戦闘が始まっている。流れ弾でいつ此処が社長室の様にふっ飛ぶか分からない。
「社長達とおんなじ墓に入るなんてゾッとしないしとっとと此処からおさらばしないとなーー!?」
足を止め腰から銃を抜き向かおうとしていた階段の方に向ける。
「……こっちは急いでるんだ。とっとと出て来い。それとも手榴弾投げ込まないと出て来れないか?」
嘘だ。
手榴弾なんてポラリスの中に置いてきて今は持っていない。だが隠れてる相手を引き摺り出すならこれ程効く言葉はない。
「やれやれ、こんな状況下で基地内を走り回っているから非戦闘員なのかと思ってみればどうやら違うようだな」
「へへ、俺達に気づくか気づかないかの賭けは俺の勝ちでしたね隊長」
「遺憾ながらその様だな」
階段からふざけた会話をしながら現れたのは防弾ヘルメットに防弾チョッキ、他諸々で固めアサルトライフルを手に持つ完全装備の集団、間違いなく敵の歩兵部隊だ。
数は12人、目的はかぐやとコンテナか基地内の掃除といったところか。
「一応聞くがお前らは此処に何をしに来た」
「なにって、武器持ってる俺達が散歩かピクニックしに来たとでも思うか?」
「見える。とでも言えば此処から逃げる俺を見逃してくれるのか?」
「ははは……残念ながら無理だな。君やこの基地に居る人間には残らず死んでもらう」
戦闘に立つ隊長と呼ばれる男の言葉と共に目の前にいる敵達がライフルを俺に向ける。
「まぁそういう事だろうとは思ってたけど、はいそうですかって、殺されてやるつもりはねぇんだよ」
「それはそうだ……撃て」
合図と共にライフルが一斉に火をふく。
横一列に並ばれ左右に上どこに避けようとも当たる。
まぁ、普通ならだが。
左右に上、そのどれにも避けず俺は前へ向かって駆ける。
「「「!」」」
顔を隠していても敵達の動揺は手に取るように分かる。なにしろ自分から死にに来るよう行動だ。しかし本番はここからだ。
敵へと駆けながら俺は銃を撃つ。
「なっ、なんだあいつ?俺達は防弾装備をしているのが見えないのか?」
「あんなハンドガン程度でどうにかなると本気で思ってるのかよ?秒で蜂の巣だぜ」
そんな事は言いながら敵は言うが俺は蜂の巣にならず走り続けている。
「な、なんであいつ倒れずに進んで来るんだよ?」
「おい!真ん中担当!何処向かって撃ってんだ!」
隊長は両サイドにいる仲間に文句を言うがその両サイドの敵は震えながら首を横に振った。
「ち、違います。隊長……」
「はぁ?何が違うんだ?」
「あ、当たってる。当たる弾道の筈なんです!なのに弾が外れるんです!?」
「何を言っている?ならどうし……ーー!?」
隊長は両サイドにいる仲間達の言葉で何か気づいたのか慌てて俺の方、いや、周りを見て動揺した。
「弾痕が壁や天井に出鱈目に当たって残っているだと……まさか!?あ、あいつ、俺達の撃った弾の弾道を逸らしているのか!?ハンドガンの弾丸で!?」
その通り。
俺は俺に当たりそうな弾だけ狙って撃っている。こうすれば大きく避けず動きは少量で済む。
そして付け加えるなら俺が逸らした弾丸がさらに他の弾丸に当たり逸らしているので弾の節約にもなる。
「あ、ありえない!?まさか発射された弾が見えているとでもいうのか!?」
その通りであるが隊長であるこいつが大声で叫ぶべきではなかったな。仲間達が完全に動揺して引き金から指を離してしまっている。
「動揺してるところ悪いけど殺しに来たのはあんたらで俺の顔を見られた以上、死んでもらう」
「「「!?」」」
「ひっ!?く、来るな!来るなぁ!!」
敵の1人が迫ってくる俺を見て恐怖のあまり錯乱状態に陥ってしまう。
必死に落ち着かせようとする仲間を払いのけ腰から手榴弾を取り出し投げようとする。
「ラッキー」
「よ、よせ!?手榴弾を早く捨てるんーー」
隊長の言葉を俺は銃声でかき消す。
俺の撃った弾は正確に敵の手の中にある手榴弾に命中しその場で爆発した。
そしてその爆発で敵が持っていた他の手榴弾も誘爆し想像より爆発の威力が大きくなる。
「あんたらみたいなこの道長そうな人らに言っても仕方ないけどさ、取り乱した奴から死ぬのが戦場なんだよ」
爆発の煙が割れた窓から外に出ていくとそこには原形がまだ敵達がチラホラとあった。
よくもまぁ、あの爆発で形が残るものだ。
弾は思ったより節約できたが少し時間をくった。早く戻らないとと思いその場を立ち去ろうとした瞬間、俺の足を何が掴んだ。
「あ?」
視線を向けるとそこには原形を残し血だらけで地に這いつくばる敵の姿があった。
運がいい……いや、この場合悪いのかもしれない。爆発で苦しみなく死ねず痛みで苦しみながら銃弾を撃ち込まれて死ぬんだから。
そんな風に俺の足を掴む敵へ同情しているとその敵は今にも死にそうにしながら声を出す。
「お、お前……いったい、なに、者だ……」
答えてやる義理なんてないし知らないなら知らないままでいい。
銃を向け引き金に力を込めていく。
「ま、まさか……お前、がアニマル、ハートの……化けねーー」
「アニマルハート化け猫は数分前に居なくなってるから今はただの野良猫だよ」
最後までその敵は喋る事なく俺の放った銃弾で死を迎えた。
敵が生きていた事から念のためにもう一度周囲を見て生き残りがいないか確かめるが呼吸音や何かが擦れる音もしない。
「……居ないな、早くポラリスの所へ戻らーー!?」
走り出そうとした瞬間外から何が地響きを立てて近づいて来る事に気がついた俺は急いでその場から離れる。
すると俺が居た場所を壊して外からSSがめり込んできた。
「くっ、もうこんな所まで……!」
めり込んでいるのは言わずもだがアニマルハートのSS、そしてめり込ませているのは敵のSS、しかしその姿はケフェウスとは違う。
しかし俺はSS好きだからこそ驚かないしその姿から冷静に判断できた。
「特徴的なツインアイのメインカメラに少し大きめの椀部、それを包む籠手の様な装甲そしてケフェウスを凌ぐパワーとくれば間違いない!第二世代のSS、オリオン!」
単純な性能面ではケフェウスを軽く上回るSSが俺の目の前に!さて、どうやってこの激化した状況から逃げるか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます