■ ノリヲ・メモ 魔法具(1)
◎ 勇者証
勇者証はそれ自体が魔法具となっている。様々な形態をしているらしいが、俺が借り受けたのはゲンチで一般に多く流通している魔法具『加護の首輪』と全く同じデザインのもの。
勇者証としての効果の他、『加護の首輪』としての効果も併せ持っている。
また、一定期間(どのくらいの感覚かは濁された)毎に、勇者証の位置を王宮へ知らせているようだ。
・勇者の祈り(Beave Prayer):勇者死亡時に自動発動。パーティ(最大六名)ごと帰還。この発動コストは王宮側負担とのこと。
・勇者の心臓(Brave Heart) :頑丈<+>相当の加護が常時発動、というか正確には、勇者証のGPS的機能が発動する毎に王宮側の精神負担にて加護が再発動されているらしい。
・勇者の声 (Beave Voice) :王宮への連絡。通知じゃなく通話らしい。精神1点消費で(1ダイス)分間、会話できるとのこと。
・勇者の目 (Brave Eye) :自分の資格と聴覚とから得た映像と音声をドライブレコーダーのように記録できるらしい。精神1点消費で(1ダイス)分間記録。記録中に追加で精神を消費することで、最大(8ダイス)分間までを保存。記録の再生には分数に限らず精神1点消費。同時に『勇者の声』も発動すると、記録した情報を王宮へと送信可能。
けっこうなスグレモノだが、この魔法具の効果を周囲に漏らしてはいけない、とのこと。
なので俺は表向きは宮廷ギルドに加入したことになった。所属は外交省の一般職員。外交省というのは、日本でいう外務省と郵便局との業務を併せ持つ感じのところっぽい。
配属先はその郵便側の方。魔法封印付きの公的文書を街から街へと運搬するのが主な仕事のようだ。
◎『魔法封印文書』
魔法封印ってのが曲者で、一定期間内に精神点をセットしないと、中の内容が失われるとのこと。
精神点のセット時には表示される記号から任意の記号を順番で選んでからじゃないと、セットできない。それは運搬者、つまり俺がやる。「一定期間」については教えられていないが、日の出・日没に精神点セットをするよう言われた。
当然だが、渡した先で開くのには俺の知っているのとは別の記号パスワードがあるらしい。
記号パスワードを何度も間違えると中身が失われてしまうので、絶対に間違えないように、とも言われた。
◎『加護の首輪』
精神を1点消費すると、任意の肉体系能力値に「加護」を1加えることができる魔法具。市販では対象能力値が決まっている廉価版もあるようだ。
効果時間は(1ダイス)分間。加護効果の発動時に余計に消費した精神1点につき、追加で(1ダイス)分間の効果時間が追加される。
◎『照明石』
一般的な建物には基本的に設置されている。照明石と連動する起動石に触れると1から8までの数字が表示される。数字を選ぶと、精神を選んだ数字点数分消費するか聞かれ、了承すると、照明石が一定時間光る。
チョウヒさんとこの廊下天井には全部で三つの照明石が設置され、各扉の開く側のすぐ横に起動石が設置されている。どの起動石に触れても『照明石』は三つとも点く。精神1点消費で二十分くらい灯るので、連動する照明石が一つだけである場合、精神1点消費で一時間くらい灯っている計算になる。
◎『エレベーター』
発想自体は地球人の「エレベーター」を元にしたらしく、名前こそ『エレベーター』だが、似て非なるもの。
行き先指定は起動石にて行う。移動先は数字ではなく表示される単語の中から選べるが、魔力身分証の「刻印」内容によって、表示内容を調整できるらしい。つまり、参加している公式ギルドや犯罪歴で制限できるということ。
◎『
ゲンチには「夜迷い蜘蛛」というモンスターがいるらしく、そいつは獲物の精神値を吸って糸を吐くという。その夜迷い蜘蛛の糸生成器官を魔法具として再現したものが、気糸生成機だ。
ゲンチには、この気糸をもとに布地や服を生成する機械がけっこう出回っており、魔法省にあった制服製造機や、チョウヒさん宅にあるシーツ製造機とかメイド服製造機の中にも組み込まれているらしい。
ちなみに、宮廷ギルド員制服(水色)は、精神12点消費。例の襟や袖や裾の金刺繍は、貴族用を表すもので、追加で精神2点消費するらしい。制服製造機は、現在の身体サイズに対し、少しゆとりがあるように自動生成されるらしく、体型が極端に変わった場合は作り直しとのこと。
チョウヒさんは気糸シーツを白スライムの餌にしていたので、ゆとりがあるときは作り貯めしていたが、気糸そのものが、生命体が身につけていないと劣化が早いらしく、通常のカーテンとか絨毯とかは、動物の毛、麻や絹などが使われるとか。
気糸シーツは精神4点で一枚生成、メイド服は精神15点消費。複雑な造形ほど、消費精神値が増えるとのこと。
あと、シーツ製造機の近くに下着生成機もあるらしいが、この屋敷敷地内には女物の下着生成機しか残ってないらしい……ので、俺は相変わらずシーツから作ったふんどしを着用している。
・ついでに
魔術省の制服は薄紫色。
治安省の制服は小豆色。
それ以外の省(宮廷職員)は全部水色。外交省も水色だ。
役職付きの偉い人は若草色で、魔法省の偉い人――宮廷魔術師だけ深緑色。その二つの制服製造機は、(魔法省の制服製造機とは)別のところにあるっぽい。
俺も制服を作ったが、都市の外で宮廷職員だとバレると襲われることもあるので、目的の都市に着くまでは制服はしまっておくように忠告された。気糸素材の劣化を抑えられる袋のようなものも一緒にいただいた。
◎『温度管理機』――冷蔵庫と風呂
チョウヒさんとこの冷蔵庫と風呂は実は内部でつながっている。
片方を冷やし片方を温めるのではなく、二つの水槽のうち、片側の熱をもう片側へと移すという魔法具。水槽の中身は温度を保ち易い物質が入っているらしい。
オウコク王国の王都サクヤにおいては、上下水道はきっちり整備されていて、上水道はこういった温度管理機の中を通しているようだ。
◎『通知格納機』
言うなれば、パーティ内通知を保存できる魔法具。
いざというときのため、三つまで通知を保存できる通知格納機を支給された。
さっそくチョウヒさんの可愛いあのセリフを一つ保管してみた。通知格納機と、パーティ内通知領域との間でのみセーブ&ロードができる仕様のようだ。
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