■『地球人ガイド』(14)社会、(15)魔王、(16)冒険者という職業、(17)簡易地図
(14)社会
● 貨幣価値
ゲンチの貨幣は本位貨幣となっており、大金貨、小金貨、銀貨、銅貨、小銅貨が流通しています。
基準となるのは銀貨で、屋内の食堂で座って一人前の食事が平均的に銀貨1枚となります。
テイクアウトのファーストフードであれば、銅貨数枚であることが多いです。
原材料費、加工技術、金銀の採掘量などが地球とは異なりますため、地球の価値観との単純な比較はできませんが、銀貨2枚あれば最低限の安宿と朝晩の食事くらいは確保できます。
手っ取り早く稼ぐには、街の壁の補修がお勧めです。
単純な肉体労働で、働きぶりにもよりますが、一日で銀貨3~5枚の給金を稼ぐことができます。
・貨幣の価値対応表
小銅貨
銅貨=小銅貨2枚分
銀貨=銅貨10枚分
小金貨=銀貨10枚分
大金貨=小金貨4枚分
街の中での仕事のみとなりますが、地球人ギルドでも斡旋を行っております。
ただ、ご用意できる求人枠は少なく、召喚された環境に問題がないのであれば、召喚者の方に召喚者責任を全うしていただくようお願いしております。
・税金
街に住む者は、年の変わり目が近づくと国家ギルド、または地球人ギルドを通して税金の催促が通知されます。
維持が必要な公共施設の利用時にも税金が現金で要求されます。
それ以外に、戦争税や魔王討伐税、国内における災害発生時の復興税など、臨時税の徴収もあります。
要求された税金は納めるようにしてください。
「魔王」との大戦以降、七大国で足並みを揃えている状況や、今までの地球人ギルドの努力の甲斐あって、理不尽な税金はかなり減りました。街の中で比較的安全に暮らせるのも、国家のもと安全管理に携わる人々がいらっしゃるおかげです。
ゲンチと地球との違いは、命を脅かす存在の多さにあると地球人ガイド制作部では感じております。その差分に対しては、私たちのできる範囲で協力し、一緒に乗り越えていきたいと考えております。
● 人間以外の種族
「(11)ゲンチの国家と言語と暦」で少し触れておりますが、ゲンチには人間以外にも多くの、いわゆるファンタジーの物語に登場するような知的生命体が多数存在します。
一部、七大国内に住み着いている個人もいるようですが、彼らの本来の居住地域は七大国の外側になります。
基本的には、七大国の公式ギルドに所属している他種族は、税金を収めている限り、七大国いずれかの国民として扱われています。
七大国内で遭遇する確率の高い幾つかの種族について軽く説明させていただきます。
・ドワーフ
細工や工芸、鍛冶に秀でた小柄な人型種族です。ゲンチでは北方の鉱山内に幾つかのドワーフ国家が確認されています。
頑固で気難しい方が多いようですが、酒好きで、一度信頼されるととても親切になると言われています。
男女ともにヒゲをたくわえ、鎧などで体のラインが見えない場合、男女の判別は困難と言われています。
平均寿命は人間の二倍から三倍と言われております。
・巨人
北方の巨人国はカラリエーフストヴァ王国と交流があります。
「〇〇ジャイアント」と幾つかの亜種が存在し、一部の巨人は「
平均身長は5メートル以上で、見た目通り力が強いですが、性格は温厚で穏やかな方が多いと言われています。
平均寿命は人間の二倍から三倍と言われております。
・鬼人
ワングワ帝国以東に多く生息している鬼人は、鬼人という一つの集団ではなく、ゴブリンやオーガ、ヤシャと呼ばれる様々な種族の総称です。
鬼人は種族ではなく血縁部族単位で生活、行動します。
人間に対しては概ね敵対的で、鬼人同士、同じ種族同士でも頻繁に争っています。
ゴブリンは人間よりも背が低く、ヤシャ、オーガは人間よりも背が高いです。人間を捕食することがあります。
ヤシャは「
・獣人
七大国内でおそらく最も多く見かける人間以外の種族になると思われます。サイズ的には人間と変わりません。
その大半が犬獣人と猫獣人です。一見すると動物的外観の特殊メイクをした人間のように見えますが、彼らの造形も毛並みも本物です。
獣人の生息域は七大国の領土イーシャ王国内のあちこちにも分布しており、それぞれの地域に対し、古くよりイーシャ王国は自治を認めてきました。
獣人の方と食事をする場合、同種の動物が地球では「与えてはいいけない」と言われる食べ物を食卓にあげないのがマナーです。
平均寿命は人間と同程度と言われております。
・竜人
マムラカ王国連合の西にある竜人国に住む彼らは、竜の末裔と自称しております。
全体的に人間の一倍半の能力値を持つと言われており、人間に対して尊大な態度を取られる方が非常に多いです。
外観は、二足歩行で二本の角を持つトカゲといった様相です。竜人は「
平均寿命は人間の五倍ほどと言われております。
・リザードマン
トカゲの獣人とでも言うべき存在ですが、獣人と違ってコミュニケーションを取りたがらない方が多いです。
七大国内で遭遇するリザードマンは、竜人の従者である場合が多いです。
外観は、二足歩行で角を持たないトカゲといった様相ですが、背筋の伸びた竜人とは異なり、全体的に前傾姿勢です。
基本的には人間に対して敵対的ではありませんが、特に友好的でもありませんので、七大国の外で遭遇した際はご注意ください。
平均寿命は人間と同程度と言われております。
・エルフ
ウハールメ王国以南に広がる広大な森林に住む彼らの寿命は千年に届くと言われています。エルフは「
痩身に尖り耳、美しく気高く、自然を愛し、排他的です。エルフの信頼を得るのはドワーフ以上に困難と言われています。
平均寿命は人間の十倍と言われております。そのため繁殖にあまり興味がなく、交際の申し込みや下ネタは彼らを非常に不快にさせます。ご注意ください。
・妖精
七大国の内外で気ままに放浪する彼らに遭遇することは珍しくありません。
妖精という表現は鬼人同様、特定の種族ではなく一種のカテゴリ名だと考えてください。
羽根の生えた種族、姿を消すことができる種族、人の形を取らない種族すら居ますが、彼らは自身で彼らを「妖精」と呼びます。
総じて人間の子供よりも小さく、悪戯好きですが、彼らを助ける者には大いなる祝福を、彼らを傷つける者には残酷な復讐を与えると言われています。
妖精は、例外なく「
(15)魔王
ゲンチには魔王が存在します。
十年に一度、共通歴の下一桁が0になる年になると、大戦の際に施した封印が弱まり、七大国のいずれかの国の近くに出現し、猛威を振るうと言われています。
過去の出現の歴史を辿ると、実際その通りです。
魔王が近づいただけで、その一帯に居る生命体は状態異常に陥るので復活がわかると言われております。
魔王の状態異常は、(9)状態異常 でお伝えしたものよりもさらに凶悪な状態異常だと言われています。
そのため、大規模な軍隊ではなく七大国から選ばれた少数精鋭にて魔王再封印へと赴くのが通例のようです。
魔王の真の名は知るだけで災いが起きると言われ、通常はそのもたらす状態異常により「『××』の魔王」と呼ばれます。
ちなみに過去三十年については、どの魔王が復活したかと、その状態異常にかかったものの生き延びることができた方の状態異常体験談が収集できております。
・共通歴550年
『憤怒』の魔王がマムラカ王国連合北部にて復活。
精神系状態異常『憤怒』。
「気がついたら家族全員で殴り合っていた。尊敬する父も、敬愛する祖父も、愛する母も、可愛い弟も、心優しい妹すらも、皆。体が壊れるほどの全力で、周りの全てに憤りを感じるまま破壊しようとし続けた。骨折して動けなくなった状態でも、だ。魔王が再封印されたとき、出血の激しかった祖父と母と弟は死んでいた。私はもう家族と一緒に暮らすことができなくなり、オウコク王国へと移住してきた。怪我は魔法で治せたが、私が失ったものは決して戻らない」
・共通歴540年
『嫉妬』の魔王がワングワ帝国南西部にて復活。
精神系状態異常『嫉妬』。
「突然です。何もかもが羨ましく、妬ましくなったんです。私の内側に消せない黒い炎が灯ったように感じたのを覚えています。この気持ちを晴らすには、妬ましい相手全てを消さなきゃいけない、そのような衝動にかられました。もちろんそれは私だけじゃありません。周囲の皆が同じでした……そして、殺されかけました。私は地下室に逃げ込んで隠れ、自分の負傷を癒やすために魔法をたくさん使いました。そのおかげで精神を使い果たし、気絶したんだと思います。目がさめたとき、気絶している間は嫉妬からは解放されていることに気づきました。地下室に保存してあったもので食べられるものを食べ、再び気絶するまで魔法を使い続け……おそらくは一週間以上経過していたと思います。魔王が再封印され、国からの救助隊が到着したとき、私の村で生き残っていたのは私以外にわずか二人だけでした」
・共通歴530年
『傲慢』の魔王がアフトクラトラス帝国西部にて復活。
精神系状態異常『傲慢』。
「ありゃぁなぁ、他人の声が耳に入らなくなるんよ。仲が良かった家族や友達まで虫けらのように思えてきてなぁ、しかも何を言っているかはわからないっちゅうのに、無性にイラつくんよ。わしは軍隊にいたんだがなぁ、回りの連中と一緒に居るのが嫌になっち、脱走してなぁ……それで運良く魔王の勢力外に出られたみたいなんよ。今もこうして生きていられるんは本当に運が良かったんだと思うわな」
地球人ガイド制作部による独自調査によると、魔王がもたらす凶悪な状態異常は、他に『色欲』や『暴食』、『強欲』が記録されているとのことです。
ただ、これほどまに恐ろしい魔王ではありますが、七大国の王族には魔王と戦う術が受け継がれているようで、毎回、再封印を成功させてきました。
また、地球人がその少数精鋭に選ばれた記録は現在のところ見つけられておりません。
ゲンチの地を守るのだという強固な意思がなければ魔王には立ち向かうことはできないと言われています。
それでも魔王が復活した場合、その復活に合わせて魔物が活発化することも多く、魔物の討伐や町の防衛に人手が駆り出されることが少なくありません。
地球人ギルドにも、国から街の自衛や見回りに協力するよう要請が来ますので、その際はどうか皆様のお力をお貸しください。
よろしくお願いいたします。
(16)冒険者という職業
皆さんが「冒険者」という言葉にどのような印象を持たれているかはわかりませんが、ここゲンチにおいて「冒険者」とは、職業というよりは、免許に近いものだとお考えください。
「冒険者」においては、以下のメリットとデメリットとがございます。
● メリット
・「冒険者」資格を持つ方は、街の出入り、街道の使用等、交通関連の公共施設利用において税金が減免されます。
ちなみに、街の外へ出る場合、「冒険者」ギルド加入者以外では、通常のゲンチ人ならば領主の許可が、地球人であれば地球人ギルドの許可が必要になります。
・魔物(魔石を生成する、知的生命体以外の存在)に襲われた際、これを事前申請なく駆除する許可が与えられています。
ただし、討伐した魔物についての報告は「冒険者」であるかどうかに限らず、公式ギルドへの報告が義務づけられています。
・狩猟免許を与えられます。
一定期間内の重量と希少性における限度はありますが、狩猟した獲物の所有権を許可されます。
● デメリット
・有事の際の招集には応じるべき義務が発生します。
有事というのは、大規模災害や、街に危機が迫ったときなどを指します。
「冒険者」はこれに対し、戦闘行為を含んだ救助・復興などを依頼されます。この依頼に応じない場合は、多額の反則金が徴収される場合もございます。
・本人に落ち度がない死亡事故において、領主の裁量により蘇生が許可されることが多々ありますが、「冒険者」の場合、蘇生費用は蘇生された本人側の負担となります。
「冒険者」は、自ら危険な場所へ赴くことが少なくないため、と言われております。
● 「冒険者記録」
「冒険者」ギルドに加入した場合、以下の情報が「刻印」に記録されます。これを、一般に「冒険者記録」と呼びます。
・採取:植物や動物、その生態や素材化した場合の取り扱いに関する知識、捕獲能力、運搬能力に対する評価となります。
・討伐:戦闘能力の高さ、安定、戦略や魔法への理解などに対する評価となります。
・護衛:責任感の強さ、護衛を守りきるだけの防御力、判断力、非戦闘民への防衛指導力、礼儀に対する評価となります。
これら三項目について、それぞれが「-」から「+++++」までの「実績」も付与されます。
冒険者ギルドでは、個人で依頼を受けることが可能ですが、その条件に「実績」が設定されているのが普通です。
また、依頼条件において「採取」や「討伐」しか指定がない場合でも、「護衛」が高い者の方が好まれる傾向があります。
「実績」の付与は、依頼達成時または依頼失敗確定時に見直しされますが、その見直しは、依頼を一定回数こなしたタイミングで付与されるため、失敗を何度かしたからといって簡単には諦めず、粘り強く頑張りましょう。
なお、最後に依頼を受けてから数年が経過すると「+」が減らされることもあるのでご注意ください。
また、評価「-」は単なる依頼失敗ではなく、何らかのトラブルを含めた悪質なケースである場合が多く、パーティを組む際は出発前にご確認いただくようお願いいたします。
「冒険者」についての詳細は、冒険者ギルドにて初心者向けのレクチャーを受けることにより、ある程度は知ることが可能です。
「冒険者」には、後輩育成に熱心な方もいらっしゃいますが、大抵の「冒険者」はライバルとなり得る後輩に対してシビアに接することが多いと聞いております。
また、中には初心者を搾取対象とする油断ならない「冒険者」も居るという報告もあります。
「冒険者」ギルドへの加入に関しては、あくまでも自己責任だという覚悟を決して忘れないでください。
(17)簡易地図
こちらは、地球人ガイド発行支部が存在する都市内の簡単な地図となります。
当ギルドの他、各公式ギルド、公共機関の場所が記されております。
ただし都市防衛上、一部の情報については隠されたり、実際とは異なる情報が記載されていることがあることもご了承ください。
また、地図中、墨塗り部分については、必要な資格がない者は近づかない方が良いエリアとなります。近づかないことを推奨いたします。
町から町への街道地図については、街道と主要な目印のみが書かれたものを国民省直営事務所にて購入可能です。
簡単ではありますが、これにて地球人ガイドは終了です。
もっと詳しい内容を知りたい方、記載情報に誤りを見つけた方、当ガイドに記載あるなしに関わらず重要であると思われる情報を入手された方は、お気軽に地球人ギルドをお訪ねください。
ではでは。素晴らしいゲンチライフを!
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