第32話

 大男が投げた瓦礫が子どもたちに迫る。

「ふんさ」

 僕は黒炎を発動させ、瓦礫を灰へと変える。

「なっ……なんだ……それはッ!?」

 僕の自慢の黒炎を見て驚きの表情を見せる。

 そんなに見事なリアクションをとってくれるとこっちも嬉しい。

「……くくく。今日の僕はいい気分だ。教えてやろう……魔力の使い方というものをな」

 僕は内なる魔力をどんどん開放していく。

 カタカタと空間が震える。

 まるでアニメのように小さな瓦礫が浮かび上がる。

「あ……ありえない……」

「世界は炎に包まれる」

 真っ白な世界は黒に侵食される。

 真っ白な壁も、真っ白な床も、真っ白な天井も、

 黒く染まっていく。

 黒き炎に呑み込まれる。

「な、なんだ……これは……何なのだッ!」

「それほどまでに驚くことかね?」

 僕はかっこいい声を意識しながら話す。

「魔力とは、力だ。全てを可能にする力だ。魔力を使えば世界の創造すら出来るだろう」

 出来ない。

 少し盛った。

 流石に世界を創造するだけの力はない。確かに魔力は何でも出来る。さっきみたいに魔力を全てを燃やし尽くす黒い炎に変えることも出来る。色だって青や白。好きに選べる。

 黒一択だけど。

 でもちょっと流石に世界の創造は無理。

 そんなのどれだけ魔力が必要になるかわからないし、そもそもそんな無茶苦茶出来るとは思えない。

「なっ……き、貴様は……し、神域に到達しているとでもいるのかッ!」

 神域?なにそれ?

 でも、いいね。

 かっこいい!

「神域……くくく」

「な、何がおかしい?」

「神域など……遠いに越えている。僕が神域を潰すものだ」

 刀を薙ぎ、なんかそれっぽく見せる。

「ば、馬鹿な……潰す、だと?無理だ……無理に決まっているッ!」

「僕に不可能などない」

「……くだらぬ……くだらぬッ!くだらぬ妄言だッ!我が王すらも呑み込む神域にッ!貴様のようなガキがッ!」

 おー、すごい。迫真の演技だ。

 大男から放出される魔力は爆発的に膨れ上がる。

 でも、悲しいかな。量は絶望的に少なかった。

「ラァッ!」

 大男は気合一発。僕に斬りかかってくる。

 しかし、大男は僕の何を見れていたのか、ただただ魔力をガンガン刀に流し込んだだけだった。

「言っただろう?魔力はなんでも出来ると……。お前のように力任せに切ることしか出来ぬものに……僕が負ける理由はない」

 僕は斬る。

 大男が持っている刀を、腕を、胴体を。

 あ、待って?やりすぎた。

 僕は上半身と下半身がバイバイしてしまった大男の胴体を慌てて繋ぎ直す。

 ふぅー。これでよし。

 よし!じゃあこいつに魔力の使い方をレクチャーしてあげようかな!

 僕がそう思った瞬間。

 僕のポケットに入っているスマホが振動した。

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