第31話

「醜い……実に醜いな」

 僕はなんか適当にそれっぽい事言いながら中に入る。

 壁をぶち破った先にあったのは広い空間。

 そこにはそよ風のような魔力を漂わせる変な大男とストーカーさんたち集団。

 何をしているのだろうか?

「刹那様ッ!」

 ストーカーさんが僕に何かを期待するかのような視線を向ける。

 ……え?僕は一体何を期待されているのだろうか?

 ……教育かな?

 僕はそよ風のような魔力を漂わせる変な大男のほうに視線を向ける。

 この大男は僕と同じく魔力を持っているというのに、使い方がなっていなかった。

 つまり……こいつに魔力の使い方をレッスンしてくれ!っていうことだね!間違いない!

「魔力の使い方を教えてやろう……」

 僕は体内の魔力を開放し、刀を抜く。

 そういえば昔もこんな真っ白なところで戦ったことがあった気がするわ。

 なんか子どもたちを皿ってエゲツない人体実験していたから潰した記憶が僕の脳髄の端っこのほうにある。

 詳しくは覚えていないけど。

「バッ、バカなァ!」

 僕を見て大男は大声を出し、大げさに驚く。

 そんなに驚くことがあるだろうか?」

「さぁ、どこからでもかかってくるがいい……」

 僕は構えもせず、自然体のまま立つ。

「なっ……なっ……なっ……」

 大男が僕に切りかかってくることはなく、驚きに満ちた顔でわなわなと身体を震わせながら立っていた。

「そんなのあり得るかァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 気合一閃。

 いきなり、大きな声と共に斬りかかってくる。

 おっ。元気があることはいいことだよ?

「足りない」

 僕は大男の剣を弾く。

「アァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 大男は叫びながら刀を振るい、僕は刀で弾く。

 大男はあの手でこの手で僕に攻撃を与えようと頑張って剣を振るう。

 それを僕はひたすらに弾く。

 ……ちょい暇。

 ……あっ。そうだ。

 僕はくるくると回る。

 刀を持つ手を右手から左手へ。順手から逆手へ。手から足へ。

 ちょっとおもしろい。

 よっ、ほっ、はっ。

「これ以上は無駄だ」

 僕は回るのに満足した段階で大男の剣を弾き、お腹を蹴り飛ばす。

 大男は壁にまで飛ばされた。

「くそっ……ありえない……ありえないのだッ!負けるなどッ!」

 大男は僕を思いっきり睨みつける。

 ふぇ?

 なんで僕のことをそんなに強く睨みつけるの?

「……っ。この甘ちゃんが……」

 甘ちゃん?

 僕は甘いものが好きだよ?

「おらッ!」

 大男は瓦礫を掴むと、全力で投擲した。

 僕の方へと。

 いや、違う。

 僕の後ろの子どもたちへと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る