第30話

『あーるーこーあーるーこー私はー元気ー』

 僕は子どもたちと元気よく歌いながら道を歩いていく。

 迷子だけどね!


 ■■■■■

 

「どこ?ここ?」 

 僕は途方に暮れ、辺りを見渡す。

 しかし、視界に映るのは白、白、白。真っ白。

 よくわかんない!

 僕はなんかみんなと一緒に行動するのは影の王らしくないかなって思って、神の啓示の元歩き回っていたら道に迷ってしまったのだ。

 どこやねん。ここ

 僕は歩く。走るのはかっこよくない。堂々とコツコツと靴の音を鳴らしながら歩く(時速300km)

 右往左往しながら壁を破壊しながら歩き回っていると子どもたちが閉じ込められた広い空間に出る。

 広い空間にいた子どもたちは良くないものを渦巻かさせ、顔をしょんぼりさせていた。

「辛気臭い顔していないで!もっと元気に行こうよ!」

 僕は子どもたちの周りに渦巻く良くないものを制御し、良いものに変えて元気良く告げる。

 ……。

 ………。

 え?無視?

 子どもたちは僕のことを無視して自分の手を見たり、自分の顔を触ったりしている。

 何をしている!僕を無視して!

 ……。

 ………。

 もういいです。

「どうする?僕はもう行くけどみんなはどうする?別に僕についてきてもいいけど……」

 ……。

 ………。

 しーん。

 沈黙がこの場を支配する。

「じゃあ……行くね……」

 僕は悲しみに肩を落とし、子どもたちに背を向けて歩き出した。

 ……。

 ………。

 歩き出した僕の後を付いてくる子どもたち。

 ……ついてくるんかい!来るなら何か反応くれても良くない?そんなに僕と会話したくない?

 人間対話は大事だよ?

 だけど、いくら僕が子どもたちに話しかけても応答してくれない。

 悲しみ。

「あーるーこーあーるーこー私はー元気ー」

 僕は子どもたちに話しかけるのは諦めて歌い始めた。

 

 ■■■■■

 

『いっぽん橋にーでこぼこ砂利道ーくもの巣くぐってー下り道ー』

 僕が一人で歌っていると、僕と一緒に歌いだした子どもが現れ、その数がどんどんと増えてきた。

 そして、今では全員が僕と一緒に歌うようになっていた。

『ミツバチーブンブンー花ばたけー』

 

「ん?」

 僕がみんなと歩いていると、力を、僕と同じ魔力を感じた。

「ほえ?」

 僕以外が魔力を持っているなんて────のあの男以来だ。

 不思議だな。

「ちょっとこっちに寄っていくね」

『うん!』

 僕が子どもたちにそう告げると、元気よくそう返してくれる。

 うんうん。

 この短い時間で子どもたちは僕の言葉に対して返してくれるようになっていた。

「せいや」

 僕は壁を破壊し、魔力を感じた方へと向かった。

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