第65話 クレッシェンド
『やめて…』
『は?あんたが言える立場なの?』
『やめてください…』
『これ、外に出しな。』
着替えを更衣室の外に投げられ、私は下着姿。
主犯の女は、仲間に指示を出して私はそのまま放置された。
『お願い…。誰か…。』
私は下着姿のまま時間が経つのを待った。
先生達は主犯や仲間の親には逆らえない。
このままなんだろう、そして私の着替えは誰かに回収されて使われてしまうのだろう。
そんなことを思いながら、私は雨の降る窓の外を眺めて土を見た。
『なんで2階なの…。この高さじゃ、死ねない。』
私は殺されるよりつらい経験をしている。
授業が終わったようで、主犯が意気揚々と来た。
着替えを投げつけられ、次の授業は出るように言われた。
『なんでこんなことするんですか?』
『あんた、私の好きな人と仲良くしてたでしょう。』
『どの人ですか?』
『Sくん。』
『知らなくてごめんな…』
『知らないふりすんじゃないわよ!』
私は殴られる恐怖に怯え、叫んだ。
『ごめんなさい!やめて!!!』
目が覚めるとそこは楽器倉庫。
私は酷い悪夢を見ていたようだった。
酷い寝汗をかいていて、私はなぜか震えていた。
「大丈夫?」
「いやっ!」
声をかけてくれた奈良先輩に対して私は拒否をした。
「…ごめん。」
奈良先輩は悪くない、悪いのは私。
ちゃんとごめんなさいして、いつも通りにならなきゃ。
夢は夢で、目の前の現実は奈良先輩なのに。
「先輩、ごめんな…」
「悪くないよ、君は。」
「え、でも」
「怖い夢見たんだろ。うなされてて、起こすか悩んでたから。」
「拒否したから…私…。」
先輩はいつもより距離をとりつつ、それでも少し近くに来た。
「そんなことで嫌わないし、離れない。」
どうして、親にも言われない優しい言葉をもらえるの?
「君は頑張った。」
「だから休みな。」
気持ちは加速して。
他の女の子を見ないで欲しくて。
お願い、先輩。
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