第64話 オーマイガー!

休みの日。


私は両親に(強制的に)手伝いをお願いされて、ジャージにすっぴん、デコ出しポニテで農作業をしていた。

もちろんしっかり長靴+首元タオルである。


「なぎ、ちょっとポスト見てきて!なんか届いた!」


持っている大きなスコップを置き、ポストを確認すると意味の分からないただのDMだった。


すると後ろからクラクションが鳴った。


振り向くと、奈良先輩ご家族だった。


今の私は地元有数のダサさを誇るジャージ姿。


『ジャージか裸なら裸。(母)』

『隣を歩きたくない。(父)』

『それで外歩かないで。(叔母)』

『なぎちゃん、それは決まりなの?(祖母)』

『それなら汚しても平気やな〜!がはは!(祖父)』


とまあ散々なダサいジャージである。


そんなこんなで奈良先輩のお母さんが助手席から声をかけてくれた。


「あらぁ〜!なぎちゃん!なにしてるの!?」


「こんにちは〜。手伝いです〜。庭の農作業を…。」


「あらまぁ〜!偉いわねえ…!うちの子にも見習って欲しいわあ…!ねえお父さん!」


「そうだなあ!なぎちゃんは真面目だからなあ!」


奈良先輩のご両親が私を褒める中、私は後部座席に目をやった。


すると奈良先輩と目が合い、私は恥ずかしくなった。


「これからお出かけですか?」


奈良先輩達に早く私のダサい姿を忘れてほしくて話題を振った。


「そうなのよ〜!近場だけどね!」


「ふふっ!いいですね!楽しそう!」


私は奈良先輩の思い出づくりだろうなあと心の中で感じた。


「母さん、なぎ困ってるだろ、早く。」


奈良先輩が名前で呼んだ。


「はいはい、お父さん、いきましょうか。」


「なぎちゃん、またな!なんでも頼れよ!」


窓が閉まり、車が発進した。


ご両親は気づいてないかもしれないが、私は気づいた。


通り過ぎる時に、奈良先輩が手を振ってくれたことを。


可愛らしいアピールだなあと思いながら笑っていると、数秒後にまた止まった。


今度は母が奈良先輩のお母さんと話しているらしい。


こりゃ奈良先輩達が目的地に着くまで時間がかかりそうだなあと傍目で思った。

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