第40話 小話5
※腰に局所麻酔入れてるので、携帯からの更新になります。読みにくい所などは、ご容赦ください。
1. 高校
「先輩って、実際志望校はどの辺なんですか?」
奈良先輩と同じ高校を目指すなら、勉学をしっかりやらなければ…と思い聞いた。
すると先輩は嫌そうに答えてくれた。
「☆高辺りかな。」
地域では高学歴!優秀!人生安泰!と呼ばれるレベルが出てきて私は驚いた。
先輩が目指していることに驚いたのではなく、今の自分では到底無理であることが分かったから。
「…☆なら、○も□もですよね…。」
「まあ、大体その辺。」
「…滑り止めは?」
「◎かな。」
「…そっかあ。」
「急に進路の話なんてどうしたの?君にはまだ早いじゃん。」
「先輩と同じ高校行けたらなあって。」
「でも聞いて、レベル高すぎて無理だなって。」
「滑り止めのほうは?君なら余裕じゃん。お金積まなくても特進でしょ。」
「うーん…。どうしても話した方が良いですか?」
「まあ、教えてくれるなら。」
「先輩が私の話を聞いて、滑り止めを変えないなら話します。」
「変えないよ。」
「滑り止めのところ、私のこといじめてきた主犯の女が入るの確定してるみたいで…。流石に高校もいじめられるのは、人生終わってるんで…。」
「…そうか…。」
先輩は黙って視線を下に向けた。
こんな話聞きたくないよね。でもいつかはきっとする話だった。タイミングが今か未来かなだけ。
「俺は俺の行きたいところに行けるように勉強する。君は君の行きたいところに行きな。」
「え?」
「確定のない未来でお互いに苦しむより、割り切った方が楽だろ。」
「…まあそれはそうですけど。」
「きっと、高校に入ったらもっと良いやついるよ。」
「分かんないもんそんなの。」
「今の俺たちって、なに?」
「多分、離れたら壊れるよ。」
それは分かってる。でも壊れるまでは夢を見ていたい。
関係を彼氏彼女にしないのも、終わりが怖い私のせい。
それでも先輩は私と一緒にいてくれた。
「じゃあ先輩、お願い。」
先輩は私の目を見て、話を聞くモードに入った。
「離れるまで、一緒にいて。」
先輩は返事をするより先にキスをした。
「当たり前だろ。そんなん。」
「離れるまでは、先輩の隣に居させて。」
またキスをされた。
「もう良いから。」
話そうとする私の口を塞ぐようにキスをされ、私は未経験すぎるあまり、息ができなかった。
「…なあ。」
キスの雨が終わり、先輩から声をかけられ、私は話を聞くモードで視線を先輩に向けた。
「怖い?」
意味は分かる。それでも私は怖かった。
答える前に先輩は、苦笑いをした。
「そんな顔すんな。これ以上はしないから。」
ほっとしたのと同時に、申し訳ない気持ちも出てきた。
「怖いけど、先輩なら…。」
「無理すんな。こういうのは。」
「申し訳なく思わなくて良い。むしろ怖い気持ちになるのが普通だろ。」
少し落ち込み気味の先輩に感謝とごめんなさいの気持ちを込めて、私は自分からキスをした。
「これなら私でもできるんで。」
先輩は驚きながらも嬉しそうに微笑んでいた。
「俺以外にはするなよ。」
「先輩にしか興味ありません。」
今度は先輩から優しい雨が降った。
2. おいで
夏なのに寒い、そんな日があるクソ田舎。
私は寒さに耐えきれず、楽器用のタオルケットを羽織った。
そのまま適当に練習をしていると、仁先輩がやってきた。
「白ずきんちゃんじゃん。狼呼んでいい?(笑)」
「呼ばないでください。」
「あ、狼じゃなくて猫だっけ。」
「あーもうどっちでも良いけど呼ばないでください。」
「きょうこちゃんは?」
「他のパートに駆り出されてます。」
「ふーん。1人で練習してたんだ。」
「暇だからやってただけです。」
「白ずきんはさあ、狼とどこまでいったん?」
仁先輩はとことんからかうスイッチが入ったらしい。
「まあそうですね、白ずきんは狼さんと一応出会うところまでは行ったんじゃないですか?」
仁先輩は納得のいかない表情を見せながら話した。
「狼、猫じゃ満足できねえだろ。」
「“いたずら“の傷も増えてるみたいだし。」
私は対応が面倒になり、仁先輩をからかう方にシフトした。
「え〜?そんなの見てるんですかあ?結構ギリギリなところに傷があるのに〜。きゃあ〜!」
全て棒読みで、私は羽織っていたタオルケットをぎゅっと握った。
「てめえ。」
低い怒気のこもった声で発せられた一言で、仁先輩も私も固まり動かなくなった。
いつのまにか奈良先輩が、きょうこちゃんを連れて部室に来ていたようで、開けたら私の棒読みを聞いたらしい。
仁先輩と私は一瞬でこれはいけないことになったとアイコンタクトをした。
「おい、仁。お前何を見たんだよ。おい。」
奈良先輩は仁先輩の方に近づき、しゃがんだ。
きょうこちゃんは扉の裏から私に戸惑いの視線を送っていた。
私はヘルプを求めた。きょうこちゃんは無理!と視線で返事をした。
「お前、事と次第によったら外。」
つまり、タイマンか…と私は奈良先輩の誤解を解こうと声を出した。
「奈良先輩、私別に何もされてない」
「神奈川ちゃんは黙って。」
「いやほんとに」
「いいよ、気を遣わなくて。」
「気遣ってな」
「どこ見られた。」
奈良先輩は次は私の方に来てしゃがんだ。
無言で慣れた手つきでボタンを留めて、リボンを結び、羽織っていたタオルケットを名札についているクリップで止めた。
「あの、何も見られてないです。」
「じゃああれはなに?」
「ふざけて言ってただけで別に…。」
「君がふざけて言うレベルの度を超えてるよね?」
「俺が知ってる傷だったら、ほんとに際どいと思うんだけど?」
理詰めできっちり怒られる私を見て、仁先輩はその場から逃げ出し、きょうこちゃんを連れて避難した。
2人きりの部室で、私は窓から来る風に寒気を感じて少し身震いをした。
「…おいで。」
おいで、ではなく来いという意味なのは私だけが知っていること。
白ずきんのまま私は先輩の方に向かった。
「仁先輩に少しからかわれたから、棒読みで適当に返したんです。」
「キスマークのこと言われたから。」
先輩は舌打ちをしていた。
「嫌だった?」
「からかわれたのは別にいつもだから良いんです。」
舌打ち。
「でも、奈良先輩に誤解されたくないなあって。」
「何を?」
「キスマークはバレたけど、リスカ痕はバレてないです。」
誰にも見せないと決めていた、リスカの傷痕は奈良先輩だけが知ってるものだった。
奈良先輩は、それがバレたらどうなるかを分かっていたからこそ怒っていた。
「先輩、ごめんなさい。もうしない。」
奈良先輩は無言で頭を撫でた。
いつもより遠い距離に、自分がしてしまったことの重さが表れていて寂しかった。
「先輩、ごめんなさい。もうしないって約束するから、もっと近くに来て。」
先輩は私を抱きしめた。
「仁にはからかわないように言っとく。あんなのに乗らなくて良いから。」
私は黙ってうなずいた。
先輩は私を軽く離して、微笑んだ。
「おいで。」
私は先輩に近づいた。
寒かったはずなのに、先輩のおかげで身体は暖かくなっていた。
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