第34話 暇を持て余したパーカスの遊び
夏コンも近づき、本格的に全体練習が行われる中。
私と仁先輩は、楽器に隠れて暇を持て余していたのだった。
きっとパーカス以外のパートの人には怒られるかもしれないが、パーカスは全体練習時、暇なのである。
本当に。
とにかく暇。
1曲を起承承転結で表すなら、パーカスは基本的に起転結なのだ。(曲による)
しかも大体、パーカスにはない承が長い。
50小節休みなんてザラである。
全体練習の時に承が当たると、パーカスは本当にすることがない。
仁先輩はティンパニーに隠れて昼寝をしていたり、私ときょうこちゃんは聞いてるふりをしてスケッチブックで遊んでいるのだ。
別に仁先輩や私、きょうこちゃんの代たけではなくこれはもう伝統なのだ。
(だからと言ってそれが正しいとは思わないが)
1曲通しで演奏できる頃になると、全体練習に力が入るため、慣れてくるとその日にするであろう曲の場面が想像できる。
しかも大体当たる。
それでも、『いきなりパーカスも一緒に』というトラップもあるため、必要な楽器は全部準備して持ち場で待機する。
承だけかと思って油断しているときに限って、起承転結の起からやるなんてこともあり、ティンパニーのチューニングをサボった仁先輩が顧問に怒られるところも見た。
ここで、私が勝手に思う『パーカスのメリット・デメリット』を記す。
<メリット>
・楽器代がかからない。(基本的には)
・パートのメンバーが大体個性的で優しい。(個性の塊)
・色んな種類の楽器を無双できる。(というより覚えないとやってけない)
・他校の友達ができやすい。(舞台裏で毎年毎シーズン会うし、楽器忘れで物々交換 会もある。)
・大声が出しやすくなる。(楽器の音が基本的に大きいため、人間も自然と大きくなる。なるしかない。自然の摂理。)
・物理的な力を鍛えられる。(一人でドラムセット運べるようになっていく。筋肉isパワー。毎日重いものを運んで、ずっと立ちっぱなしのためムキムキ。肩幅ガンダム。)
などだろう。
・飲み食い自由(バレなきゃなんでも飲めた気がする。水筒の中に入れてしまえばこっちのもん。お菓子だって口の中で溶けるものならバレない。多分。)
<デメリット>
・楽器代がかからなくていいよね、と言われる。(実際のところ、みんな自分で電子ドラムや楽器を購入したり、マレットやスティックをたくさん買いそろえるため、他のパートとトントン。)
・みんな最初は真面目なのに…と言われる。(時間の経過とともに、パーカス独特の雰囲気に慣れていくだけで、みんな根は真面目。じゃないと出番のない練習なんてやってられない。)
・色んな種類の楽器を練習しないといけない。(今でも正式名称が分からない謎の楽器がある。それにホイッスルとか吹く楽器じゃん。打楽器なの?と疑問を覚えるものもある。覚えるまでが非常に大変。)
・他校のパーカスじゃない人たちには人見知り。(他校も大体似たような雰囲気のため、パーカスメンバー以外は見る目が厳しかったりする。怖い。)
・大声でうるさいと言われる。(なりたくて大声になってない。それに喉をやって医者に行く人多い。挨拶で張り合われても、困る。)
・筋肉痛。(重い楽器を一人で運んで片付けるまでが部活。いつの間にか、4人で持つはずのティンパニーを2人で持っていることもある。ドラムセットなんて花びらが舞い散るそよ風レベル。もっと面倒で重いものがある。)
・太鼓の達人でプレッシャー。(パーカスだから太鼓の達人できるよね、ってバチを渡されても困る。初見でパーフェクトなんてできるわけねえだろ。じゃあお前らはリコーダー初見で完璧に知らん曲吹k(略))
・飲み食い自由なことを責められる。(ぐうの音も出ない。気の使える人はちゃんとお茶にする。ポカリやオレンジジュースを持ってくる人もいた。)
私怨がたっぷりだが、きっとこの世のパーカス経験者には分かってもらえるだろう。
「パーカスは暇なの?」と嫌味を言われることがある。
声を大にして言いたい。
「暇です!!!!!!!!!」
暇じゃなきゃ、根は真面目だからちゃんと練習する。
管楽器は音程があるが、こっちは鍵盤やティンパニーなど以外は音程じゃない。音。
リズム。
広い部室に、リズムだけが聞こえるパート練習は、本当に大変である。
『笑ってはいけない!パーカッションパート練習1時間!』である。
誰かが笑ったら、リズムだけが響く部屋の中で笑い声も混ざり、とても滑稽である。
それに同じフレーズ・リズムを40小節繰り返しなんてあった日には、全員今どこにいるのか分からずに、とりあえずメトロノームに合わせて永遠と止まらないこともある。
その時誰かが、「今どこ~~~!」と叫ぶため、大声になる。
(大体みんな「分からない!」と叫ぶ)
暇を持て余すパーカスは、部室にあるもので遊びを見出すプロになる。
チョークの粉でフェイスペイント、指ホッケー、絵しりとり、身近な音楽をパロディする(マックのポテト・千本桜・チャイムなど)、昼寝、かくれんぼ、運動部を眺めながらギャンブル、楽器のチューニングと偽りサボる
など、数えきれない。
特にサボりとギャンブルは私と仁先輩の中で毎日のことで、きょうこちゃんは最初は戸惑いこそすれ慣れてきたら、基本出来ちゃう子のためサボる。
サッカー部や陸上部にはお世話になったといえるだろう。
今これを読んでくれていて、吹奏楽部に興味のある子は絶対にこの作品を人に紹介したらだめだぞ!
こんな風になったらあかんって言われて、めちゃくちゃ厳しい練習をさせられたり、パーカスの立場が危うくなるぞ!
楽だからってパーカスを選ぶと、後悔するよ!
パーカス関係者様、怒らないでください。
これはあくまで私の中学生時代の話です。
時の流れとともにパーカスの環境も変わっている可能性もあります。
コメディとして受け取っていただけたら幸いです。
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