第3話 パート発表

顧問の先生が、発表する瞬間


「仁くん、ロール」


ドラムロールが始まる


いや、こんな演出いらんからさっさと発表してくれや…


他の子がどんどん発表されていく中、私は残る


パーカスは私、パーカスは私…


「神奈川さん、パーカッション!」


「キャーーーーーーーーッ!?!?」


私は叫び、部内は笑いに包まれる


しかし包まれたのは顧問と先輩方限定だ


他の子は希望通りではないのだから、私に対する目はとても厳しいものだった


「なぎちゃん良かったね〜」


「なぎちゃ、頑張ってたもんね」


「神奈川ちゃん、おめでとう〜!」


「なぎさちゃん、よかったよかった」


いろんな先輩がいろんな呼び方で喜んでくれた


生きていて良かったと思えた


奈良先輩は喜んでくれなかった


「君なら大丈夫だね」


名前で呼んでくれないんだ


奈良先輩は帰り道、2人きりの時にようやく私のことを呼んでくれた


「神奈川ちゃん、パーカスになれてよかったね。おめでとう」


私はすごく嬉しかった


「奈良先輩方のおかげです!ありがとうございました!!他の先輩方にも感謝の気持ち伝えておいてもらえますか??」


「分かった。おつかれさま」


奈良先輩は手を振り、踵を返した


私は、いじめられ慣れていることもあり、嬉しいことが少ない人生だったが、今回ばかりはとても嬉しかった


その日はスティックと一緒に布団に入った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る