広くて遠い世界

「せかいはもっとひろいもの」


 そのことに気づいたのはいつのことだったのだろう。

 身近な例を挙げると、本だ。本を読むと、世界が広がっている。こことは違う世界がある。もっと広い世界に行きたい。もっと遠い世界に行きたい。そう渇望してきた。だからこそ私は本に魅せられたのかもしれない。


 閑話休題。


 小中学校はほとんど同じ世界だったから。それはとても退屈だった。高校生になってやっと世界が少し広がった。

 それでも。私は思う。

「もっと遠くへ」


 私の地元の話をしよう。

 世界はすごく狭かった。よく、「ガラスの天井」と言うが、うまく表されていると思う。

 ただの地方の県の、田舎の街で、こんなに狭い世界に燻っているのはバカバカしいと思っていた。たまたまそこに生まれたばかりに。

 均一的な人、知り合いの人しかいない地元。私は人と深く付き合うのは嫌いだし、人見知りだけれど、新しい人と話すのは好きだ。違う世界が見えている幅広い人々と話をしたい。


 大学は地元を出た。やっとしがらみから抜け出せた、と嬉しかった。

 大学に入って、世界は信じられないほど広かったことに気がついた。心が軽やかになる。日本だけではなく、海外のことも知ることができた。面白かった。常識が覆される感覚が新鮮だった。私が変わっていておかしいわけではないと実感する。


 だが、それと同時に小さい頃から世界は広くて遠いものだと信じていたが、果たしてそれは正しいのか疑問に思った。

 中国から来た留学生の女の子と「同級生の男子は子供っぽい」などという他愛もない話で盛り上がった。

 アメリカの先生と大晦日について話していて、紅白歌合戦は「テレビでつけておいて、『この曲聞いたことある』『この衣装すごいね』と、話題の種にする」という話をしたら、「どこでも同じだね」と言われた。


 もしかしたら、私が思っているより、世界は狭くて近いものなのかもしれない。

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