シャープペンシル

 中学生の時に不登校になった友達がいた。教室に来ていた頃に仲が良かったので、先生に頼み込んで保健室などに会いに行っていた。


 その頃私の学校では、というか学年では、だろうか。有名なシャープペンの二大派閥があった。大体のクラスの人がメインで使っているシャープペンはそのどちらか。皆さんもご存知かもしれない、芯が尖り続けるものと、持ち手がぷにぷにしていて振ると芯が出てくるものだ。誰しもどちらか一本は持っているのではないか、というくらいに流行っていた。


 かくいう私は手に馴染まず、買ってすらいなかった。もちろん使っているシャープペンも違った。そして、不登校になった彼女が使っていたシャープペンも二大派閥のものではなかった。ただ、それなりメジャーなものだったので、文房具コーナーなどで普通に見かける。


 彼女は長期休み中に転校して行ってしまった。友達が使っていたシャープペンなんていちいち覚えていないのに、なぜか彼女が使っていたものは強烈に覚えている。

 そして、文房具売り場でそれを見かけると、かすかな胸の痛みとともに彼女のことを思い出す。

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