虹は雨が降ると出る。雨が降るとできるものは水たまり。そして、光の角度や加減やらで虹ができるらしい。と言うことは、水たまりから水たまりを繋ぐように虹ができるのではないか、と幼い私は想像していた。虹が出ている水たまりを見ていたい、とも考えていた。


 小学生の頃、台風のために休校になったが、午後は晴れた日など、私はよく母親にこう言った。

「虹を探しに行く」

 多分母親は、私が前記のようなことを考えているとは露ほども思わず、虹が見たいのだろう、雨も上がったし、外に出たいようだから散歩するか、としか考えていなかったに違いない。めでたく外に出た私は虹の方向に向かって意気揚々と歩き始める。しかし、行けども行けども同じ距離。

「虹のもと」となる水たまりはもっと遠くにあるのだ、と落胆し帰路に着いていた。


 夢を捨てきれなかった高校時代、理科の授業で虹のでき方を教わった。屈折やら分散やら……。つまらない、と思った。そして、虹が水たまりからできる様子を見ることは決してないことを悟った。


 光の屈折や分散でできると思うより、水たまりから水たまりへの架け橋であると考える方が、虹の神秘性合っている、と思うのは私だけなのだろうか。

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