小学生の頃、地元に大きいショッピングモールができた。母に連れられそのショッピングモールに行くと入り口近くの洋服屋さんで、ショーケースの中のマネキンの服を替えていた。思わず私は足を止め、見入った。店員さんによって服を脱がされ、新しく着替えさせられているマネキン。原因さんの鮮やかな手捌きと、服によって変わるショーケースの世界観はいつまでみていても飽きなかった。見惚れていたので時間感覚は定かではないが、二十分ほど経った頃、店員さんが

「（お子さんが）ショーケースに入ってみますか？」

と母に尋ねた。

「いえいえ、すみません」

そして手を引かれて違うお店の方向へ歩いて行った。

帰る時、新しい服を着たマネキンが鎮座していた。