マフラー

 寒い季節の制服の女子のおしゃれ、それはマフラーだ。しかし、私はマフラーを巻くのが苦手だ。周りの女子のように格好良く巻けない。巻けないのに嫌気がさし、毛糸のマフラーやスヌードをつけていた時期もあった。

 そんな時期のことであった。廊下に落ちていたらしい赤いタータンチェックのマフラーを朝、担任の先生が持ってきた。

「これ、誰のだ?」

 クラスの男子の一人が言った。

「それ、さっき〇〇が首にかけてたよね。『あったけー』って」

 クラスがざわめく中、私の友達が手を挙げた。

「それ、私のです。


 次の日から、彼女のマフラーは変わっていた。私がそのことを指摘すると、おっとりとした彼女にしては珍しく、頬を膨らませて激しい口調で言った。

「〇〇君のせいだよ。もうつけられない。高かったんだよ、あれ。もう!」

 私は考え込んだ。「高いマフラー」とは如何だろう。友達の家にはいくつのマフラーがあるのだろう。私にはよくわからなかった。彼女と隔絶した何かを感じたのもこの時かもしれない。


 その後、私は母にねだってマフラーを買ってもらった。スーパーで、千円弱のもので、小さかった。


 未だ私はマフラーをうまく巻けない。つけたことのない大判のマフラーは大人の象徴のように思える。

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