第15話 道連れ鬼ごっこ

というわけで連れてきちゃいました!

夜部です!

ちなみに、毎回なんで高校のここの高校の略称夜部なんだろう……とか考えてます。

なんでなんだろうね。


正直、簡単に他人とあんな踏み入った話をしていたことに驚きだが、まあ、その場のノリということにでもしておこう。

そんなナンパ気分(逆ナンか?)で連れてきた龍馬を見た瞬間、愚兄は盛大に舌打ちをした。



「ガキが増えてやがる……!」


「奏音、その子どこの子?」



機嫌の悪い愚兄と戸惑いの表情をみせる夜斗さん。

まあ、説明なしに連れてきた私に非があるよな、こればっかりは。


小学校の同級生であることとか誘った理由などを嘘に真実をまじえて話す。

こうすることで嘘の真実味が増すのです。


私から一通りの説明をし、龍馬が補足をすれば、三人も一応納得してくれた様子だった。

疑っては、いるだろうけど。



「まあ、いいじゃねぇか。龍馬、だっけ?よろしくな」



翔さんが笑顔で龍馬にそう話しかける。

龍馬は静かにお辞儀をした。



「えっと、龍馬くんはどこの家の出身なの……?」



気の量的に家宝家と繋がりがある家の子供だと判断したのか夜斗さんが緊張した面持ちで問いかける。



「翡翠家の分家で赤南です」



そんな夜斗さんとは対照的に龍馬はさらりと家名を答えた。

龍馬が言うに、実際に赤南家は存在するらしい。

しかも、名前を使うのにはちょうどいいとかなんとか。

これは来る途中に二人で考えたことだ。

やっぱり、翡翠ですとは言えないからね。


翡翠という名前を聞いてさっきまでピリピリしていた愚兄と夜斗さんの雰囲気が少し和らいだ。


自分の家と繋がりがある家、つまり分家だといろいろ厄介なことがあるらしい。

本家に自分の家の株をあげようとしに来る奴とかを指すんだろうけど。

だから、金剛家と柘榴家の二人にとって翡翠家の分家ならばあまり関係がないのだ。

しかも、子供なのでそんなに構える必要も無い。



「……まあ、翡翠の奴なら」



愚兄が許可をしたところでいつも通り地獄が始まる。

最近は鬼ごっこが愚兄のブームらしく、しょっちゅう練習メニューに入れられている。

特に今日はいつもより人数が多いのでどことなく愚兄も楽しそうだ。


……いや、鬼ごっこではしゃぐとか小学生かよ。



「ルールは簡単!俺と翔に捕まんないように学校内を逃げること。制限時間の十分以内に俺らが捕まえれば俺らの勝ち。逃げきれればお前らの勝ち」



嬉々として説明をする愚兄に翔さんと顔を見合わせる。

鬼ごっこでテンション上がりすぎでしょ……。



「よーい、スタート!」



とはいえ、愚兄がはしゃぎながらそう言えば、鬼ごっこは始まる。

十分は割と長いので、体力を温存しておいた方がいい。

龍馬は戸惑ったように走りながら私の方を見てきた。



「いきなり、鬼ごっこが始まったが……」


「あ、これガチのやつだから。こっち来てみなよ」



ちょうど鬼が動き始めた頃なので、階段から二人で一階の方を覗く。

一階では愚兄が夜斗さんを追いかけている真っ最中だった。



「待ちやがれ、夜斗っ!」


「これ、毎回思うけど鬼ごっこだよね!?なんでこんなガチなの!?」



実にその通りだ。


ドタドタという足音とうるさい声。

サイコパスのごとく満面の笑みで追いかける愚兄はなかなかにホラーである。

走り去る二人を見て龍馬は顔を引き攣らせた。



「……ヤバ」


「ですよねー」



子供もドン引くレベルだぞ、愚兄。

その笑顔殺人鬼に見えるからやめとけ。

二人で愚兄の奇行見学会をしていれば、ふと上の方から気配を感じた。



「高みの見学か?お前ら」


「あ、やっぱ翔さんか」



声のする方、上の階を見ればそこには翔さんが立っていた。

手にはいつものブツ。



「……奏音」


「何?」



愚兄のせいでもともと引き攣っていた龍馬の顔が更に引き攣った。

視線の先には例のブツが。



「あの明らかに危ない色をした液体は……」


「負けた方の罰ゲーム」


「てことは負けたら」


「飲む」



私がそう言った瞬間、龍馬は私の腕を引っ張ってダッシュで走り出した。

速!もしかして、あの五十メートル走の時も一応手加減してた感じ?

そもそも、そんなにアレ飲むの嫌?……普通に嫌か。



「大丈夫。限りなく黒に近い紫なだけで毒は入ってないし。飲んだ後暫く味覚無くなるけど!」


「完全にヤバいやつだろ!?」



龍馬に引き摺られながら、私は翔さんから逃げるのであった。

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水瀬奏音は祓い屋である 波野夜緒 @honcl

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