第7話 記憶空間
「どこ、ここ……」
私は絶句した。
先程まで薄暗いうえに埃っぽい廊下にいたというのに。
今私がいるのは綺麗な屋敷の廊下。
明るく華やかで埃なんか一つもない。
メイドさんたちが廊下を行き交い、とても賑やかな印象を受ける。
「ここは、怪異の創り出す『
「記憶、空間?」
私の横にいる水晶さんが立ち上がってそう言った。
記憶空間?
何だそれ。
「記憶空間っていうのはね、怪異が怪異になる前……つまり、人間だった頃の記憶を再現した空間の事だよ」
「それに何の意味が?」
あんなビーム放てるんだったら私たちをさっさと殺せばいいのに。
何故そんな空間を創る?
私の問いに水晶さんは指を二本立てた。
「理由は二つ。一つ目、怪異は人間時代の強すぎる感情ゆえに出来た存在だから。強すぎる感情は基本的に人間への憎しみ、恨みからきてるんだよ。だから怪異は憎しみや恨みが生まれた場所で人間を殺したがる。復讐心ってやつかな」
あー、確かに嫌な事されたら相手に復讐したくなるよね。
出来るかどうかは人によるけど、私なんかは結構出来るタイプだし。
だとしたら、感情を溜め込んじゃうタイプの人が怪異になりやすいのか?
復讐とか出来る人より溜め込んでる人の方が思い的には蓄積されてそうだし。
よく分かんないけど。
「で、二つ目。自分が創り出す空間で戦うという事はイコール自分が有利な空間で戦えるって事。まあ、怪異は復讐心が異様に強いから一つ目が理由としては大きいかな」
水晶さんの説明の成程と頷く。
怪異が創り出したこの場所は全てにおいて創り出した怪異が有利って事か。
「この怪異の場合、発動条件は自分が大技を放つことだろーな」
一人納得したところに後ろから聞こえてきた声。
振り返れば、そこにいたのはピンピンしている愚兄だった。
あれだけ吹っ飛ばされたうえに壁に当たってもかすり傷程度って。
もう人間じゃないでしょ。
普通の人だったら死んでるだろうし丈夫な人でも意識は失うわ。
と、それは置いといて。
「発動条件なんてあるんですか?」
「そーだよ。てか、お前いくつ?その歳であんな衝撃的なの見てよく平気でいられるな」
「昨日死にかけた小一なめんな」
多分私が異常なだけだけど!
とはいえ、これも家宝家とかいうのの血筋的なやつなのだろうか。
よく分かんないなぁ。
後で水晶さんに聞いてみよ。
「ま、記憶空間は怪異を祓ったら壊れるしね。さっさと祓ってしまおう」
その言葉にふと、怪異ってどうやって祓うんだろうと疑問が浮かんだが……まあ、もう少ししたら分かるか。
……なんて呑気に考えていた自分が馬鹿でした。
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