第5話 木霊する

「その声は木霊か?」

「はい…木霊の杏です。」

「鬼喰らいの俺に何のようだ。」

「ここの森は鬼族の里である前に私たちの里でもあるのです。」

「俺は鬼喰らいだ。鬼を食うのを木霊ごときに否定される筋合いはない。」

「では、私たちの里を荒らさないと誓ってください。」

「わかった。誓ってやろうじゃないか。」



「杏、久しぶり。」

「琥珀様、お久しぶりです。」

「今、巨大な妖気の塊が近くにいた気がしたが、何か合ったか?」

「はい。鬼喰らいが現れてしまって…」

「何!?鬼喰らいだと!?あいつがもうここまでやってきているのか!?」

「はい…ついさっきそこの鬼族の村を荒らしていきました。」

「何だと!?生き残りはいるのか!?」

「わかりません。生き残りがいるのかすら……」


琥珀は急いで鬼族の村へ行った。

「おい!誰かいるか!いたら返事をしてくれ!」

「うぅ…お母さん……」

「どこだ!どこにいる!」

鬼の子を探し、琥珀はさらに焦りながら瓦礫を避けて進む。

「琥珀…様?」

「お前は村長の一人娘の…1人か?」

「はい…琥珀様は…」

「この村が鬼喰らいに襲われたと聞いて急いで駆けつけたんだ。」

「他に生き残っている者はいるか?」

「お母さんもお父さんも死にました…僕だけです。」

「私についてこないか?」

「琥珀様にですか?」

「うん、お前のことを養うことはできる。そして私の仲間に鬼の子がいてな…」

「お願いします!」

「じゃあこっちに来い。」

琥珀は鬼の子と手を繋ぎ、転移の術を使った。


「帰ったぞ、あるじ。」

「琥珀、おかえり…ってその子は?」

「この子は鬼の子の…」

白夜しろよですっ!お兄さんは鬼なんですか?それとも、人間なんですか?」

「僕は人間でもあり鬼でもあるよ、名前は天馬空也だよ。空也って呼んでね。」

「空也さんっ!よろしくお願いします!」

白夜は白く綺麗な髪、小柄な体にそれに見合う小さな角があり、とても可愛らしかった。

「それで琥珀…何があった?」

「はい主、私が木霊の森に行った時に鬼族の村が襲われたと木霊の族長に聞き…」


琥珀はあったことをそのまま全部話した。

「鬼喰らい…本当にいたのか…」

「主…鬼喰らいが主のもとに辿り着くのも遅くないと…」

「っていうかさ…その…主っていうのやめない?」

「主は主だよ!」

「いやそうじゃなくて…」

「もしかして主になりかわった妖怪!?」

「もう!琥珀!話を逸らさない!」

「はい…」

「主呼びは禁止。理由は…なんか嫌だから。今度からは空也でいいよ。」

「空也様っ!!」

「様付け禁止。呼び捨てでね。」

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