1. ~こ え ~




「おはようございます。今朝のニュースをお届けします」



凛とした、聞き取りやすい声。



「いやぁこの、焼き加減最高ですねぇ~スタジオの皆さんに是非食べていただきたいですっ!!」



よく響く、明るい声。



テレビのチャンネルをひとつ変えるだけで様々な声の人がいる。


「ちょっと!裕太!いつまでぼーっとテレビ見てるの!早く食べてしまってくれる?今日仕事早いのよお母さん」


「んあーい」


うるさく、つんざく声も、、、、。



『なんで母さんの声はそんなにうるさいんだー、、?』



「私だってうるさくしたくないんですけど」



やばい。このままでは彼女の逆鱗に触れそうだ。


朝ごはんをかけこみ、洗面所に逃げる。


ぱっと顔をあげ自分の顔を見る。


相変わらず自分の顔は嫌いだ。


肌が白い訳ではなく、かといって目が大きいわけでもない、しいていうならば鼻が高い程度。


鼻が高い程度だぁ?って友達に言われるがこっちとしたら、ニキビひとつないあいつの方が羨ましい。


でも、鏡の前であーだこーだいってたって、時は進むし顔は変わらないし、あまり自分の顔は見ないようにして身支度をした。




「いってきまーす」



「あ、裕太。傘もった?今日雨降るって」



『舐めてもらっては困ります。お代官様。持ってます。傘』



なんてったって、凛としたあの声が夕方から雨が降ると言っていたのをちゃんと聞いていたからね


「では」


僕は史上最高のドヤ顔をして、玄関を出た。



「なんだそのドヤ顔」



後ろからこもった、でもどこか引きつけるような声がする。



『ふっふっふっその声は隼だな?』


足先をくるりと、変え方向転換をする。

おっ。今日は調子がよさそうだ、


「だからなんだよってその、ドヤ顔」


振り向くとやはり、隼だ。


『いやね、僕は声を気にする人間でね』


「なんかムカつくなその、顔」


そう言ってひそめた隼の眉は今日も綺麗だ。


『そのおかげか、母上に言われる前に傘を持ってやったわ』


「あと、その話し方なんなん」


『ふはははは、いでっ』


「人の話を聞きなさい。」


朝からかなり強めのアタックだった。

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イチドリ! きき @kiki_0214

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