8.彼女のこと何も知らない
忙しなく走り去っていった高岡さんを見て「めちゃくちゃ足が速いなぁ」なんて、龍心は
「そういえば、待たせてごめん」
「そんなに待ってないぞ。そもそも俺のクラスは終わるの遅かったし、
「そっか。凛々果が呼びに来てくれて助かったよ」
色んな意味で。そんなことを考えながら僕のことを探しにきた凛々果を思い出す。
龍心は小学生の時からの親友だけど、凛々果と僕は高校からの友達だ。彼と比べて関係性は浅いかもしれないけど、彼女は僕のことをよく気にかけてくれていると感じる。龍心が困っているからと僕のことを探しに来る辺り凛々果らしい。世話焼きで他人のことばかり考えるタイプの彼女と、同じ女の子でも高岡さんとは全く正反対な感じがする。
「でも一緒に階段から降りて来たのはビックリした。高岡と仲良かったんだな」
廊下を歩きながら言った龍心の言葉に頭を横に振った僕。
「仲良いどころか、今日初めて話したよ」
「同じクラスだっけか?」
「そう、隣の席なんだよ。彼女はいつも寝てるけど…」
本当に彼女の印象が"美人でいつも寝てる子"だから、他に特徴が何も思いつかない。するとそれを聞いた龍心が納得したように頷いた。
「へぇ、教室でもそうなんだな。高岡は生徒会の時も眠たそうだぞ」
「…え??」
初めて聞く情報に僕は驚いた。
龍心が生徒会なのは知っている。生徒会長だし、集会とかで全校生徒の前に立ったりするから同じ学年で知らない子の方が少ない。
だけど高岡さんと生徒会って、何か関わりがあったのか。それは初耳だった。
「知らなかったよ。高岡さんって生徒会に入ってるんだ」
「ああ、書記として今学期からな」
「いつも寝てるけど、書記の仕事って出来てるの?」
尋ねると龍心は苦笑いで首を傾げる。
「どうだろう。一応参加はしてくれるけど、ノートは会計が付けてるしなぁ」
いつもボーッとしてる彼女が生徒会の一員として成り立っているかは定かではない。だって会計の生徒がノートをつける横で、眠そうにしている彼女の姿が想像つく。でもそれはそれで可愛い。
だけどもしかすると僕は、よく眠る顔の整った高岡さん。もとい高岡乃慧琉のことを何一つして知らないのかもしれない。
顔だけで人を判断していたなんて、高評価だとしてもすごく失礼かもしれない。僕は改めて"高岡乃慧琉"のことを知る努力をしてみようと、なんとなく考えていた。
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