4.理由探し
"私と寝て欲しい"
なんて、ほぼ初対面と言っても良いレベルの関係性なのに一体彼女は何を言ってるんだろう。冷静に分析しているようにみせかけて、薄暗い教室の中で僕はひどく混乱していた。
「ダメかな」
小首を傾げた高岡さんを、ただ見つめることしかできない。
「こんなこと頼めるの君しか居ないの」
「ちょ、ちょっと待って。話が掴めないよ」
「掴めなくてもいいよ」
困ったように笑った彼女は、細い腕で力強く僕の胸の辺りを押す。その勢いで後ろに体が傾き、自分の足に足がもつれて絡まった。
「うわ!」
バランスを崩すした僕の体は、狙ったかのように背後にあった椅子に倒れ込む。大きく動くと部屋中の埃が目に見えるぐらいぶわりと舞った。慌てて体を起こそうとする僕を見下ろす高岡さんに「人が来るかも!」と叫ぶ。
「…誰も来ないよ。来たことないもん」
諭すようにぽつりと言った高岡さんの顔は暗い。
「どういうこと…」
その言い方じゃ何度もこの部屋を使ったことがあるみたいだ。僕は咄嗟に教室の廊下側、窓ガラスの方に視線をやる。元々は更衣室か何かだったのか、教室は全面磨りガラス。扉には画用紙か何かが貼り付けてあって外からは中が見えないようになっている。
何の部屋なのかを尋ねようとしたけど、それを阻止するように高岡さんは僕の上に乗って来る。短いチェックのスカートの間から伸びた彼女の白い太ももに目がいくが、罪悪感を感じてすぐに逸らした。
「待って高岡さん…!お願いだから
「嫌。だって話したら断るんでしょう」
「でも聞かないと、分からないし…」
「分かれば絶対に協力してくれるの?」
"絶対協力"、なんて圧の凄い四文字。だけど膝の上に座る彼女は、なぜか至極悲しそうな表情をしている。その表情にビビった僕は何も言い返すことができない。
「
すり、と頭をシャツに押し付けた彼女。僕は唇を強く噛んで、体内から湧き上がってくる何かに抵抗する。高岡さんはそんな僕を見てじれったそうに瞼を細めた。
「
僕の下の名前、を吐いた高岡さんの桃色の唇、から覗く赤い舌先。そこまで考えた瞬間、きゅうと下半身の辺りが締め付けられたように熱くなった。ハァ…と吐息を漏らした高岡さんの指が肌を撫でるように触れて、いっそ絶叫しそうになる。もうダメだ、いちいち説明出来ないけど色んなことがヤバいんだ。
ドン!!!!
誰かが外から扉を叩く物凄い音が部屋に響いた。びょいーんと僕の体が大きく跳ねる。高岡さんが驚いたように後ろを振り返った。
「詩音!何してるのー!」
それと同時に廊下から聞こえた女の子の声は、どう考えても聞き覚えがあるものだった。姿は見えないけど誰なのかまで分かる。
「おーい!何かあったのー!?」
様子を確認するように叫ぶ声を背に、僕は慌てて高岡さんにストップを示すように両手を差し出した。
「ごめん…!降りてもらっていいかな!」
彼女も同じぐらい驚いていたんだろう。目を丸くしたまま素直に僕から降りてくれた。
その間にも扉の外はドンドコと激しい音を立てていて、椅子から立ち上がった僕は一瞬で萎えた気持ちを背負ってよたよたと扉に近寄る。
この状況何と説明すれば良いんだろう。色んな考えが
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