感覚と運動
手足の位置、運動の感覚などの体性感覚障害は様々な疾患でみられ、運動制御に影響します。運動では、感覚情報が、最適な運動を行うためのフィードバックとして機能するからです。このフィードバックという働きにより、比較器における最適な運動との比較、実行システムによる修正の決定、効果器における運動の決定が起こります。このフィードバック機構が何度か働き、最適な運動を選択し実行し、最終的には筋収縮や関節運動をおこします。また同時に、正確な運動の感覚特性の定義を作成するため、正確さに関する基準が作られ、後の運動実行に影響します。
運動は、様々な感覚情報のフィードバックを伴います。筋の収縮は筋力や筋長に関するフィードバックを、筋収縮によって生じた運動は関節や体の位置に関するフィードバックを、運動によって生じた環境の変化は視覚や聴覚などのフィードバックを生み出し、これらが比較器において、基準、予測された状態と比較され、その差異が実行システムに戻ります。
体性感覚の障害においてはこのフィードバックの機能がうまく働かず、何らかの感覚入力の代償により基準との差異を小さくし、望ましい状態での運動を行えるようコントロールしています。これは、脳内身体表現の変容に関わります。具体的には、痛みによる代償運動の学習などが例です。
体性感覚の情報は運動制御において多くの役割を果たしています。脊髄レベルでは、感覚入力は、脊髄レベルでの反射的な動きを起こします。運動ニューロンには、感覚受容器からの情報が集まります。感覚情報は、脊髄におけるセントラルパターンジェネレーターの運動出力の働きを装飾します。さらに感覚情報は、より高位の中枢からの運動指令を修飾します。体性感覚の情報は、このように、より複雑な運動コントロールに関わります。
脳の体性感覚野では関節の受容器、皮膚受容器、筋紡錘からの情報が統合され、体の状態の知覚に関わります。さらに側頭葉、後頭葉、頭頂葉の連合皮質において、知覚から活動への移行、認知、知覚の統合が行われます。
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