第23話
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023_エロフ1/2
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まだ空が暗い頃、剣を振る。物心ついた時から日課にしている。
季節は冬に向かっているため、朝晩はかなり冷えるようになった。
真剣に20回も振れば、蒸気のように体から湯気が立ち上る。
生活魔法があれば、ほぼ全てのことに対処できるだろうが、世界の果てを見るためにどんな困難があるか分からない。だから、体を虐め抜いていざという時に備えている。
この世界に、世界の果てを見たことがある人物が、何人居るだろうか? または、居ただろうか?
過去の生で賢者や大賢者と言われていたオレでも、世界の果てを見たことはない。
おそらく誰も世界の果てを見たことはないだろう。
空が白んでくると、剣を振るのを止めて朝風呂に入る。
風呂は毎朝入る。疲れた時などは、晩にも入る。こんな人は貴族でも珍しい。
そもそも貴族でも風呂は2、3日に1回。夏なら毎日入る場合もあるけど、逆に冬だと頻度は下がる。
平民も風呂には入るが、貧民になると風呂に入らない者も多い。
医師の真似事をしているオレからすると、風呂はできるだけ毎日入ってほしい。衛生環境と病気は密接に繋がっているところがあるからだ。特に食中毒や感染症は不衛生だと蔓延しやすい。
「坊ちゃま。お背中を流します」
パルが湯浴み用の薄い肌着を身につけて背中を流しにくる。これが日課なので、特別に驚くこともない。
パルは背中を流すと言って、いつも体中をくまなく洗ってくれる。頭から始まり、ドンドン下に向かっていくのだ。
「坊ちゃま、今日も元気ですね」
「いつもと一緒だよ」
パルの色っぽい姿を見ているので、元気になるのは許してほしい。オレも男だし。
パルは妖艶な笑みを浮かべ、元気なものを丁寧に洗ってくれる。
肌着が濡れてパルの体に密着し、その妖艶なボディを浮き彫りにする。
こんなにも美しい体を見せつけられたら、死にかけたお爺さんでも元気になるだろう。
体中を洗い終わると、湯船に浸かる。
最近よく考えるけど、風呂で使う石鹸をもっと良いものにしたい。
髪を洗うとパサつき、体を洗うと肌が突っ張る。そういったことのないような石鹸を作って、パルに使ってあげたいと思う。
「今日は闇の曜日だったな」
「はい、闇の曜日です」
治療院は休みなので、石鹸の改良に時間を使うのも良いかな。
「今日は薬草を摘みに行こうと思う」
「薬草ですか? 坊ちゃまの回復魔法に薬草は必要ありませんよね?」
「回復魔法とは関係ない。ちょっとした実験だよ」
「承知しました。お昼用の弁当を用意しますね」
「頼むよ」
朝食後、すぐに王都を出て薬草が採取できそうな山に向かう。
こういう時にエネミーサーチから進化したターゲットサーチが役に立つ。
ターゲットサーチを使って、肌に張りと潤いを与える薬効がある薬草が自生している場所へ。
青みが強いトゲトゲの葉が目的のロカイという薬草。
肉厚の葉を切ると、中は白い半透明の果肉があって、非常に瑞々しい。
「これは肌に張りと潤いを与えてくれる薬草だよ」
「それは素晴らしいものです! 是非、持って帰り、屋敷で栽培しましょう!」
パルの食いつきが凄い。パルも女性なんだなと、思わず抱きしめてしまう。
「はぅ……。坊ちゃま、こんなところで……」
「パルの香り、オレは好きだ」
「坊ちゃまが変態です。でも、パルはそんな坊ちゃまを見捨てたりはしません」
一応、オレのほうが主人なんで、辛辣な言葉は止めてくれ。
パルの言うように、このロカイを根から採取して持ち帰って、屋敷の敷地内で栽培してみよう。
上手くいけば、ここまで採りににくる手間が省ける。
魔法で地面を掘り起こし、ロカイを根ごと採取して収納する。
このロカイは髪に潤いと艶まで与えてくれるので、スーパー美容薬草なんだ。
「今度はあっちだ。行くよ、パル」
「はい」
パルをお姫様抱っこして、フライで飛んでいく。
その後、数種類の薬草を採取したオレは、パルが用意してくれた弁当を山頂で食べる。
「空気も美味いし、パルの弁当も美味い。見晴らしも良いし、隣には美人が座っている。言うことなしだね」
「まあ、坊ちゃまったら!」
デレたパルがオレの背中をパンと叩いてくる。
危うく崖の下に落ちるところだった。ちょっとは加減してくれ。
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