第19話
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019_国王からの使者
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しばらくは平穏……患者に囲まれた忙しい日々を送った。
毎日50人以上の患者を治療している。
おかげで生活魔法【創】の熟練度も上がった。
加 護 : 創造の女神アマリアの加護
スキル : 生活魔法【創】
才能 : 【魔法戦士SSS+】
武器 : 【剣A+/SSS+】【棍棒C+/S】【槍D/S-】【弓D/A】
魔法 : 【生活魔法S+/SSS+】
残念ながら剣のほうの熟練度はまったく上がっていない。
剣のほうは魔物相手に戦わないと、もう上がらないのだろう。
今日もいつものように患者の治療をし、日が沈んだ。
「今日はこの方で最後になります」
パルが通したのは、見窄らしい服と言うのも烏滸がましいボロを纏った、オレと同じくらいの年の少年だ。
少年は額から頬にかけて大きな傷痕があり、その傷痕によって左目が完全に潰れている。
「黒い髪に黒い目……。パルの親戚かな?」
「ご冗談を。そんな小汚い親戚はいません」
うむ、言葉に悪意がある。まあ、肌の色が全然違うから、種族が違うのは一目瞭然だね。
とりあえず、アナライズ。
「な、なんだ、これは!?」
「治療の一環だから、騒がないように」
まったく騒がしい子供だ。
「お前、なんで目を失った? 両親はどうしているんだ?」
「……そんなの関係ないだろ」
「言わないと治療しないぞ」
「金は払っただろ!」
誰も信じていない目だ。
「金は返す」
「くっ……」
「目を失った経緯を教えろ。それと両親は何をしているのだ?」
この傷はモンスターではなく、剣などの鋭利なもので切られた痕だ。状態から察するに、すでに5、6年は経過していると思われる。
「ちっ、金返せ!」
「パル。返してやって」
パルから金を受け取った少年は、扉を乱暴に開けて出て行った。
「あのガキ、調子に乗りやがってであります」
「そう言うな」
あの少年はまた来ると思う。
その時に話を聞かせてもらおう。
さらに数日、相変わらず千客万来。
と思ったら、外が騒々しい。またギルドのバカが騒いでいるのかと思ったら、すぐに静かになった。
でも、ギルドの職員が騒ぐかな? ダーナンが涙目になるぞ?
まあいい。パルがいい仕事をしているため、騒動はすぐに鎮静化したのだから。
「坊ちゃま。国王からの使者が騒いでいましたので、ぶっ飛ばしてソルデリクに引き渡しておきました」
「そうか、ご苦労さん。……って、違う! 国王の使者!?」
「はい。●玉潰すぞと話し合ったら、大人しくなりました」
パルにとっては国王の使者もそこら辺の半端者も変わりないようだ。
後からどうやってフォローしようかな。
ま、いっか。今は治療が優先だ。
こちらの都合も確認せずに喚き散らす人は客ではなく、営業妨害野郎。それが貴族や国王の使者でもだ。
夕方になり、営業終了。
屋敷に戻ると、リビングで小さくなってソファーに座っている使者と、その従者と思われる6人の男たちが正座していた。
「これ、どんな状況?」
「ソルデリクに、教育するように申しつけておきました。この者たちは坊ちゃまの奴隷としてこれから働いてくれるでしょう」
ああ、なるほど。洗脳したわけか。
「って、国王の使者を洗脳するんじゃない!」
「あまりにもうるさかったので、性格を矯正しただけです」
「……洗脳してないのか?」
「してません。矯正です」
「してないなら、いいか」
矯正は悪いところを治すことだし、問題ないよね。うん、そういうことにしよう。
ソファーに座って使者と向かい合う。
目に光がない。見なかったことにしよう。
「オレがサイですが、ご用向きは?」
「わたくしは、サイ様に国王陛下のお言葉をお伝えにまいりました」
抑揚のない平坦な声だ。あまり聞きやすいものではない。
性格を矯正されると、こんな喋り方になるんだな。
「お聞きしましょう」
一応、国王の使者だから丁寧な言葉遣いをしよう。
「国王陛下は高名なサイ様を城にお招きされ、勲章を授けたいと仰っておいでです」
「勲章?」
「はい、ローズ勲章を授けられるとのことにございます」
ローズ勲章か。それは、5つある勲章の丁度真ん中。第三位の勲章。
魔物退治の功績として、よく贈られる勲章になる。
「国王陛下のお気持ちは非常にありがたく思います。しかし、オレは勲章をいただくつもりでレッドドラゴンを討伐したわけではありませんので、ご辞退申します」
「それは残念です。そのことは陛下にお伝えいたします」
「よろしくお願いします」
使者が帰っていった。
勲章をもらうにしても第三位では箔がつかない。
せめて第二位の
おれが勲章をもらえば、公爵家に嫌がらせになるからな。
せっかく公爵家に嫌がらせをするのだから、できるだけ上位の勲章をもらっておきたい。
勲章をもらったら、お婆様に見せに行こうかな。
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