第18話
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018_対決! 冒険者ギルド5/5
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再びギルドからの呼び出しがあったのは、3日後だった。
「ロジーとイルミダは、悪質な隠蔽工作を行ったため、懲戒解雇。さらには、罰金を科している。他に今回のことを知っていて口をつぐんでいた者たちは、4カ月の減給。また、ダーナンは1カ月の無給、私は3カ月無給の処分を行うことになった」
全部で30人くらいの処分が行われたそうだ。
「また、今回の件で多大な迷惑を被ったサイ殿には、大金貨100枚を支払うことで賠償としたいが、了承いただけるだろうか?」
ギルマスの目の下にクマができている。この3日間、必死で後始末に取り組んだのが分かる酷い顔だ。
「賠償が大金貨100枚か……」
普通に考えれば、大きな金額なので納得できる。正直言って、ここまで金額を提示してくるとは思わなかった。
多分だけど、レッドドラゴンという圧倒的な力を持つ種族を倒せるオレとは敵対したくないのだと思う。だから、できるだけ多くのものをと考えた。
だけど、オレの目的は、お金ではない。情報なのだ。
ソルデリクたちマニシャース一家を惨殺した犯人(使用人たち)の情報。それが、オレの望むもの。
「不満があるのであれば、大金貨150枚ではどうだろうか? これ以上はさすがに……」
オレの反応が悪かったので、ギルマスはさらに金額を上乗せしてきた。
「ギルマスに頼みがある。それを聞いてくれたら賠償金は要らないぞ」
「大金貨150枚を要らぬと言うのかね?」
「オレの頼みを聞いてくれたらだけどな」
「……なぜだろう、さらに上乗せして大金貨200枚を支払ったほうがいい気がするのだが?」
ある意味、面倒な話だからな。だけど、無理にと言うつもりはない。
「オレの頼みは、情報だ」
「情報?」
「ギルマスは、オレが住んでいる屋敷のことを知っているか?」
「ああ、知っているとも。これまで数多くの神官たちが浄化できなかった悪霊を、サイ殿が浄化したというのは王都の中でもかなり噂になっているからね」
「その悪霊のことなんだ。言うまでもないと思うけど、あれはマニシャースだった。それは理解できますよね」
「当然だね」
「オレが悪霊と対峙した時、悪霊が言ったんだ。自分たちを殺した奴を断罪したいと」
「悪霊がそう言ったのかね?」
「言ったな」
「ふむ……」
ギルマスはオレが何を言いたいか、理解できたようだ。
「私は15年前からこの王都でギルマスをしているので、当時のことは記録を読んだ程度なんだが、マニシャース一家を惨殺したのは、貧民街の者たちだったはずでは?」
貧民街の人たちが屋敷に押し入って、マニシャース一家を惨殺した上で金目の物を強奪したと世間では言われている。
実際に、衛兵に捕まった貧民たちも居るし、盗まれた物の一部が衛兵に押収されている。
しかし、殺された本人がそうではないと言う。これ以上、確実な情報はない。
「ギルマスがあの事件のことをどれだけ知っているか、オレは知らない。よく考えれば分かることだが、なぜマニシャース家の者しか死んでいないのか?」
オレの言葉を受けて、ギルマスは顎に手を当てた。
「……あの屋敷の規模であれば、使用人が居て当然。通いの者も居るだろうが、泊まり込んでいる使用人が居るのは、当たり前。そして、使用人は殺されていないか……」
「その通り。別に犯人を捜せとは言わない。あの当時の使用人を捜してくれればいい。どこに居て、今は何をしているのか。その程度でいい。使用人の居場所が分かれば、後はオレのほうで事情を聴く。それに、ギルドが誠意を持ってちゃんと調べてくれさえすれば、見つからなくても文句は言わない」
「……分かった。その頼みを飲もう。だが、20年も前の話なので、使用人が見つかるか、本当に分からないからな」
「結構。ただし、誠意を持って調べてくださいね」
「了解した。私が責任を持って対処する」
このギルマスが話の分かる人で助かった。
分からず屋だと、もっと追い込まないといけなかったから、面倒だったんだよね。そうならなくて、本当に良かった。
「ところで、サイ殿はこの後、どうされるのかね?」
「どうされるとは?」
「レッドドラゴンを討伐したのだから、サイ殿の噂は王国中に知れ渡ることだろう。そうなれば、国王から招聘されることも考えられるはず。サイ殿はそれほどのことをしたのだ」
オレは旅をしたいので、国なんてどうでもいい。
「国王から招聘があったら、ギルドに知らせたほうがいいかな?」
「そうして欲しい。そのほうが、サイ殿を権力から守ることもできると思う」
「分かった。連絡する」
ギルマスが軽く頭を下げると、銀髪が垂れた。
パルの黒髪も艶やかで美しいが、ギルマスの銀髪も美しい。
「坊ちゃま。私のほうがサラサラですよ」
「……オレの心を読むの、止めてくださいよ。パルさん」
何はともあれ、ギルドがソルデリクたちを殺した使用人たちを捜してくれることになった。
これで何人か見つかれば、ソルデリクたちの恨みを少しは晴らすこともできるだろう。
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