第17話
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017_対決! 冒険者ギルド4/5
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ギルマスはため息を吐き、イルミダに視線を移した。
「イルミダ。マジックアイテムを使って嘘が発覚した場合、より重い罰を与えることになる。もちろん、サイ殿も同じだ。どちらかが嘘をついているのは明らか。今のうちに正直に申告してほしい」
「オレは嘘は言っていない。マジックアイテムを使ってもらって、結構」
「イルミダ。君も同じかね?」
「わ、私は……」
イルミダの視線が泳ぐ。それがロジーに向けられた。
ふむ、そうか、そういうことか。
イルミダはマジックアイテムのことは知らなかった。だから、嘘を言っても言い逃れができると思った。
しかし、そんなことはイルミダ1人の力でできることではない。他の受付嬢や職員があの場には居たのだから。
そこで出てくるのがロジー。2人がどういった関係なのかは知らないが、協力してイルミダの行いをなかったことにしようとしたんだな。
しかも、ロジーは幹部だ。権力を笠に着て、他の受付嬢や職員に箝口令が出ているかもしれない。
「私は何も……」
「坊ちゃま。こちらを」
ギルマスがイルミダを問いただしているところだけど、パルが懐からある物を取り出した。
「そう言えば、映像を記録していたんだった」
「「「「えっ!?」」」」
「冒険者登録の記念に、映像クリスタルで映像を保存していたんだ。本来であれば、ギルドにしっかりと捜査してもらうところだが、これを見れば一目瞭然だと思うぞ」
呆けているギルド側の4人に、映像クリスタルを見せる。
「ギルマス。映像を再生してもいいかな?」
「……もっと早く出してほしかったよ。いや、いい。再生してくれ」
映像を再生する。あの時の映像空中に映し出され、イルミダの言動がギルマスたちの目と耳に入る。
「わ、わ、わ、私は……」
「情状酌量はないな。ダーナン、イルミダを拘束してくれ」
「はい」
「ま、待ってください! 私はロジー部長に言われて、嘘をついたのです!」
「何をいうのですか、イルミダ!?」
「だって、部長がなかったことにするって言ったじゃないですか」
「私はそんなこと言ってない!」
醜い言い争いだ。
オレが居ないところでやってくれよ。
ギャーギャー騒ぐ2人を冷めた目で見つめるギルマスとダーナン。早く止めてくれないかな。
「うるさいっ! 黙りなさい、この
パルの殺気のこもった、怒鳴り声が響いた。
いきなり怒鳴らないでほしい。耳がキーンとなったよ。ただ、怒鳴りたくなるその気持ちは、よく分かる。
「ギルマス。身内の不祥事を揉み消すため、その罪を坊ちゃまに擦りつけようとしたことについて、まずは謝罪があるべきでしょう。また、そこの2人、その他にこの茶番に関わった者たちを断罪することで、坊ちゃまに許しを請うべきだと思いますよ」
「……これは失礼した。今の映像で今回のことは、こちら側の不祥事だというのが明らかになりました、サイ殿には不愉快な思いをさせたことを、ギルドマスターとして謝罪いたします。また、直ちに背後関係を洗い出し、関係者の処分を行います。そちらのほうは、しばらくの猶予をいただきたい」
ギルマスが深々と頭を下げた。それに倣ってダーナンも頭を下げた。そのダーナンだけど、かなりホッとした表情をしている。
オレを捕縛するとなったら、パルが黙っていない。そうならなくて良かったと思っているんだろうな。
オレもギルドと敵対するのが目的ではないので、ギルマスの謝罪を受け入れた。
しかし、謝罪を受け入れるだけでは、オレの目的を達成できない。だから、釘を刺しておくのは忘れない。
「今回のこと、ギルドがどのような後始末をするのか、しっかり見させてもらう。その結果次第では、帝都の総本部に抗議することになるかもしれないぞ」
「っ!?」
オレが総本部に抗議したら、ギルマスの顔は丸潰れだろう。
ただの冒険者がそういった抗議をしても一笑に付されると思うけど、レッドドラゴンを討伐したオレの抗議だから、それなりの効果はあるはず。
つまり、ギルマスはオレの納得いく幕引きをしなければならない。
こうやってイニシアティブをとっておけば、こちらが何を望んでいるか確認してくるかもしれない。それを待つことにした。
それがこの騒動を起こした目的なんだから。
そもそも、冒険者登録した直後のオレが、レッドドラゴンのクエストを受けようとしても受けられるとは思っていなかった。
イルミダが拒否したのは、こちらの思う壺だったわけなんだ。
イルミダとロジーがそれを隠蔽しようとしてくれたことは、嬉しい誤算だった。
傷口を広げてくれたのだから、オレのためにありがとうと心の中で感謝しておこう。
こっちとしてはレッドドラゴンに絡む騒動で、オレを悪役にしたギルドから謝罪を引き出すのが第一の目的だった。
そのことを持ちだして、各国に支部を置く冒険者ギルドの情報網を使いたかったのだ。
オレが知りたい情報は、マニシャース一家を皆殺しにした者たちのこと。20年も前のことを調べるのに、オレではマンパワーが足りない。ギルドに貸しを作り、犯人を捜そうと思ったのだ。
生活魔法のターゲットサーチで犯人を捜そうとしたけど、どうも近くに居ないようで捜せなかったこともあって、冒険者ギルドに協力を仰ごうというわけ。
ここまでは、オレの思惑以上に良い感じ。あとは詰めを誤らないように、ギルマスを取り込むだけだ。
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