第16話

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 016_対決! 冒険者ギルド3/5

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 ロジー女史にオレを捕えろと言われたダーナンだが、動こうとしない。

 どうやら彼女には、ダーナンへの命令権はないようだ。


「どうしたの!? 早く捕えなさいよ!」


 ロジー女史は、この状況を理解できていない。

 ここでオレを捕えようとすれば、約1名が大暴れするだろう。そうなれば、冒険者ギルドは瓦礫の山になるということを、ギルマスとダーナンは理解しているようだ。


「ダーナン!」

「止めなさい!」

「っ!? なぜですか!? ギルドマスター!」


 上司が止めろと言っているのに、ヒステリックに喚き散らすとは呆れてものも言えない。

 最初のイメージが崩れ去って、ロジー女史、いや、ロジーのイメージはダメダメ役立たずというものに置き換わった。


「これ以上騒ぐのであれば、退席を命じますよ」

「っ!?」


 ロジーは唇を噛んで、悔しそうに黙り込んだ。


「騒がしくて申しわけないですね」

「いや、こういう人物には慣れているから大丈夫だ」


 継母のほうがもっと酷いヒステリックだったから、慣れている。


「話を元に戻すが、サイ殿がレッドドラゴンを『ジョンソン商会』に売り渡したことは、ギルドの規約違反であると私たちは考えている。そのことについて、サイ殿は規約違反に当たらないと考えているようだが、その理由を教えてくれるかな?」


 うむ、このギルマスはちゃんと話を聞こうという姿勢が見える。

 ロジーとは違ってヒステリックにもならないし、冷静な対応を心掛けているのは好感度アップ。


「簡単なことだ。オレはギルドのその規約を知っているから、レッドドラゴンのクエストを受けようとした」

「「えっ!?」」


 ギルマスとダーナンが驚いた。この二人はそのことを知らなかったようだ。

 しかし、ロジーは歯噛みしている。こっちは知っていて、オレを冤罪で弾劾しようとしていたみたいだね。良い性格してるじゃないか。


「オレはちゃんとギルドに仁義を通した。しかし、受付嬢はオレがクエストを受けることを拒否した。だから、ジョンソンの店にレッドドラゴンを持ち込んだにすぎない。それで規約違反と言われるのは、非常に気分が悪い」

「嘘をつくなっ!」

「ロジー!」


 叫んだロジーにギルマスが一喝。


「次に喋ったら、降格処分にします」

「っ!?」


 ギルマスが強権を発動するぞと、ロジーを脅す。この理性のない女には、これくらいが丁度いいようだ。


「今の話を詳しく聞かせてください」

「詳しくと言われても……今言った通りだぞ。冒険者だからクエストを受けようとしたが、受付嬢に拒否されたのでジョンソンの店にレッドドラゴンを持ち込んだ。ジョンソンも冒険者ギルドのことを気にしていたが、クエストの受注を拒否されたと話したら、買い取ってくれたんだ」

「事実確認をします。受付嬢の名前は憶えていますか?」

「いや、名前は聞いていないから、分からないな。ただ、金髪ロールなのは、覚えているぞ」

「金髪ロールですか。ダーナン。イルミダをここに」

「はい」


 あの受付嬢はイルミダというらしい。

 しかし、金髪ロールですぐに名前が出てくるんだな。ギルマスは職員全員を把握しているみたいだが、ギルド内で何が起こっているかは把握していない。そんな感じかな。

 まあ、人員も多いだろうから、全てのことを把握するのは無理だろう。そういったことは、ギルマスの下で部下を管理する奴の仕事だ。


 ダーナンが出て行ってしばらくすると、イルミダを連れて帰ってきた。

 オレの登録をした受付嬢で間違いないと、ギルマスに頷いておく。


「イルミダに聞く。こちらのサイ殿の冒険者登録をしたのは、君かね?」


 イルミダは平然としている。ように見える。


「……はい。私です」

「クエストを受けようとしたサイ殿に、受付を拒否したのかね?」

「……いいえ、そのようなことはありません」


 平然と嘘を吐いたよ。


「サイ殿、イルミダはこう言っているが、どうかな?」

「その受付嬢が嘘をついているかどうかを、オレが証明する必要はないと思うけど? それはギルド内部で処理すべきことだろ?」

「たしかに、サイ殿の言う通りだ」

「噂では、冒険者ギルドには嘘を見抜くマジックアイテムがあると聞いたことがある。それを使えばいいんじゃないか」


 これ、冒険者ギルドの極秘情報だけど、構わないだろう。

 ギルマスはなんでそれを知っているんだと、オレを見つめてきた。

 美人に見つめられるのは、悪い気分じゃない。ただし、後ろから殺気を感じるので、凄く背筋がゾクゾクする。


「わ、私は嘘なんかついていません!」

「イルミダ。発言は私が質問した時か、許可を得てしなさい」

「は、はい……」


 不満そうな表情だけど、ギルマスには逆らえないようだね。


「あのマジックアイテムのことは、極秘なんだがね。なぜそのことを知っているのか……そのことは今はいいだろう」


 ギルマスは苦笑いした。

 そりゃー、知っているよ。

 公爵家でもその情報はあったが、それ以前にそのマジックアイテムを作ったのは前世のオレだからな。

 あの時は必要に迫られて作ったんだが、それが今回も役に立ちそうだ。


 

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