第15話

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 015_対決! 冒険者ギルド2/5

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「冒険者サイ殿。貴方は冒険者として守るべきギルドの規約に違反していると、私たちは判断しました」


 真面目ちゃんが口を開くが、なんというか高圧的だ。


「オレが規約違反? はて……そのつもりはないんだけど、どんなことに対して規約違反か教えてくれるかな?」


 真面目ちゃんのこめかみがピクピクと動き、バンッと机を叩いた。


「貴方、本気で言っているの!?」

「本気も本気。オレが何をしたのか、ハッキリと言ってくれなければ分からないだろ? パルは分かる?」

「規約が何を差しているのか、さっぱり理解できません。この人物は頭が弱いようですね?」

「なんですって!?」


 真面目ちゃん改め、ロジー女史、いや、改めなくていいのか。

 まあいい。そのロジー女史は明らかにパルに敵意を向けた。


「落ち着きなさい、ロジー」

「しかし! ……し、失礼しました」


 ギルマスに止められたロジー女史は、浮かした腰を下ろした。

 見た目では一番冷静そうに見えたが、一番熱い人物なのかもしれない。

 人は見た目では分からないものだ。もっと人を見る目を養わないと。


「サイ殿。冒険者ギルドに所属する冒険者は、モンスターの素材を優先的にギルドに持ち込むことが定められている。それは知っているかな?」


 このギルマス、ギルマスになっているので、かなりの年齢なんだと思うが、20歳と言っても通じる容姿だ。

 パルもそうだけど、エルフ系種族は年齢が分かりにくい。


「坊ちゃま、何か?」

「い、いや……なんでもない……」


 凄いプレッシャー(殺気の弱いやつ)だ。だが、オレだけではなく、目の前に座っている3人も青い顔をしているよ。


「パルさん……。そのプレッシャーを止めてもらっていいかな」

「ウフフフ。プレッシャーだなんて、何を言っているのですか、坊ちゃま」


 プレッシャーが止まった。3人の呼吸が戻った。うん、生きてるね。

 相変わらず年齢のことを考えただけで、パルのプレッシャーが半端ない。


「な、なんなのですか、貴方は!?」


 ロジー女史が今のプレッシャーに抗議の声を発した。


「申しわけない。オレがちょっと不用意なことを考えたためなんだ」

「はあ?」

「黙れ、脳足りん」


 パルも黙りなよ。


「なっ!? この……」


 怒りを顕わにして腰を浮かせたロジー女史が、白目を剥いて机の上に顔をぶつけるようにして倒れた。

 パルの殺気は、プレッシャーと言うには常軌を逸したほどになっている。

 多分、ロジー女史は購買部の部長だから文官なんだろう。ダーナンのように戦いを知っている奴は、パルに喰ってかかろうとはしないものだ。


「パル。止めないか」

「敵意を持って坊ちゃまに接する者は、排除します。それが、私の役目ですから」

「話せば分かる。それで分からない奴なら、冒険者ギルドの幹部にはなっていないだろ」

「そうですか? 十分に無能ですよ、その女は」

「とにかく、殺気を放つのは禁止だ」

「坊ちゃまがそう仰るのであれば、次は喉を切り裂いて黙らせましょう」


 奇麗な顔して怖いことを言わないの。

 ギルマスとダーナンも目を白黒させているじゃないか。


「それも禁止。オレに危害が加えられそうになるまでは、一切の攻撃を禁止する」

「……納得いきませんが、承知しました」


 なんとかパルを説得したけど、ロジー女史は白目を剥いて涎を垂らしてとても女性がしていい顔ではない。

 それに、ダーナンもいつ気絶してもおかしくないほどで、唇が真っ青。

 しかし、ギルマスはさすがだね。細かく体が震えているけど、なんとか正気を保っている。


 ―――リフレッシュ。


 三人に魔法をかけて、気分を回復させた。ロジー女史も起こして、椅子に座ってもらった。


「ゴホンッ。申しわけなかったね。パルは敵意に敏感なんだ。だから、敵意を発するのは、止めて欲しい。あまりしつこく敵意を出すと、オレでも抑えられないから」

「坊ちゃま、私は坊ちゃまの忠実なしもべですよ」

「自称、僕ね。それとパルが殺気を放つと、話が進まないから本当に止めて」

「………」


 返事はない。だけど、一応分かってくれたようだ。


「それで、先ほどのギルマスの質問に対する答えだけど、もちろんその規約のことは知っている。登録する時に、その説明を受けたからな」


 オレの言葉を聞いた3人が、三者三様の表情を見せた。

 ダーナンは困惑、ロジー女史は嬉々、ギルマスは驚き、だろうか。


 ロジー女史が喋ろうとしたのをギルマスが制止した。

 さすがはギルマスだ。この場の状況がよく理解できている。それに対し、ロジー女史はかなり不満げな表情だな。

 自分の意思が優先されると思っている感じだ。いいところのお嬢様なのか?


「サイ殿が『ジョンソン商会』に持ち込んだレッドドラゴン。それは本来、このギルドに持ち込むべきものだというのは、理解できているかな?」

「本来ギルドに持ち込むべきなのは、理解しているよ」

「それが規約に違反していることもかね?」

「違反していないと、オレは思っている」


 ロジー女史はオレを呪い殺さんばかりに睨んでくる。

 それに対してギルマスとダーナンは困惑の表情だ。


「なぜ違反していないと思うの―――」

「ギルマス! もういいでしょう! この者は、自らの罪を認めたのです! 罰を与えましょう!」


 ギルマスの言葉を遮って、ロジー女史が叫んだ。

 それは部下としてどうかと思う。


「ダーナン。この男を捕えなさい!」


 短絡的だな。

 オレが心配することではないけど、ロジー女史にダーナンへの命令権はあるのかな?


 

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