第13話

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 013_治療院3/3

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 闇曜日、オレはジョンソンの店に向かった。


「サイ様。おはようございます。わざわざお越しくださり、感謝いたします」


 ベイルに迎えられ、ジョンソンの部屋に。


「今回、レッドドラゴンを購入するのは、ダラリア公爵にございます。サイ様」


 ジョンソンの説明を聞くと、ダラリア公爵の名が出てきた。

 ダラリア公爵は父親と同じ公爵で、今は大臣をしている大物。

 一応、オレも公爵家の嫡子だったのでダラリア公爵の息女とは顔見知りだけど、彼女はかなり高飛車だったのでオレのブラックリストに名前がある。


「販売額は大金貨2000枚にございます」

「かなり吹っかけたな」

「他に2家から購入したいと申し入れがありまして、最終的に入札を行いました。その結果、ダラリア公爵が大金貨2000枚で落札されたのです」

「まあ、無傷のレッドドラゴンなど、簡単に購入できないからな」

「はい。私も長いこと商いをしておりますが、無傷となると聞いたことがありませんので、その希少価値を分かっておいでのようです」


 それでも大金貨2000枚までいくとは思わなかった。

 オレの取り分が50パーセントだから、大金貨1000枚。笑いが止まらないね。


「それと、冒険者ギルドに依頼を出していた貴族が、冒険者ギルドに怒鳴り込んだそうです」

「かなり古そうな依頼だったからな。塩漬けにされていたのが、ジョンソンのところでレッドドラゴンを売り出したんだ、その貴族は怒り心頭だろうさ」

「はい。それで冒険者ギルドからレッドドラゴンの仕入れ先の照会がありましたので、予定通りにしておきました」

「了解」

「しかし、今さらですが、サイ様のお名前を出して、良かったのですか?」


 ジョンソンには、冒険者ギルドから照会があったらオレのことを教えて良いと言っておいた。

 ジョンソンがオレのことを秘密にすれば、ジョンソンと冒険者ギルドの間に溝ができてしまう。それはオレの望むことではない。


「構わないさ。隠したっていずれは分かるだろうし」


 冒険者ギルドだって、ジョンソンの店にレッドドラゴンを持ち込んだ人物のことを調べるはずだ。

 隠したところで、時間の問題というわけだ。


「それじゃあ、また闇の曜日で」

「はい。お気をつけてお帰りください」


 代金は次の闇の曜日にもらうことで、レッドドラゴンを引き渡した。


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 翌朝も朝から患者たちの列ができていたので、予定の時間よりも少し早くに治療院を開ける。


「ここはお化け屋敷だったのに、先生はお化けを退治したのかね?」


 50くらいの恰幅のよいおばちゃんが、開口一番これだった。


「まあ、なんとかしたよ」

「ほへー。先生は回復魔法の腕も一流なら、退魔師としても一流なんだね」

「そんなことはないさ。それよりも、少し痩せないと膝への負担が減らないからな」

「乙女に痩せろとかよく言うね」

「乙女だから食い過ぎるのか?」

「はいはい。善処するよ」

「善処ではなく、やるんだ。今度同じ症状できても治療しないぞ」

「そりゃないよー」

「だったら、10キロ痩せること。それで膝は一生もつ」

「分かったよ。そうするよ」


 おばちゃんは大きなお尻をブリンブリンさせながら帰っていった。


「ちょっとどいて、パルちゃん、これね、うちの畑で作った野菜だよ。先生とパルちゃんで食べてやっておくれ」

「ありがとう、マニシャさん」


 昼休みの頃になると、治療とは関係ない人たちが野菜とかを持ってきてくれた。顔に見覚えがある人たちなので、以前に治療した人だと思う。

 昼休みだけど、患者の列はまだまだ続く。だから、昼食を食べずに治療をしていると、何やら外が騒々しい。

 窓からそとを覗くと、患者とは思えない5人の男たちが居るのが見えた。

 冒険者が大怪我でもしたのかと思ったが、雰囲気がかなり険悪のものだったので違うようだ。


 パルが外に出ていき、その男たちと話をするようだ。パルに任せておけばいいだろうと思い、治療を続ける。


 まだ10歳にもなっていない子供が、母親に抱きかかえられてきた。

 ただの骨折だったので骨を繋いで終わり。

 子供の場合、大人と違って下手に弄ると成長に影響が出るので、できるだけ最小限の治療に収める必要がある。


「わぁ、痛くない! 母ちゃん、痛くないよ!」

「先生、ありがとうございます。ほら、あんたもお礼を言いな」

「先生、ありがとう!」

「ただの骨折だ。元気が良いのはいいことだが、やんちゃすぎると痛い目を見るから気をつけるんだぞ」

「はーい」


 子供の治療が終わったのと入れ違いにパルが戻ってきた。


「パル。外で何かあったのか?」

「いいえ、ゴミムシがいただけです」

「ゴミムシ?」

「気にすることはありません。それよりも、次の人を入れて良いでしょうか?」

「ああ、問題ない」


 あまり深く気にするのはよそう。

 そうやって、今日も夕方まで休憩もないくらい大盛況だった。


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