第5話

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 005_拠点探し

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 爺さんの領地から王都に帰ったオレは、まず拠点を探すことにした。


「家賃の安い一戸建ての家を紹介してくれないかな。できるだけ平民街と貧民街からのアクセスがいいところで」


 貴族街からは遠くていいからと、ジョンソンに聞いた。


「平民街と貧民街からのアクセスがいい場所ですか……」


 ジョンソンの店は不動産を扱ってないから、さすがに難しい話だったかな。


「ああ、そう言えば、あそこがありましたな」


 あるんかい!

 さすがにジョンソンは顔が広いな。


「それはどこに?」

「平民街と貧民街の丁度境になります。ただし、ちょっと問題がありまして……」

「言い淀むと言うことは、事故物件か何か?」

「事故物件なのですが、それ以上に厄介な物件です」

「ん?」


 事故物件以上に厄介? なんだそれ?


「それはマニシャース家の屋敷ですね」

「「うわっ!?」」


 急に声がしたので、オレとジョンソンは驚いて飛び退いた。

 声をかけてきたのは、パルだ。今まで大人しくしていたので、いきなり声を出されると驚いてしまう。

 パルは艶やかで美しい黒髪と褐色の肌をしたメイド服の美女。ダークエルフという種族で、とても胸が大きい。

 もう紹介する必要はなかったかな? でも、言いたいんだ。あの爆乳のことを。


「パル。心臓が止まるかと思ったよ」

「私などは、棺桶に片足を突っ込みましたよ」


 ジョンソンのその冗談は、冗談にならないから。


「気配を消したわけではありませんし、ずっとここに居たではありませんか、坊ちゃま」

「そ、そうだね……でも、驚くから、急に声を出さないでくれるかな」

「はいはい」


 納得していない返事だ。

 彼女の種族はダークエルフなので、オレが幼い時から容姿は20歳くらいのままだ。年齢は数百歳―――っ!?


「坊ちゃま。失礼なことを考えていませんでしたか?」

「い、いや、そんなことはないよ」

「それなら良いのです。でも、気をつけてくださいね」


 彼女が発する殺気で、オレの背中は冷や汗でびっしょりになった。

 年齢のことは口にしなくても考えただけで、彼女の殺気が発せられるのだ。年齢のことは考えてもダメなのを忘れていたよ。


「パルメリスは私の心臓を止めるつもりかね?」

「ジョンソンが簡単に死ぬわけありません。寝言は死んでから言いなさい」

「死んだら寝言など言えませんぞ!」


 ジョンソンとパルはかなり古い付き合い。よると触ると口喧嘩ばかりの仲だけど、実は仲が良い。

 昔からこんな感じで、それこそジョンソンが鼻垂れ小僧だった頃からの―――これ以上は考えてはいけない。


「ところで、そのマニシャース家の屋敷というのは、何? 何が問題なんだ?」

「これは失礼しました。私が紹介しようと思ったのは、パルメリスが言ったマニシャース家の屋敷で間違いありません。その屋敷は、20年ほど前にマニシャース一族が惨殺されてしまったのですが、それ以来……出るのです」

「出る……? それは悪霊か何かか?」

「その通りにございます。サイジャール様」

「しかし、悪霊なら神官に依頼すれば、浄化してくれるだろ? 金はかかるが、それで解決すると思うんだけど?」


 守銭奴でも神官は神官。悪霊の浄化に関しては、専門家だ。

 神官を名乗っているのに浄化できない人は、むしろ偽神官と言われると思う。


「過去に何度も神官に頼んで浄化を試みましたが、残念ながら神官が皆呪い殺されるほどに強い悪霊なのです」

「それで最近では神官もその屋敷に手を出さなくなったのか?」

「その通りです」


 面白い。その悪霊とやらを見たい。

 どんな悪霊なのか、見てみたいじゃないか。


「その屋敷はジョンソンのものなのか?」

「いえ、知り合いの商人が所有しておりますが、神官もお手上げの状況なので、売るに売れないのです。過去にその屋敷を購入して取り壊そうとした方がおりましたが、その方は数日後に命を失っております。その方の親族が貴族だったため、無理やり返品してきたと愚痴っておりました」

「その悪霊、オレなら浄化できると思っているのか?」

「創造の女神様の加護を得られたサイジャール様であれば、可能ではないですか?」


 ジョンソンは俺の加護のことを知っている数少ない人物だ。

 爺さんの片腕として、この王都にある複数の商会を束ねているから、知っておいたほうがいいと話してある。


「ふふふ。面白くて身震いするな」

「坊ちゃま、お漏らししないでくださいね」


 パルがオレの股間を押さえてくる。


「オレも15歳になったんだ。お漏らしなんかしないし、股間を触るのを止めてくれるかな」


 パルはオレが小さい時から、オレの面倒を見てくれている。しかし、彼女は主人のオレにセクハラをするんだ。それはもう、盛大に。

 普通、セクハラというのは、上の者が下の者にやるものなんだけど、パルの場合はそんなこと関係なくオレにセクハラをしてくるんだ。


「ウフフフ。恥ずかしがって」

「そりゃー、恥ずかしいだろ。人前で何してんのっ」

「ちっ。ジョンソン、貴方が居るからですよ!」

「冤罪だ!」


 ジョンソンの首筋に短剣が当てられ、ジョンソンがオレに助けを求める。

 仕方がないので、オレがパルを抱きしめる形で拘束するが、その時にパルがわざとオレの手に胸を当ててくる。

 手の平に収まりきらないパルの爆乳が、とても柔らかいのだけど、状況が台無しにしている。


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