第4話(人間関係)
プレゼンツ判定から二ヶ月、俺はそれまでと特に変わりのない生活を送っていた。とはいっても、プレゼンツに関する話題には少しだけ敏感になった。無関係だと思っていたけど、気にかけていれば、校内でもプレゼンツに関する噂は度々耳に入った。
まず、俺の通う高校は私立高校ではあるけど中堅どころで、名門といわれる高校程はテイカーの在学生は多くなかった。それでも、俺としてもかなり頑張って入学できた高校だから、テイカーが少ないというわけでもなく、プレゼンツが明確な生徒も何人かいた。
一番有名なのが、生徒会長の三年、
同じく、生徒会の会計、三年の
一方、嗣治先輩は本当に誠司先輩と兄弟かと疑いたくなるほど、言い方は悪いけど軽い先輩だ。告白されればプレゼンツや男女に関係なく誰とでも付き合うのに、結局は理想のギフトではないという理由ですぐに別れてしまう。ただ、顔がよく、恋人の間はとにかく優しいから、振られてもいいから一度付き合ってみたいという奇特な人間が後を絶たない。
俺が思うに、嗣治先輩のような方法をとっていても、普通にメイカーしか集まらないと思うのだけど、世間には最初から優秀なテイカーとパートナーになって早々に身を固めたいというギフトもいるらしいから、そういう人間を待っているのかもしれない。ただ、恋人がいても常にギフト探しをして自分から積極的にアプローチもするから、俺としては少し警戒している。とはいっても、俺の見た目では先輩のアンテナに引っかかる可能性はかなり低そうだった。
他にも、バスケ部の〇〇先輩はテイカーじゃないかとか、茶道部の〇〇ちゃんはギフトじゃないかとか、大声でプレゼンツについて話すのは非常識とされているけど、大半のメイカーにとっては対岸の火事なのか、噂は結構な頻度で流れていた。テイカーだと噂が立つ分には、あまり生活に支障はないけど、ギフトだと噂が立つと嗣治先輩のような輩がこちらの都合とは関係なく距離を詰めてくるから、かなり厄介だ。
ギフトだと噂になった一年の女の子は、アイドルのように可愛らしく青い瞳が特徴的な子で、所謂容姿端麗なことから入学早々ギフトの噂が立っていた。ただ本人はダブルなだけだとずっと否定してあて、校内ではトラブルもなかった。でも、『ギフトでは』という噂はなかなか沈下せず、それが外部にも漏れたのか誘拐まがいの事件が起きてしまった。彼女の場合、事件の相手は校外の人間で、しかも本当に彼女がギフトではなかったから、今は裁判沙汰になっているとかいないとか。そんな情報まで噂になるのだ。
この事件のことで初めて知ったのは、ギフトがギフトであることを隠すのが難しいのと同じくらい、ギフトだと疑われたメイカーがギフトでないことを証明するのも結構難しいということだ。管理局はプレゼンツの証明書を発行しているけど、偽物だといわれてしまえばそれまでだ。学生の間は未成年なこともあって、学校や国が守ってくれている面も大きいけど、高校生にもなれば体つきはどんどん大人になっていく。青少年健全育成条例はあるものの、テイカーとギフトの間においては、ギフトが未成年の場合であっても、保護者の許可や同意があれば本人に交際の意思がなくても、対象から除外されてしまう。それって人身売買じゃないのか?と思うし、この条例はギフトの間では長年問題になっているけど、なかなか改正に至っていない。
一方、ギフトであることが明確な先輩もいる。有名なのは、三年の華道部部長の日比野美香先輩で、すでにテイカーのパートナーがいて、婚約まで済んでいる人だ。日比野先輩の場合は相手が一つ上の卒業生で、在学中からの交際、すでに正式なパートナーとして一緒に住んでいるということを皆が知っている。通学も送迎付きで、かなり特殊な例ではある。ギフトの場合、噂は大抵『そうらしい』とか、『そうなのではないか』という憶測に留まることが多い。
かくいう俺は、本当に今まで通り、プレゼンツのいざこざとは離れたところで交友関係を築き、パソコン部の活動に勤しんでいた。素性のよくわからないクラスメートとは当たり障りのない会話しかしないし、仲の良い友人は小学校や中学校からの同級生が多く、両親ともメイカーであることが分かっている奴がほとんどだ。もちろん、俺みたいに両親も祖父母もメイカーなのにギフトになったという例もあるわけだけど、お世辞にも成績優秀な奴がいないから、そこは絶対大丈夫だろうと勝手に確信している。向うも向こうで、俺がまさかギフトだとは露ほども思っていないだろう。
パソコン部は全学年合わせても八人しかいないこじんまりとした部活で、オタク気質の強い部員しかいないし、良くも悪くも他人のプレゼンツを気にする人間はいない。部員は全員男子で、三年が三人、二年が二人、一年が三人で、一年の残り二人も中学からの俺の友人だ。入学当時は、部活に女の子がいないことや、同学年が顔見知りばかりということに少しつまらなさを感じたりもしたけど、今となってはそれに救われている。
もう一人の
公人とは別のクラスになってしまったけど、直哉とはクラスも同じなだから、休み時間にもよくつるんでパソコンやゲームの話をしている。こうして、当初の不安を他所に、俺の日常は至極淡々と平凡に過ぎていた。
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