第13話
「サツキ、力を抜け」
「んっ……こ、こうか?」
「そうだ。キミの体に入ってくるものを、拒絶せず、受け入れろ──待て、どうして顔を赤らめている」
「へっ……? あ、いや、その……なんか、ウィリアムの言い方がエロい気がして」
ゴブリンロードたちがいる広間の直前。
ここから先、あとはもう強襲を仕掛けるだけという位置まで来て、俺たちは突入のための最後の準備をしていた。
俺が呪文を唱えると、杖の先から放たれた魔法の光が、サツキの体へとしみ込んでゆく。
気をつけの姿勢でぴしっと立った少女に、俺が使った魔法の効果が宿った。
「お、終わったか? ……何も変わってねぇ気がするけど、何の魔法使ったんだ?」
サツキが手を握ったり開いたりしながら、そんなことを聞いてくる。
「秘密だ。魔法がないものと思って戦ってくれればいい」
「はあ……え、エロい魔法とか、掛けてねぇよな?」
「……だから何だそれは。決戦前にそんなものを使う必要がどこにある」
「だ、だよなー。あたしも自分で何言ってるか分かんねぇ」
顔を赤くして、たははっと笑うサツキである。
……本当に大丈夫だろうか、この娘。
俺の横では、シリルとミィが「色
ちなみにいま俺がサツキに使ったのは、
物理攻撃を弾く不可視の障壁を張る呪文で、ゴブリンロード程度の攻撃なら、直撃を受けても障壁が弾き返してくれるはずだ。
この障壁はダメージが累積することによって最終的には「割れる」のだが、そんなに何度も直撃を受けるような可能性はさすがに想定外なので、その点に問題はないと判断する。
ただ、この呪文を使ったことをサツキに教えてしまうと、彼女がどこかでそれを頼りにしてしまう可能性がある。
サツキの本当の実力が見たいのだから、余計なことは知らせないほうが良いだろう。
この呪文はあくまでも保険であり、今回のケースでは、戦術に組み込むべき性質のものではない。
「ではサツキ、キミの実力、見せてもらうぞ」
「あ、ああ。……でもなんか、ウィリアムに見られてると思うと緊張するな。大丈夫かなあたし」
「…………」
本当に、大丈夫だろうかこの娘。
不安が募ってくるが──まあ、いざとなれば、その場でどうにかする手段はいくらもある。
ひとまずは彼女を信じることとしよう。
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