第7話


 「ぼ、僕はおにぎりが、た、食べたいんだな」


 「ん?食べれば良いんじゃないか?」


 「椎名っ……違うんだ、違うんだよ。これは……お約束のネタなんだよ……」


 「さっぱりわからん……」


 「だからぁー、これは裸の○将の台詞で、あぁ、もう……ネタの解説をしなきゃいけないなんて、恥ずかしい事この上無しだよ……もう、海の底の貝になりたい……」


 「海の底の貝?」


 「うわぁぁぁん!椎名がいじめる!」


 「おい!人聞きの悪いこと言うな!勝手にいじめたことにするなよ!」


 「……と、まぁ、冗談は置いといて、今日のお弁当はおにぎりだ」


 「……おにぎり二個だけ?おかずも無しなのか?随分とシンプルなお弁当だな……」


 「いやぁ、寝坊してね……以下略」


 「そうかい」


 「そこで椎名に問題だ。さて、僕は何と何のおにぎりを作ってきたでしょう?」


 「……うーん、何かヒントはくれないのか?」


 「そうだねぇ、それじゃ、僕の好きなおにぎりの具を教えてあげよう。コンビニで売ってる定番おにぎりで僕が良く買うランキングだよ」


 「ほう?それじゃ、聞かせてもらおうかな」


 「……第一位は鮭かなあ?定番だよね。第二位は梅干し、そうそう、梅干しおにぎりと相性良いのはおかかおにぎりだと僕は思うんだよねぇ。つまりは梅おかかはあれば高評価だね。え?第三位はなんだって?うーん、シーチキンかなぁ?安いからねぇ。第四位はたらこか明太子、どっちを選ぶかはその時の気分かなぁ。そして第五位は……ジャジャーン!チャーハンおにぎり!」


 「……すまん、ツッコミどころが多数存在するんだが」


 「えー?何もボケてないよ?」


 「……まぁ、ぐだぐだ言っていても仕方ないか。それじゃ、鮭と梅干しじゃないのか?ランキングの一位二位の」


 「ふっふっふ……それで良いかい?」


 「当たっても外れても何もないんだろ、早く正解言って食おうぜ」


 「んもう、椎名ったらせっかちさんだな。わかったよ、それじゃ正解は……二個とも塩おにぎりだ!」


 「なんだそりゃ、コンビニで買うランキングだったか関係ないじゃないか」


 「だーかーら、寝坊したって言ったじゃないか!鮭を焼く暇なんて無いし、ちょうど家の冷蔵庫に鮭の瓶詰めも梅干しも無かったんだから仕方ないじゃないか!」


 「お前のうちの冷蔵庫の中なんて知らんって……」


 「もう、それじゃ、食べようか」


 「あぁ、そうしよう」


 そう言って僕がラップでくるまったおにぎりを取り出そうとしたら、目の前の椎名は珍しく登校前にコンビニで買ってきたであろうおにぎりを鞄から取り出した。


 「……椎名、それは何だい?」


 「ん?昆布のおにぎりだ」


 「昆布か……しかも二つとも」


 「なんだ、昆布嫌いか?」


 「いや、昆布嫌いじゃないよ?うん、ただ……コンビニで昆布のおにぎりを買うと損した気がするんだ……なんでだろう?」


 「そうか?変な奴だなぁ」


 そう僕のことを変な奴よばわりする椎名に同意するように隣の席の美少女、鳴海さんがこっそりと小さくコクコク頷いていた。そんな彼女の机の上には……珍しくお弁当ではなく、コンビニのおにぎりがのっていて……昆布のおにぎりだった。


 ……随分と二人は気が合うんだね。きっとただの偶然だと思うけど、何故かちょっと……もやもやした。

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