第4話
「外食の焼き肉の時にご飯を注文するなんて馬鹿だ、焼き肉は肉を食いに来てるんだから米頼んでどうするんだ……っていう奴とは鎖国だね」
「鎖国って……」
「焼き鳥をタレで頼むなんて分かってない……っていう奴とも同盟は組めないな」
「……そうなのか?」
「天ぷらも塩に決まってるだろう……って断言する奴はロケットに乗せて宇宙に発射した方が良いと思う」
「……なぁ、お前の過去に何かあったのか?」
そう呆れ顔で答える友人の椎名 雄二に僕は自分の溢れんばかりのタレへの思いを伝える。
「発明なんだよ!タレというものは人類の発明!焼き肉はタレの染み込んだ白米を食べなくてどうするのさ!?」
「まぁ、分からなくもないが……」
「きっと、昔はそこまで質の良くない肉を食うこともあったんだろう、そういうものを美味しく頂くためにタレという文化が発明されたんだと僕は思うね」
「そうなのかな?根拠なんてないだろう?」
「勿論、根拠なんてないさ!」
「どうして、根拠もないのにそこまで胸を張って言えるんだ?本当に面白い奴だ」
「ははは、ありがとう」
「まぁ、タレといえば鰻重のタレかな……あれだけでもご飯が進むよな」
「本当に!僕は思うんだよ……鰻って高いじゃない?だからさ、鰻重のタレだけがかかったお弁当をコンビニで安価で販売したら売れるんじゃないかってね!」
「……流石に売れるかなぁ?」
「甘いよ、椎名!人がこんなもの売れるわけないって思っていたものが発売されて今では定番化したものばかりじゃないか」
「そうか?」
「そうだよ!コンビニなんて始めはスーパーで定価で買えるものをわざわざコンビニで買うわけないって思われていたのにここまで普及したじゃないか」
「そう言われてみればコンビニってものはそうか。スーパーという広い所を歩き回って探すという手間を売っているんだろうな」
「コンビニの商品で言えば、ペットボトルのお茶なんてそうさ。最初はお茶なんてものは家でいれるものだって思われていたらしいけど、今では当たり前じゃないか」
「なるほどな、そういう意味ではミネラルウォーターもか。日本じゃ水道水を飲めるから売れるわけないって思われていたのに今では普通だからな」
「そうそう、あとはコンビニの白米だけのおにぎりとかさ」
「あぁ、塩むすびな。具が入ってないおにぎりなんか売れないって思われていたけどもう定番化してるもんな」
「カップラーメンのお供には変に具が入ってるより合うよね」
「そうだな、カップラーメンの汁に入れて雑炊にもできるしな」
「ははは、椎名。そんな食べ方してるのかい?」
「まぁ、たまにはな」
「そういう貧乏飯もたまには良いよね!いやぁ、僕も今日は寝坊して、両親は朝から仕事の為に家を出ちゃっててさ、自分でお弁当を作らなくちゃならない!しかし時間が圧倒的に足りない!……そういう訳で、今日のお弁当はタレだけご飯さ、わー……」
「……そういう訳なのか?梅干しとふりかけだけとかの方が良かったんじゃないか?今日のお前のお弁当はまっ茶色で少しびちゃびちゃしてるんだが……」
「……生憎と梅干しもふりかけも鰹節も切らしていてねぇ……仕方なく焼き肉のタレをかけてきたのさ……」
「……そうか、まぁ、頑張ったな」
「うぅっ、椎名、ありがとう!それじゃ、頑張った僕に君のお弁当のおかずを分けてくれるかい?」
「いや、それとこれとは話が別じゃないか?」
「なんでさー!?」
そんな僕たちの会話をさっきから黙ってぷるぷると震えながら聞いていた隣の席の美少女、鳴海さん。彼女を僕はじっと見詰めたら、彼女はさっと自分の小さなお弁当箱を腕で隠した……いや!?流石に本当に盗らないからね!?人のことを山賊とでも思ってるのかい!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます