第31話 僅かばかりの優しさが
言ってやった言ってやった言ってやった。
ざまーみろざまーみろざまーみろ。
自業自得。当然の報い。正当な結果。これ以上、わたしが考えることなんかない。どっちを選んでも、あいつらが勝手に決めたこと。わたしは何も悪くない。わたしはただ自分を守っただけ。じゃないと、あいつらはわたしのことなんて一ミリも考えてくれない。だから、自分で自分を一番にした。何か問題があるか。
部屋を出る直前、
「公爵様が紅蓮の間でお待ちです」
とルークが教えてくれたのでドレスのスカートを抱え上げて一目散に走った。脇目も振らずに走って走って走って、紅蓮の間の扉を開け放つ。部屋の真ん中で仁王立ちのパパがいる。ソファの前で座りもしないで立っている。わたしを待っていたんだと思った。
「怪我は大丈夫なのか?」
険しい表情。パパの後ろにマリアンヌも見える。ドレスを着付ける為に来てくれた。マリアンヌは心配そうにしている。やっと味方がきてくれたみたいな気持ちになった。
「何があったんだ?」
その言葉に一瞬静止したけれど、パパの声がじわじわ身体に染み込んできて、さっきより勢いよく駆けた。たくし上げるスカートの裾がずり落ちるのも構わずに走ったから、蹴躓づきそうになる。殆ど転がるみたいなわたしを、おろおろしてパパが迎える。直立不動だったパパは、ゆっくり屈んでわたしの顔を覗き込む。
「何があった?」
同じ問い掛け。この部屋に入ってわたしはまだ一言も発せていない。何からどう言えばよいのか。パパは話の辻褄が合わないことは、しつこいくらい何度も聞く質だ。ちゃんとわかるように説明しないと。悪口を言われたこと、嘘を吐かれたこと、怪我させられたこと、わたしがどんな目に遭って、何も悪くないのに傷つけられて、理不尽を突きつけられたか。兎に角全部言いたい。なのに、一音も出てこない。ぐちゃぐちゃ頭がこんがらがる。エリィが肩を震わせて、シーラがドレスを握りしめて、ルイーゼとフランソワーズがずるずる鼻を鳴らして、プリシラとカミラとローナとスザンナが泣いていた。よってたかってわたしを虐めたくせに。マールが来なかったら白を切り通したくせに。自分達のことばっかり考える屑のくせに。わたしは悪くない。本当に悪くない。あいつらがいきなり絡んできて、わたしを虐めた。悪意を持って、わたしを傷つけようとした。だから、わたしのしたことは正当防衛で誰が見ても正しい。今更謝るなんて狡い。あんなのは謝罪じゃない。それでもわたしは許してやるって言った。なのに、なのに、なのに……
「なんで、わたしが……いっつも、いっつも……!」
そうだ。全部わたしのお陰じゃないか。大事にならなかったのも、怒られなかったのも、今までわたしが我慢したから助かってきたんじゃないか。あんた達は何もしていないよって、平気なふりしてやったから。わたしが空気を読んだから。わたしが一人で嫌な思いを飲み込んだから。だけど、あいつらがわたしの気持ちを汲んでくれたことがあるか。わたしに目を向けて、気遣ってくれたことがあるか。だったら、わたしだって同じことをする。当たり前じゃないか。当たり前でしょ。それなのに……。胸に楔を打たれたみたいに苦しくて、辛い。なんでわたしがこんな思いをしなくちゃいけないの? ムカつく。ムカつく。ムカつく。
「なんでわたしばっかりぃ……なんでわたしが我慢しなくちゃいけないの!」
「誰がお前に我慢しろなんて言ったんだ?」
パパが言う。目が合う。わたしの話を真剣に聞こうとしている。聞いてくれる。パパの問い掛けが頭を巡る。
誰が言ったか?
百合子のお父さんとお母さん、学校の先生、道徳の教科書、それから、それから、
「マール様が言った!」
「殿下が?」
「そう。悪い噂を流されているから注意してって頼んだのに、全然聞いてくれなかった。お茶会開いて仲良くやれって。悪口言われても、淑女らしく我慢しろって。喧嘩になるからやられてもやり返したら駄目だって。でも、今日また悪口言われて、それでもわたしは黙って席を立とうとしたの! そしたら腕を引っ張られて怪我させられた。それで、それで、あの子達は、わたしがいくら言っても謝らなくて、藍の間に集められて、マール様が来て、王都から追放するって言われたら、やっと謝ってきたけど、わたしはお茶会に戻って皆にちゃんと自分達のやったことを告白するなら許すって言った。自分達のせいでわたしが怪我したことを話してって言ったの。なのに……あの子達は自分の立場が悪くなるから、皆に知られたくないって言った。何もなかったことにして許せって。わたしが黙っていれば丸く収まるからって。わたし一人が悪者になって我慢しろって! だから、嫌だって言った! だってわたしは悪くない! なんでわたしが我慢しなくちゃいけないの? わたしは何も悪くない。悪くないのに……なんでわたしが我慢するの!」
感情のままに一気に捲し立てた。でも、何一つ上手く伝えられていない気がした。もどかしくてイライラする。身体の底の方から真っ黒い焦燥感が迫り上がってくる。この感情をどう説明したらいいのか。わたしの気持ちを理解して、パパなら全部わかってよって、焼き爛れる熱の塊が目の前のパパに向かって膨れ上がる。睨みつけるわたしに、
「我慢はしなくていい」
パパが言う。わたしを肯定する言葉。望んだ答え。なのに釈然としなかった。なんで? と思った。なんでそんなことを言うのか。今まで誰もそんなことは言わなかった。爆発寸前の感情が行き場を失う。怒りの矛先を何処へ向けたらよいのか分からなくなる。ふわふわ浮いているのに、とても重いみたいな矛盾感。だって、我慢しなくていいわけない。好き放題していいわけない。協調性を養って、人には思いやりをもって、社会に適応していかねば、碌な人間になれない。だから、自分が我慢して済むことなら我慢しろって大人達はいう。そう教わってきた。パパはなんで言わないのか。わたしを止めなくていいのか。謝ったのだから許してやれって。親なら子供を正しい道へ導くべきじゃないか。わたしが悪い子になっていいのか。今更掌を返されても、と思う。百合子のやってきた事はなんだったのって、思う。結局やっぱりただの損だったんじゃないかって悔しくなる。否定されたくないのに、同意されると不快。納得できない。わたしはどうしたいのか。パパにどうして欲しいのか。自分で自分がわからない。
「……なんで我慢しなくていいの?」
「傷つけられたから相手に嫌だと言ったのだろう? それでいい。お前はヒュー公爵家の一人娘で誰にも気兼ねをする必要はない」
「……許すの断ったの悪くない?」
「悪くない」
「あの子達謝らなかったの。マール様が来たから謝っただけ」
「あぁ」
「わたしは意地悪で皆に説明しろって言ったんじゃないの」
「そうだ。余程腹に据えかねたのだろう? 言い返していい」
「公爵家だから?」
「違う。お前が優しい子だからだ」
優しい子。百合子だった時、死ぬほど言われた。優しい子だから我慢できるでしょう、怒らないでしょう、許してくれるでしょうって意味だった。人を押さえつけるのに都合のいい言葉。優しい子だからって、ご褒美なんてくれなかったくせに。優遇してもらったことなんてなかった。自己中な子より、我儘な子より、人を優先するわたしを尊重してくれよって何度も思った。それに、
「……優しくない」
勝手に優しい子にさせられてきただけだ。我慢して、自分を削って、へらへら笑っていたけれど、心の中ではいつも恨んでいたし、ムカついていた。神様がいつかお前らに天罰を下すぞって思ってた。本当は全然優しくなんてない。だから、今日だって、ざまーみろって思った。いい気味だって、やっとやり返してやれたって。わたしが本気になったらお前らはこんな目に遭うんだぞって。
「それも殿下に言われたのか?」
パパの顔が曇る。
「違う」
「じゃあ、誰に言われたんだ?」
「……」
誰にも言われていない。言われるわけがない。だって優しい子をやめのはさっきだ。ついさっき。今日やめた。人には我慢の限界があって、放っておいたらどんどん搾取してくる人間がいる。言い返さないと駄目で、やり返さないと舐められる。報われることなんてない。百合子の記憶が教えてくれた。だから、やめた。あいつらに相応の罰を与えてやった。わたしは正しいことをした。わたしは間違っていない。絶対にそうだ。絶対に。耳が熱くなる。身体が震える。ぶわっと涙が込み上げる。目の前のパパが滲んで映る。
「泣くことなんてない」
パパがわたしの頬を親指で拭う。余計に視界が曇っていく。
「……いい気味だって思ったの」
あいつらは、百合子を蔑ろにした子達によく似ている。まるでデジャビュ。だから、色濃く思い出す。だから、後悔しないようにやり返してやった。頑張った。パパだっていいって言ってる。あいつらは罰を受けたくないから縋りついてきただけ。許して欲しくて形式的な謝罪の言葉を述べた。虐げられる人間はいつもいつも優しいから、そうやって簡単に許されてきたんだろう。知ってるよ。お前らみたいな汚い奴ら。わたしは騙されない。流されない。わたしを馬鹿にしてあんなに醜悪にせせら笑っていたのに、みっともない。わたしに悪いなんて微塵も思ってないくせに。胸糞悪すぎてイライラする。エリィのせいだ。エリィが「許せ」なんて言うから。まるでわたしが悪者みたいに。そんなに助けたいなら自分が罪を被れ。「わたしが指示してサラ様に嫌がらせをさせました」って言え。できないなら余計な口を挟むな。わたしを悪者にすんな。ふざけんなよ。ふざけんな……!
「っうわぁぁぁああん」
なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、
「なんで、わたしが悪いの……!」
「何も悪くない」
ぎゃあぎゃあ泣き喚くわたしにパパが困惑しきった声を上げる。
「悪いもん! 悪い、悪い、悪い、悪い、悪いっ!!」
「誰がそんなことを言うんだ?」
誰も言わない。わたしが言う。わたしが思う。わたしがわたしに歯向かってくる。なんでだよ。大人の言うことを黙って聞いていた馬鹿な子供になりたくない。だから、わたしがしたことは正しいんだ。絶対に……!
「百合子が」
「ユリコ?」
「……いいことないって! 言い返さないと、ダメって! 損するって!……だから、わたしはちゃんとやった! ちゃんとやったの……!」
「その人が、お前に何かするように命じたのか? 脅されたのか?」
「違う! 違うっ! うわぁぁぁぁん」
「サラ、どうしたんだ? 酷いことを言われたから言い返したのだろう? 何をそんなに泣くことがあるんだ」
だって、パパはいなかったから知らない。見ていない。シーラがルイーゼが、フランソワーズとプリシラと、カミラもローナもスザンナも、
「っ真っ青な顔してた……」
皆、怖くて震えてた。わたしがやった。わたしのせい。思い知らせてやりたかった。わたしはお前らに都合よく扱われる人間じゃないって。遠い昔。わたしがわたしじゃなかった時。何回も頭の中で考えた。あの時も、あの時も、あの時も、言い返してればやれば良かったって。そしたらスカッとしたのにって。これは神様がくれたチャンスなんだ。だから、言い返してやった。ちゃんと、ちゃんと、なのに、なんで、
「……嫌だよぉ! 嫌だぁ……っ!」
苦しくて辛い。悲しくて痛い。もやもやが胸の中に広がって、わたしが汚染されていく。わたしが駄目になる。折角大事にしてたのに。今まで大切にしてたのに。全部崩れた。もうなくなった。もう、
「良い子じゃなくなった……! もう優しくなくなったぁ!」
「お前は優しい子じゃないか」
――だって、優しい子だったじゃない。
声が重なる。よく知っている。女の人。今朝見た夢の中にいた。百合子のお姉さん。
―― 私、あんたに言ったことあるのよ。びえびえ泣いて鬱陶しいから「そんなにムカつくなら言い返せ、先生に言いつけろ」って。そしたら逆切れして余計に大泣きしたの覚えてないの?「先生に言ったらあの子達が怒られるから無理」とか「可哀想だから言えない」とかなんとか暴れまくったじゃない。どういう正義感なのか意味わかんなくて笑っちゃったけど。あんたってそういう変な優しさ持ってたでしょ。いいとか悪いとか、損とか得とかじゃなくて。
今日は何故こんなにも百合子のことばかり思い浮かぶのか。あれは何の場面だったか。あぁ、そうか。結婚して引っ越すから荷物を整理していた時。アルバムが出てきて見ていたら、昔の記憶が蘇ってイラついて、それで愚痴愚痴言ってた時。
――そんなことあった? 全く覚えてない。というか、子供の頃の自分の気持ちなんて、もう忘れちゃったな。今思い返すと腹立つ事実があるだけ。でも、そう言われればそうだったかもしれない。じゃあ、まぁ……仕方ないか。
――急に素直に納得したわね。逆に不気味なんだけど。
――いや、虐められたくないから怖くて言い返せなかったって思ってたんだけど、優しい気持ちがあったなら、それはそれでいいかなって。世の中のことを何も知らなかった自分が可哀想だって思ってたんだけど、違っていたならいい。ムカつくものはムカつくから、永遠にムカつくけど。でもまぁ、なんやかんや言って過去に戻っても、本当にやり返すかと言われたら微妙だけどね。もっと角が立たないように上手いことやるよ。妄想する時は、後のことまで考えてないから、好きに言えるけど、実際はその後も続いていくわけでしょ。気まずいのは嫌じゃん。そういう意味では確かに他人事かも。
「うわぁぁぁぁん」
「サラ、何が気に入らないんだ?」
「わたしは嫌な奴になった! わたしは最低の屑になった!」
「……何故そう思うんだ? 怪我させられたんだろう?」
そうだよ。あいつらが悪い。全部悪い。でも、
「意地悪してやろうと思ったの! 皆の前で謝れって言ったのは、本当は意地悪なの!」
あいつらが嫌なら他にやり方はあった。パパに相談したら、絶対にわたしと関り合わないようにしてくれた。お茶会に招待しないこともできた。でも、しなかった。あいつらを吊し上げて人前で断罪してやりたかったから。だって、せっかく生まれ変わった。きっとその為に記憶が戻った。百合子みたいになりたくなかった。
「……ちょっとくらい我慢しようって、これくらい大したことないって……いつも……でも、もう嫌だって思ったの」
自分に言い訳して、その場をやり過ごすと、後でとんでもなく惨めな気持ちになるんだ。怒りが湧いて、言い返してやればよかったって。それで「これくらいのこと」が段々溜まっていって、振り返ると怒りの塊に代わって、だから、百合子はあんなにもイライラしてた。
エリィに「無口ですね」って言われた時も、シーラに無礼な態度を取られた時も、本当は聞き流せないことじゃなかった。イラッときたけど、場の空気が悪くなるし、別にそこまで目くじらをたてることでもなかった。でも、わたしは一ミリも我慢する気がなかったから、思っていることを口にした。きっと、わたしがあの日、シーラに言い返さなければ、今日の出来事は起きなかった。恨みを買わなかった。マールが言った通り。でも、わたしはそれにも死ぬほど腹が立った。わたしがちょっと反撃したら、こんな報復を受けるのか。わたしには黙ってサンドバッグになれってことか。何故、我慢するのがわたしでなければならないのか。
「だって……あの子達は、わたしのこと傷つけるから……」
体温が上昇して声が震える。言いたくないことを言っている。本当はもうずっと悲しいんだ。虐められるのが怖かったから、ハブられるのが嫌だったから、ずっと我慢して、でも、それだけじゃなくって、わたしは、わたしは、
「……優しい気持ちがあったの……怒られないようにしてあげようって……恥をかかないようにしてあげようって……」
わたしは打算的だし、無条件に親切になんてできない。でも、いつだってちゃんと、
「優しい気持ちがあったの……!」
踏みつけられて、蔑ろにされて、我慢することを当然みたいに思われて、どうせ言い返さないからいいだろうって甘く見られて、なんで? って悲しくて泣きたかった。親切にしたら親切にされるって、尊重すれば尊重されるって思ってた。同じにしてくれない相手に物凄く傷ついた。良い事をしたのに邪険にされるのが恥ずかしかった。自分の価値がないみたいで苦しかった。他人を顧みないのが当たり前の人間がいるなんて知らなかった。だから、百合子は子供の頃の自分が可哀想で可哀想で仕方なかった。そんな奴等に心を砕く必要はなかったのにって。だから、もうやめよう。報われないことはやめようって。あいつらがどうなったって関係ない。そう思った。そう思ったから、言ってやった。あいつらに、だけど、だけど、だけど、
「うわぁぁぁん」
死ぬほど嫌な気分。最低最悪の気分。百合子のバカ。今更思い出したって、こんな時に思い出したって、
「言わなきゃ良かった! 言わなきゃ良かったよぉ……!」
わたしはわたしのせいで誰かが不幸になるのは嫌だ。誰かの為に自分だけが我慢するのも嫌だ。どっちも嫌で、道徳の教科書どおりにちゃんとして欲しい。
「嫌だ! 嫌だぁぁ! うわぁぁぁん」
パパは暴れ回るわたしを簡単に抱き上げる。されるがままに、わたしはパパの肩に顔を擦り付けて、ぎゃんぎゃん泣いた。
「何が嫌なんだ?」
「全部!」
「全部?」
「悪者にされるのが嫌! あの子達が泣いているのも嫌! 全部嫌!」
パパが黙る。わたしは言うだけ言うと再びパパの肩に顔を埋めて、泣きむせた。だって嫌なんだ。他人に蔑ろにされることも、気持ちを踏みつけられることも、わたしのせいで誰かが恐怖するのも、震えて泣いて絶望することも。自分がされて嫌なことは人にもしないし、されたくない。でも、世界はそういう風に出来ていない。わたしが親切で差し出したハンカチを、泥だらけの靴を拭うのに使って捨てる人間はいる。抗議しても「だったらハンカチなんて寄越すな」って言われる。そういう人間はいなくならないし、変わらない。だから、仕方ない。パパに言ってもどうにもならない。わかっている。ただの八つ当たり。だけどわたしは言いたいんだ。嫌なものは嫌だって。
「わかった。だったら、このまま帰るか? お前が嫌なことは何もしなくていい」
あやすような口調でパパが答える。それは流石に駄目なんじゃないか。パパがわたしと同じくらい無茶苦茶言うので、今度はわたしが黙るしかなかった。肩口から少し顔を上げると酸欠の脳内に空気が入ってくる。鼻水と涙でパパが湿っていく。パパの服はいつだって肌触りがいい。規則的に背中を叩く大きな手の感触。パパの肩越しに巨大な肖像画が見える。顔が怖いからあまり好きじゃない絵。ぼんやりした視界の中でも、やっぱり厳つい顔をしている。何かをした偉い人だって、昔マールが言っていた。わたしの記憶は一体どうなっているのか。いろんなことが混在してぐるぐる巡る。
「どうしたい? 帰るか?」
パパが今にも連れて帰りそうな勢いで尋ねてくる。マールに抑圧された時は、あいつらにとことんやり返してやろうと苛つく感情が膨れ上がったのに、真逆の気持ちが湧いた。まるで北風と太陽。
「……お茶会に戻る」
本当は嫌だ。凄く嫌。それでも、
「……皆の前で、謝らなくっていいって言う……」
他に選択肢がないように口から言葉が零れ落ちた。きっと感謝なんて全くされない。後でわたしの陰口を言いまくるに決まっている。考えるだけでムカつく。でも、王都から追放することも、皆の前で晒し者にすることも、わたしの中のモラルに反する。わたしは優しい人間じゃないから、攻撃されたら叩きのめしたい衝動が真っ先にくる。わたしがやったことを間違いだとも全く思っていない。ただ、わたしの心の下の奥の隅の方には、僅かな優しい気持ちが存在している。やり返したい感情の下の、人に嫌われなくて、恨まれたくなくて、罪悪感に苛まれたくない気持ちの中の、もっと奥の奥の奥の奥。ちょっと正義に似ている小さな優しさ。多分、今あいつらにお茶席で謝罪させたら消えてなくなる。そしたら、わたしは違う何かになる。わたしは、それが嫌だ。一番嫌だ。だから仕方ない。全てが叶わないなら、消去法を取るしかない。一番嫌なことを選んでやめるしかない。
「……そうか。偉いぞ」
パパがわたしの頭を撫でる。パパがいるからいいや、と思う。
「お前のしたことは、ちゃんと分かる人にはわかる」
どっかで聞いた台詞。涙が出る。だから、百合子のお父さんとお母さんは、百合子にそう言ったのかもしれない。百合子はちょっと自分のいいように記憶を捏造しているから信用ならない。それとも、わたしも、百合子と同じ年になった時、今日のことを「あの時やっぱり断罪すれば良かった」とイライラ思い出すのだろうか。大人になったら今の気持ちは忘れてしまうだろうか。そしたら、誰かが百合子のお姉さんみたいに、わたしに教えてくれるだろうか。やらないことには、やらない分だけ、そこに気持ちがあったこと。
「ドレスを着替えなさい。マリアンヌ、用意を」
パパの言葉にマリアンヌが反応する。パパはわたしを床に下ろして、胸ポケットからハンカチを取り出した。ぐちゃぐちゃのわたしの顔に柔らかな布地が触れる。濡れた視界が開ける。一部始終を見ていたマリアンヌは心痛な面持ちでこっちを見ていたはずなのに、目が合うと、ちょっとだけ笑っていた。
顔を洗って蒸しタオルで温めて、お気に入りの水色のドレスに着替えて、髪はポニーテールに結いなおして貰った。まるでお風呂上がりのさっぱり気分。あんまり悠長にしているとお茶会が終わるので、早々に藍の間へ戻る。
パパが付いて来ると言うのを取っ払って、マリアンヌにだけ一緒に来てもらった。あいつらが物理的にズタボロになっているから、わたしと同様に顔を洗って、それなりにどうにかしてあげるべきだと思ったからだ。
藍の間でマリアンヌがノックすると、室内にいた侍女が扉を開けた。入室すると女の子達はびくびくしていた。その証拠に、わたしの姿を目視すると跳ねるように立ち上がった。雰囲気は重いまま。退出した時と違うのはマールとルークがいないことくらいだ。わたしが近づくほど更に緊張感が張り詰めていく。
「あ、」
パチっと目が合うとルイーゼが小さく声を漏らす。不安な表情。進行方向の正面にいたから偶々視線が絡んだだけなのに、蛇に睨まれた蛙みたいに硬直している。なんでこいつらはわたしを下目に見て良いと勝手に決めつけたのか、今となっては謎だ。わざわざ聞くのも、意地が悪い。
不穏な空気と重い圧で、室内はほぼ地獄化している。例えば明るく優しいヒロインなら「わたしにも悪いところがありました」とか、にっこり笑って仲直りしたりするんだろうけど、流石にそんな下手に出る気になれない。どうしようか迷っていると、
「サラ様、」
シーラがぎゅっと噛んでいた唇を開いた。
「……酷いこと言って、怪我も……わたし……ごめんなさい。お茶会に戻って、本当のこと、」
「もういい」
咄嗟に遮ってしまった。瞳が滲んで声が震えているのが居た堪れなかったのと、二つの選択肢から選べばいいと言ったのに、ちゃんと謝罪したから。「お茶席に戻って説明すればいいんでしょ!」みたいな態度じゃないことに、なんか安心したから。でも、わたしの言葉を悪いように解釈したらしく、女の子達が一瞬で蒼白になる。それに今度はわたしの方が驚いて、
「もう説明しなくていい。顔を洗って、お茶席に戻ってくれたらいい。わたしは先に行くから」
と慌てて付け加えた。許すなら機嫌良く許せばいいのに、つっけんどんな台詞しか出てこない。わたしはいつからこんなツンデレ属性になったのか。だけど、無理に笑顔は作れない。晒し者にならずに済むのだから文句はないだろう、と上から目線でしきりに考えていると、ごめんなさい、と、有難うこざいます、がべしょべしょした声音で小さく聞こえてくる。バツが悪くて、そのまま踵を返した。後は、マリアンヌが女の子達を控え室に連れて行ってどうにかしてくれるはずだ。次にわたしが為すべきことは、お茶会に戻って「何もなかったよ」と空元気でアピールをすること。嫌すぎるが行くしかない。ストレス要因は早く解消せたい。急いで部屋を出ようとするが、
「サラ様!」
と呼び止められた。空気を読めよ、と単純に思う。声でわかったが、振り向けば案の定、エリィがこっちに駆けてきて、微妙な距離で止まった。
「……あの、わたし、……皆のことばっかり考えて……」
でしょうね、という感情の他に何も浮かんでこない。エリィを友達だなんて思っていなかったし、ムカついたけど傷ついたりはしていない。だから、謝られても困る。まぁ、まだ謝ってもいないのだが。ここでわたしが更に責めたら謝罪すると思うけど、それ、わたしにいい事あるか?
「別にエリィ様が気にすることなんてないです。いざとなったら、自分の大切な人の方の味方するのは、当たり前ですから」
答えるとエリィは、なんとも言えない顔をした。予想外の返事だったのだと思う。でも、今言ったのは偽りない本心だから、エリィにとって気に入らない答えでも、わたしの知ったことではない。わたしは言いたい事をはっきり主張するのを止めたわけじゃない。道の真ん中で屯している人間には「通してください」と言う。百合子みたいにこっそり他へ回り道はしない。でも、邪魔にならない程度であれば黙って横を通りすぎるし、他所の道にいる人間に「どけよ」とわざわざ喧嘩を売りに行ったりもしない。わたしは自分の歩きたい道を歩ければそれでいい。
「じゃあ、わたしは先に戻りますので。多分、皆、薔薇園の観覧をしている時間ですから、エリィ様も早く戻って是非楽しんでください」
わたしがペコっとお辞儀すると、エリィは何か言い淀んだ後、
「……有難うございます」
とだけ返した。
何を喋ろうとしたのか、ちょっとだけ気になったけど追求はしなかった。お茶会がどうなっているのか、今はそれが一番気掛かりだ。
扉の傍に控えていたマリアンヌに目配せして、今度こそまっしぐらに部屋を出る。重たい心を下げて中庭へ向かう。どんどん暴れ回りたい気持ちが膨れ上がる。怒りではなく後悔で。大声で泣き喚いたことが脳内で自動再生されて身悶える。皆、どう思っているだろうか。そればかりが頭の中を駆け巡る。
中庭のお茶席にはスタッフ以外誰もいなかった。その内の一人が、
「皆様、薔薇園へ向かわれました」
と教えてくれた。リカルドが予定通り進行してくれているので安心する。薔薇のアーチを潜って進んでいくと、段々笑い声が近くなる。丁度トンネルを出たところで、
「サラ様!」
とメリアナとオリビアとペネロープが駆け寄って来た。わたしのことを心配してずっと姿を捜してくれていたらしい。
「怪我は大丈夫? 折れたの?」
メリアナがわたしの包帯に視線を下げて不安そうに言う。
「ううん。薬を塗ったから巻いているだけ。大した怪我じゃないよ」
「良かった!」
「シーラ様達に何かされませんでしたか?」
厳しく教育されているから普段露骨に不快感を表さないオリビアが、眉を顰めて言う。
「平気。謝ったから、もういいことにしたの」
不問にしたけど別に許してないし、向こうも本当にわたしに悪いと思っているのかは謎だ。痛い目に遭ったから今後はわたしに何かしてくることはないんじゃないだろうか、という希望的推測な結果を得ただけ。でも、仕方ない。もし、また何かやられたらその時考える。だから、本当は言いたい悪口は山ほどあるけど、今は愚痴るのを止める。
「ちゃんと謝ってくれたんだね! 良かったね!」
ペネロープが明るく言う。四人のムードメーカーだ。誰もそれ以上根掘り葉掘り聞いてこない所に、柔らかな気持ちが満ちる。が、
「サラ様!」
花壇の前にいた女の子達がわたしの存在に気づいて、一気に緊張が走った。どう言い訳したら良いのか。メリアナ達は無条件にわたしを擁護してくれるけど、他の子達は違う。あれこれ聞かれたらどう答えればよいのか。ノープランで来てしまったことを後悔した。尤もシュミレーション通りに出来たことなどないのだが。
「サラ様! 有難うございます!」
不安に揺れるわたしの内心とは真逆に、晴れやかに感謝の言葉を投げられて余計に頭が白くなった。何が? という疑問符しかでてこない。もしかして、皆シーラ達に虐められていたのかな、と想像したけど、エリィの友達のアシーナやユミルも、嬉しげにお礼を述べてくるし、メリアナとオリビアとペネロープまで同調して「有難うございます」と告げるので困惑する。わたしは何か試されているのか。急に疑心暗鬼になる。
「グラン・ローズを頂けるなんて凄いです! サラ様がマール殿下にお願いしてくださったんですよね!」
男爵家のミラが興奮して言った。それで漸く御礼の意味は理解できた。でも、そんな話知らない。わたしは頼んでない。王家の薔薇は、叙爵や受勲の時に贈答される。或いは、王家からの特別な親愛の証として贈られる。つまりが貴族にとっての栄誉だ。お土産に持って帰ったら、多分女の子達より親が喜ぶ。ということは子供も嬉しい。わたしが大暴れしたことより、皆、そっちに夢中なるはずだ。
一体どうなっているのか。リカルドに確認しようと視線を彷徨わせると、こっちを見ている。予定にないことで、わたしが不安を感じていると悟ったらしく、何度か小さく頷いた。薔薇はプレゼントして大丈夫みたいだ。「それ手違いです」と断れない雰囲気だから、本当に良かったと思う。一方で、リカルドが勝手に指示するわけなどないから、許可したのがマールであることが否応なくわかって、複雑な気持ちになる。またもマールに助けられてしまったが、元々お茶会を開けと提案したのはマールで、最初からシーラ達に注意してくれたらこんなことにならなかった。責めたい気持ちと感謝の心が、七対三くらいの割合で鬩ぎ合う。次会った時、第一声は何と発したら良いのか。黒歴史が誤魔化されていることには、有難い以外ないのだけれど。
庭師が七人掛りで薔薇を切り取り花束に纏めあげていく。面白いくらい簡単に成形していくので、皆、驚嘆して眺めている。熟練の技だ。八歳の女の子が持つには大きすぎる絢爛豪華な花束が次々に完成する。ケチケチしていないのが王族らしいな、とどうでもよいことが現実逃避するみたいに思い浮かぶ。結局、子供が運ぶのは重すぎ為、花束は各自の屋敷へ配送することになった。
その後のことは、万事筒がなく進んだ。再びお茶席に戻って、お菓子を食べたりなんだりして平和な時間が流れた。途中でエリィやシーラ達も帰ってきた。お互い近くには寄らなかったけど、笑っているのを遠目で確認できた。表面上は全部元通り。きっと本当の本当は皆、思うところがあるのだろうけれど。
「本日は皆様、お忙しい中お集まりいただき有難うございました。初めてのお茶会で緊張しましたが、楽しんで頂けたなら嬉しいです。また、次の機会がありましたら是非参加して下さい。今日は本当に有難うございました」
応用力がないので最初に考えていた文章をそのまま口にして、騒ぎのことを完全にスルーしたまま、お茶会はお開きとなった。
帰り支度をする女の子達を、エメラルド宮の入り口で一人一人見送る。驚いたのは再びマールが顔を出したこと。わたしの隣にすっと現れたから息が止まるほどびっくりした。言葉を交わす前に、どんどん女の子達がやってくるので、お互い一言も会話しないまま、並んで別れの挨拶を繰り返した。
準備しておいた焼き菓子の手土産を渡しながら、にこやかに感じよく不自然じゃないように、件の女の子達に挨拶したことが、今日の気まずさのハイライトだ。
見送りが済むと宮内はしんとした静寂に包まれた。女の子が四十人集まっていた後だから、妙に物悲しく感じる。わたしとマールが二人取り残されて、中庭ではスタッフが片づけを始めている。礼を失するわけにはいかないので、取り敢えず、
「薔薇……有難うございます」
と頭を下げた。
「謝罪はさせなかったんだな」
「もういいって言った」
「そうか」
答えるとマールは笑った。それが物凄く癇に障った。
「言っておくけど、わたしのしたことは何一つ間違ってないから。わたし一人を悪者にしようとしていたの聞いたでしょ?」
「そうだな」
「そうだなじゃない! 全部マール様のせいじゃない! お茶会開けなんて言うから」
今更蒸し返しても仕方ない。助けてもらった恩もある。薔薇も貰ってしまった。でも、わたしは、エリィと仲良くできないことも、悪い噂を流されていることも、どうにかして欲しいとも言っていた。全部こいつが余計なことを言ったのが原因だ。接見禁止令なんて出して助けてくれたって遅い。
「仲良くできるならそれが一番いいだろう」
「わたしばっかりが我慢して? それ、仲良いって言う?」
「お前は最後まで非情にになれない。どうせ許すなら最初から争わない方がいいと思ったんだ。自分本位な人間はこの先も出てくるし、下らない連中に反応して、自分の評価を下げることは愚かだ。不必要な恨みを買う必要もない」
「そんなの理想論でしょ!」
勝手なこと言うな。分かった風な口を聞くな。わたしの気持ちはわたしのものだ。わたしの心はそんな思考回路でできていない。
「……わたしは、大きな船を持っている」
「船?」
「そう。全人類を乗せられる大きな船。それで、もし、全大陸が沈没することになったら、わたしはあの女の子達をギリギリまで船には乗せない。家族や友達や好きな人を先に乗せるし、あの子達より、全然知らない人の方を先に乗せる。あの子達は、うんと怖がって、うんと泣いて、わたしにしたことを反省して、後悔すればいい。ざまぁみろって思うし、自業自得だって思う。でも、仕方ないから最後には船に乗せてあげる。それを間違っていると思わない。それが、わたしだから。どうせ許すならとか、愚かだとか、言われたくない。そういう問題じゃないの」
本当はマールの意見が正しい。理想論が一番正しい。だって、理想なんだから。でも、できない。それを責められたくない。他人に蔑ろにされたことのないマール様には、理不尽に値踏みされる気持ちなんかわからない。別に同調を得ようとなんて思っていない。けれど、そんな船はないし、全大陸が沈んだら人類は滅亡する、とか返してきたらぶっ叩いてやる。
「わかった」
「何が?」
マールがわたしを見下ろして言う。一体何がわかったのか。お前は愚かだから、自分の評価を下げて暴れ回るのは仕方ないってことか。
「余計なことを言って悪かった」
一瞬、反応できなかった。虚をつくことばかり並べたてることに、無性に腹が立ってくる。全部今更の気がしてならない。
「そんな口先だけで謝られても意味ない」
「オレは口先だけで謝ったりしない」
確かにへらへら低姿勢に頭を下げたりするタイプではない。だけど、こいつの言うことは信用できない。あの日のことは忘れてない。わたしのことをなんとを言ったか。信じていたのに。そうだ。信じてた。マールがいるから寂しくなかった。なのに……。もし、記憶が戻らずにあの場面に出会したら、わたしは間違いなく前前世のサラちゃんと同じに絶望した。サラちゃんと百合子の記憶が痛みを緩和してくれなかったら、自分の殻の中に閉じこもった。シーラ達のことは「百合子の同級生と似ているタイプだから」という理由で必要以上の怒りをぶつけてしまった反省点があるけれど、こいつは違う。サラちゃんを虐げた張本人だ。わたしが変わらなければ同じ結果になる。わたしが変わったから、違う行動をしているだけ。こいつ自身は何も変化していない。実際、わたしの悪口を平然と言った。だから、今更謝るなよ。謝ったりするな。お前に謝られたくない。お前なんかわたしの、
――……じゃないから
「今、何と言った?」
「……」
「サラ?」
「……忘れた」
「忘れた? 今言った言葉だぞ?」
「だから、忘れたって! 兎に角、そんな謝罪されても無意味だから!」
「口が悪いぞ。令嬢達と話していた時からずっとだ。人前では控えろ」
「うるさい!」
「サラ! 何処に行くんだ?」
「パパが待ってるから帰る!」
一秒もここにいたくない。激しい動悸でくらくらする。頭が痛い。痛い、痛い、痛い。
「サラ」
「何!」
振り向くと目が合う。もうずっと会っていなかった人に会ったような気持ちになる。泣いて駆けつけたいような。よくわからない。胸が詰まる。多分、恐ろしく情緒が不安定なせい。身動きできない。息が苦しい。わからないんだ。本当に。わたしはさっき何と言った?
「偉かったな」
マールが告げる。何だそれ。そんなことを言ったって何も帳消しになったりはしない。わたしは、睨みつけたまま何の反応もしなかった。それをどう解したのか、マールは黙ってわたしと反対方向へ去っていく。後姿を見ていると、不意に、サラちゃんが死んだ後、マールはどうなっただろう、という疑問が胸をついた。当然、再婚しただろうし、サラちゃんのことなんてあっさり忘れて幸せに暮らしたんだろう。嫌だな、と思う。心底嫌だ。最上級に苦しんで、吐くほど泣いて、一生独りでサラちゃんの残像に縋って生きていて欲しい。わたしは、そうして欲しい。前前世が駄目なら、せめて今世で。サラちゃんが絶望した分だけ。わたしを裏切った分と一緒に。自分のせいで誰かが不幸になるのは嫌だけど、マールだけは違う。そうか。今、やっとわかった。わたしはマールに死ぬほどの後悔をさせたい。何をどうすれば良いのかなんて、まるで分からないけれど。
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