第29話 教師も侮れない
遂に始まったアイクとクロエの試合は、剣と剣を押さえつけながら動かない。
「くっ……」
「力では負けられないね」
余力を残しているアイクは顔にも余裕が見えるが、クロエの方は抑え込むだけで精一杯である。だが、状況を打破しようとクロエは動いた。
「フッ!」
「おっと!」
クロエは右足の蹴りを足に放つが、アイクは咄嗟に後ろに飛び退いて避ける。アイクはすぐに『
「『
クロエは突風で煙を飛ばし、目の前から向かってくる殺気の籠もった剣を横に体をそらすことで躱す。
距離が離れた二人は再び構えをとって相手を見る。
「どっちも魔法の発動にラグが殆どないな。流石教師と国王の娘だな」
カズキの言うラグとは、詠唱してから魔法が発動するまでの時間のことだ。二人は魔法発動までに殆どラグがないため、慌てることなく対応できている。
「でも力は完全に先生の方が上やね。なんか策がないとクロエの方は負けるやろ」
フィールドにいる二人はかなりのスピードで攻防を繰り広げているが、クロエの方は殆どが力負けで防戦一方である。
「はぁ……はぁ……」
クロエの方は顔に疲れが見え始め、息も乱れてきている。アイクはまだまだ余裕があり、汗はかいているものの息はあまり乱れていない。
「これで終わりかい? それでも充分強いけどね」
「まだだ……『
クロエは火属性と風属性の複合魔法である『
「ここだ!」
上に飛んだアイクを目にしたクロエは、アイクに向かって『
アイクはすぐさま『
だが、クロエはここで飛んだことが失敗だったと気づくことになる。
「これでおわ──なっ!?」
アイクは頭上に三つの『
「ぐっ……」
何とか耐性を立て直して着地するものの、ダメージが大きい為に立ち上がれなず、表情を歪ませる。アイクは着地したあと、服についた砂を払いながらクロエに近づきながら言う。
「いやぁ、焦ったよ。まさか複合魔法まで使えるなんてね。おかげでちょっと火傷しちゃった」
「余裕そうですね……完敗です」
「それでも君は特別特待生の資格は充分にある。合格だ」
二人は握手を交わし、クロエは特別特待生の資格を得ることができた。
「生徒には負けられない……って言いたいんだけど、二人にはそうも言ってられないね」
既にフィールドに降りてきている二人にアイクは視線を向ける。
フィールドに降りてきたカエデは、所々に傷があるクロエの怪我を回復魔法で治している。
「済まない。魔法を使わせてしまって……」
「全然かまわへんよ。クロエもなかなか強いやん」
「そうだな。アイク先生は爽やかな顔して魔法の技術はかなりのものだ。負けるのも無理はないさ」
負けたクロエを慰めるように話しかける二人に、クロエは自分が認められているのだと笑みを浮かべる。
「じゃあ次はウチがやるな」
「分かった」
「なんや、応援してくれへんの?」
「この状況だと応援はアイク先生に向けるべきなんだよ」
いくらアイクが強いとはいえ、カエデが負けるとはこれっぽっちも思っていないカズキは、応援をアイクに向けて送る。
「カズキはいけずやなぁ」
やれやれとなんとも感じていないカエデは、アイクの前に立った。
「先生は回復せんで大丈夫なん?」
「大丈夫だよ。ポーション大量に持ってきたし、死ぬことはないさ」
アイクは自慢げに腰につけているポーチの中にある、回復ポーションをカエデに見せつける。
「なんか殺されるみたいに言うてるけど、殺しはせえへんよ?」
「実力に差があるのは分かってるからね。本当は即合格でいいんだけど、僕が戦いたいだけさ」
「……先生はカズキに性格にとるわぁ。早死するで?」
カズキの姿をチラッと見たあと、笑って話すカエデ。アイクはカエデの発言に同意するように微笑むが、戦いたいという気持ちは抑えられていない。
「さて、ポーションも飲んだし始めようか」
アイクはカエデと距離をとり、剣を構える。カエデは武器を何も持たずに、真っ直ぐにアイクを見て構えをとった。
これより、アイクとカエデによる二試合目が始まる。
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