第20話 試験の為に王都へ
月日は流れ、カズキが転生してから四年と半年が経ち、試験まであと一日になった。
「むぅ……あかん、ウチの負けやわ」
「ははっ、大分競ってくるようになったけどまだまだだな」
フロストから王都は馬車で四日程かかるのだが、カズキとカエデは商人の馬車に護衛役として乗せてもらっている。
そして馬車で何をしているのかというと、カズキが錬成魔法で作ったオセロをしている。この世界で暇をつぶすとなると出かける事ぐらいしか思いつかなかったカズキが、オセロなら簡単だと頑張って作ったのだ。
「全然勝てへん……ウチの色十個ぐらいしかないやん」
オセロに使っている材料は木と磁石で、オセロ盤の中と駒に磁石を埋め込んでいるため、馬車の揺れでオセロの駒がバラバラにならない。
「オセロは得意だからな」
「納得いかへん、もう一回やろ」
「何度でもやってやるよ。負ける気はないけどな」
何故カエデまで試験を受けに来ているのかは、冒険者ランクに関係がある。
冒険者には一応誰でもなれるのだが、王立リアリアル学園の卒業証明書がなければAランクに上がることが出来ない。サラがAランクなのも、実績と学園を卒業しているからなのだ。
そして今回、一応学園に入学するのに年齢は問わないので、学園を卒業はしておこうということでカエデは入学試験を受けに来ている。
「そういえばさ」
パチンと決めたところに駒を置きながらカエデに問うカズキ。
「どうしたん?」
「なんで今まで学校行ってなかったんだ? 東方には学校とかなかったのか?」
「ウチは母様から色々教わってたし、学校なんか行く必要なかったんよ。でもどうせやったらSランク冒険者になってみたいやん」
「なる程な。まあ正直カエデなら十五歳でも全然通じるよな」
正直カエデの見た目は二百歳を超えているようには見えず、年齢を言わなければ十五歳でそのまま通じてしまう。
遠回しに幼いと言われている事にカエデはムッと口を尖らせる。
「どうせウチは小さいわ」
「いや別に馬鹿にしてる訳じゃない。むしろ褒めてるまである」
「なんか釈然とせーへん褒め言葉やけど……まあええわ」
カエデは座った状態でカズキの横に移動して、カズキの頬にキスをする。
「ウチは小さいから、カズキが守ってな」
「おう、任せとけ。……敵うやついんのかな……」
「王都の近くにあるダンジョンの深層やったらいっぱいおるわ。王都の高ランカー集めたパーティーでも苦戦してるんやから」
この世界の各地にはダンジョンがある。ダンジョンを進んでいくと最深部にはそのダンジョンのコアとなる魔石があり、それを壊す事でダンジョンは消滅する。
ダンジョンは極稀にスタンピードが起こる危険性もある為、各地ではダンジョンを攻略して少しでもスタンピードの時の負担を減らそうと動いている。
「まあ安心しいや。今のカズキに敵うやつなんかそうおらんわ」
「そうか……けど、楽しみだな」
「顔がニヤけとるで。ほんま戦闘好きやなぁ」
「前は野球が好きでやってたからな。それの穴埋めみたいな感じになってるんだよ」
地球にある野球やサッカーのようなスポーツはこの世界に存在していない。今までは野球が好きだったのを、カズキは自然に戦うことで野球が好きだった心を埋めているような感じだ。
「二人共、もうすぐ着くぞ」
「分かりました」
馬車が向かっている方を見ると、巨大な外壁が見える。
「デカいなぁ……流石王都」
「百年前ぐらいに来たんが最後やったけど、また広くなってるなぁ」
この王都でどんな人に出会えるのか、カズキはワクワクしながら王都の門をくぐった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます