第16話 刺し身が食べたい
転生してから三年が経ち、カズキはすっかり異世界の生活に慣れつつあった。
食に関しても、自分は言わずもがなでサラも料理が出来る。カエデにも料理を教えていたおかげで全員が料理が出来る状態で、その日その日で当番制にもなっていた。
今日はカズキが一日ご飯を作る日なのだが、カズキは少しだけ不満が溜まっていた。
「どないしたん? 何か不満そうやけど」
カエデはカズキ特製のポテトサラダを食べながら言う。
何故ポテトサラダを作れたのかというと、カズキの試行錯誤の結果、マヨネーズを作る事に成功したからである。
元々料理が滅茶苦茶上手いという訳ではなかったが、ポテトサラダや唐揚げにマヨネーズをつけて食べるのが好きだったカズキは、マヨネーズ作りに奮闘した。
材料はある程度理解していた為、あとは作り方の問題だった。そして二日程ゆっくりと作っていると、ようやくマヨネーズ完成したのだ。
「いや……なんでもない」
「もしかして何か食べる物に不満でもあるの? このマヨネーズっていうソースは凄く美味しいし、そもそも作ったのはカズキじゃない」
「まあそうなんだけど、そうじゃないんだよ」
カズキの不満の種が分からずに首を傾げる二人。
「……刺し身が食べたいんだよ!」
「「刺し身?」」
この世界では生で魚を食べるような食の文化がない。何処にも刺し身がある店が無いどころか、魚を取り扱っている店がフロストの街は二店舗しかなく、その二店舗も魚は焼き魚か煮物だけ。
「マグロみたいな魚はあるのになんで生で食べないんだ……」
「魚なんか生で食べて美味しいん? 生臭そうやけど」
「分かってないなぁカエデは。そもそも魚の食べ方を焼きと煮るしか知らないなんて、この世界の人たちは可哀想すぎる」
「そんな事言われても、生で食べるなんて誰も思いつかないわ。でも、カズキがそこまで言うなら食べてみたいわね」
サラは刺し身に興味をもったようだ。カズキは次にカエデの方を見る。
「食べてみたいけど……生って危なくないん?」
「そうね、魚は生で食べるとお腹を壊すって昔から言われてるし、ここらへんで生で食べてる人なんて誰もいないわよ?」
(……あ、寄生虫とかいるの知らないのか)
昔に魚を食べてみた人が偶々寄生虫でもいてお腹を壊し、生で食べてはいけないと広がったのだろう。その事に気がついたカズキは、
「多分それ『
「そんなんおるんやなぁ。あ、カズキの鑑定魔法で確かめれるんとちゃう?」
「そうだな……偶には遠出して海の近くにでも行ってみないか? なんか魚の話ししてたら食べたくて堪らなくなってきた」
カズキは刺し身が好物だったせいで、三年も食べていないとなると流石に我慢出来なくなっていた。
サラとカエデは刺し身に興味は持っている為、少し考えたあとの二人の答えは同じだった。
「ええよ、ウチも興味湧いてきたわ」
「私もいいわよ。偶には旅行に行きましょうか」
こうして、カズキ達は旅行に行くことが決定した。
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