第34話 それ


「え?」


 空には岩のようなゴツゴツした体。

 翼がついており、空を飛んでいる。

 これはドラゴン??


 もう一つ空に飛んでいる影がある。

 人

 そう人だ。

 体から血を空へ撒き散らしている。


 誰だ? 

 俺たち以外人がいたのか?

 と疑問に思ったがすぐそれはなくなった。


 人より先に紫色の、見覚えのある帽子がひらひらと俺の元へ落ちてきた。



「……え」



 思考が停止する。  

 これは師匠のもので、

 空から落ちてきて、


 ……



「師匠!」



 あの人の影は師匠だ。




▼△▼




「…ぅ!」



 アオイの声で目が覚めた。

 目が真っ赤になっていて、顔がぐしゃぐしゃだ。 

 どうしたの?

 そう言おうとしたが声が出ない。


 何故かアオイが私のお腹を必死に抑えている。

 そこに視線をやると、血の池ができていた。


 そっか……

 私はもう…

 助からない。


 意識が薄れていくのを感じる。



「…ょ………………ぇ…………。  

 ぃ…!………………………………」



 声がもう聞こえ……



「テルナ!」


 

 その声で私の意識が戻った。

 目を開き、周りを確認する。


 

 アオイ

 アオイがいる。

 そして空にドラゴンがいる。



「ァオイ…」



「はい」



 言わないと


 

「にげ………」


「逃げません。死ぬのなら俺も一緒に死にます」



 何を言って……



「師匠。いや、テルナさん。俺はテルナさんのいない世界で生きていけません」



 …………ダメだ。


 私はここで死に、君は進むのだ。

 前に。


 それが私のいや、私達の……



「テルナさん。俺はあなたのことが……」



 途中で途切れた。

 聞こえなくなったのか、

 否

 アオイが黙った。

 そして私の後ろを睨んでいる。


 どうしたのか?

 すぐに理由がわかった。



「グガガガガ」



 ドラゴンの鳴き声だ。

 アオイが私を抱き寄せた。


 なけなしの力でアオイガ見ている方に首を向けた。


 私は唖然とした。

 なぜならドラゴンが、何かに吸い込まれていたからだ。


 吸い込まれている方へ目を送ると



 それは真っ黒な影だった


 それを見ただけで息ができなくなっていた

 それはドラゴンを優に超える大きさだった

 それを前にして動くことができなくなった

 それは突然現れた

 

 それは……


 恐怖を具現化したものだった



 

 

 

 


 

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