第33話 伝えてません


 師匠が何処かに消えてしまった。


 どうしよう?

 怖い。

 助けて……


「はぁ〜」


 全く俺は他力本願になったな……。

 


 だが、師匠の転移魔法がなければ帰れないのも事実。

 さっきみたいに襲われたら死ぬ。

 それは俺自身よく分かっていた。

 

 なので、俺がやる行動は一つ。 



「隠れる」



 そして師匠が迎えに来るまで待つ。

 それしか今の俺には思いつかなかった。



 だがどう隠れる?

 使えそうなのは草しかない。


 …………


 よしこれだ!



 

 その男は何千年もの間、体に苔がついても、鳥の巣ができても、背中から木が生えても、微動だにせず一生を終えたのだった………。



 ってなりそうなくらい動いていない。 


 俺は今地面に寝そべり、上手い具合いに体全身が草で覆われている……と思う。


 土が服や、顔を汚してしまったのは癪だがまぁしょうがない。

 隠れられたと思ったら気が抜けてきた。


 ………


 …………   


 ……………

 


「ふがっ!…」



 ………!?


 危ない危ないこんな時に寝るなんて事さすがの俺でもするはず…な……い。

 うん。

 してないよ。

 断じてしてない。

 

 それより師匠はほんと、どこ行ったんだろう。

 消える前に魔力が感じとれたし、転移したのは間違いないんだけど……。

 


 まさか見捨てられた?

 いや、師匠がそんな事するはず……

 ない。

 ……

 あるのか? 


 

 俺を弟子にしてくれた人が

 俺を助けてくれた人が

 俺が好きになった人が

 

 そんな事ありえるのか……?


 て言うか、今デートしてるのに見捨てられるなんてことないはず……。



 帰ったら師匠に日頃の感謝で、

 ちょっと豪華な夕飯を作ってあげようかな?


 感謝を感じることは少ないが

 まぁ…感謝してることもあるからさ。


 俺を助けてくれた事

 俺を一人にしないでいてくれた事

 俺を元気づけてくれた事

   


 今思うといつもしてる師匠の奇行は、俺の事を笑わせるためにしていた事かもしれない。

 ド天然の可能性もあるのだが……。


 ただ言えることはあの人は、いい人だと言うことだ。

 あの人無しでは今の俺はない。

 

 思えば俺は師匠に何かお礼をしたのだろうか。

 言葉でしっかり伝えた事があったか? 


 ない。

 

 夕飯の時にでも俺の言葉で「ありがとうございます」と、伝えよう。


 

 そう思っていたら

 少し奥の、土が盛り上がった気がした。

 

 見間違いかと、目を凝らしていたら、物凄いスピードで黒い何かが空へ飛んでいった。


 慌てて見上げると

 

 人とドラゴンの様なのが空に舞っていた。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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