第32話 カウントダウン

 

 どれくらい寝ていただろうか。

 辺りが暗くてわからない。


 魔力があまり回復していない事を踏まえると、10分か20分程度だろう。


 このままではいけないと思う。

 だが眠れない。

 この洞窟の空気がそうさせているのだろうか。


 ここがどんな場所かわからないが、息が張り裂けそうな緊迫感に包まれている。


 来たときは気づけなかった。


 様々な死地を乗り越えてきたが、こんなにも「死」という言葉が頭に浮かんできたのは初めてだ。


 暗闇のせいなのだろうか。

 

 動こうと思えば動けるのだが、嫌な予感がする。

 この予感はだいたい当たるのだ。

 

 なのでどうしたものかと思案する。



 このまま寝たら、アオイをあの場所にほったらかしにしてしまう。

 あの子はまだ一人で戦う力を持っていない。

 さっき私が戦った奴と偶然遭遇したら、すぐ死んでしまうだろう。



「ふ~~…」



 深呼吸をし、

 決意を決め、

 力が出ないがゆっくりと立ち上がる。



 このままでは真っ暗でどちらが出口かわからない。  

 魔法を使う余裕がないが致し方あるまい。



「ット……」 



 私が考えた下位のさらに下位魔法。

 人差し指から小さな火を出し、松明代わりにする魔法。


 これを瞬間的に火の出力を上げ、辺を明るくする。



「見えた……」



 私が向いている方向が出口のようだ。

 火の出力を下げ辺が見える程度にする。



 これは一見便利な魔法に見えるのだが、決定的な欠点がある。

 それは、指が熱くて火傷してしまう言う事。


 魔法で多少は耐えれるものの10分もすれば火傷してしまう。  


 なのでこの洞窟を早く出なければならない。


 不格好になりながらも壁に手を付き、できるだけ早く歩く。



「っと……」



 何かに足をつまずいた。

 気になり、それに光を向けてみた。



 するとそこには私が先程苦戦した鋭い牙の魔物の死体があった。

 


 なぜここにあるんだ?

 私がこの洞窟に来たときもいたのだろうか?

 

 あの時は意識が朦朧としていて気づかなかった。


 だが、なぜこんなにも酷い姿になっているのだろう……。

 ここになにかいるのか……。



 そう不安になったが、考えるだけ体力の無駄だと思い思考を打ち切ろうとした



 その瞬間



 地面が盛り上がった。



「な!?……」


            

 私に考える余裕を与えずそれは来る。

 咄嗟に後ろへ飛んだ。

 だが遅かった。



「っぁ…………」



 鋭い何かが腹を貫いた。

 背中にも、とてつもない痛みが走る。



「っぐ……っぁ……」



 それは赤く鋭い眼光を向け、容赦なく上へと突き進んでいった。

 

 そこで私の意識が途絶えた。

 

 

 

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