第30話 運命と偶然


 私があの子と出会ったのは偶然だった。


 たまたまあの日、転移する場所を間違えペルルキアの森に来てしまったから。

 すぐ戻ろうと思ったのだが、あの鳴き声が聞こえてきたのだ。


 

『ギャギャギャギャギャギャ』



 どこからか聞こえたその鳴き声は、聞き覚えのある声だった。

 

 私がまだ、魔法使いと名乗る前、森で追いかけられて怖かったゴブリナが人を追い詰める時に、よく鳴く声だった。



 人がいると言う事が驚きだった。

 ここにいるとしたら私と同じ魔法使いだろうか。

 私は魔法使いになってまだ日が浅いので、まだ全員にあったことが無い。

 なので挨拶へ行こうと胸を躍らせながら、方向へ転移魔法を使った。


 

「なにこれ……」



 地面にはゴブリナ達が一人の足跡を追っている跡があった。


 それを見て私は疑問に思った

 なぜこの人は逃げているのかと



 私の知っている限り、魔法使いならこんな小者倒すのは容易なはずだ。

 だが逃げている様に見える。


 分からない

 なにか意図があるのだろうか。


 ………


 まさか魔法使いでは無いのか……?

 そう仮定すると筋が通る気がする。


 私の感はだいたい当たるのだ。

 


 考えていてもしょうがない。

 考える事が絶望的に乏しい事は私自身よく知っている。


 なのでいつも通り本能のまま行動することにした。



「こっちか……」



 私より大きい25センチほどの靴跡1人分とと、その靴跡より10センチ程小さい足跡が、見える限りだと20匹分あった。


 その足跡は色んな場所をぐるぐると回っていた。


 この人は、逃げることに必死だったのだろうか…何度か同じ場所を走っている。


 足跡は泥の中や、川をまたいでもなお続いていた。



 次第に足跡が少なくなっていき、遺跡のような場所に着いた。

 その時には一人の分の足跡しかなかった。

 


 足跡を見てみると、この遺跡に入っていったのが分かる。


 足跡を追っていたので疲れた。

 疲れたので帰ろうと、転移魔法を使おうとしていた時 



『ぎゃゃゃ』



 悲鳴が遺跡の奥の方から聞こえた



 魔物の声ではない。

 恐らくこの足跡の人の声だ

 


 一瞬私は迷った


 助けるか

 否

 かと



 私はたまたま転移した先で足跡を見つけ、好奇心のまま追ってきただけなのだ。

 助ける義理はない。

 


《 人生とは巡り合わせの連続であり運命によって紐付けられている 》



 私はかつて師匠が言っていた言葉を思い出していた。

 

 当時行っている意味がわからなかった。


 でも、どうしてだろう……今なら分かる気がする。



「っす〜〜……」



 ここか……


 私はそう思い覚悟を決め、声がした暗闇に足を踏み入れたのだった。

 

 

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