第29話 死の息
体のいたるところが痛い。
「はぁはぁ」
息をするのが精一杯だ。
アオイはおそらく大丈夫だろう。
マントを渡していて正解だったと過去の自分を称賛したいのだが、今は私のことを考えよう。
魔法で作った服はボロボロになり、もう本来の力は発揮できなくなっている。
何故こうもなってしまったのだろう。
あり得るとしたらあの鳥のくちばし部分だ。
物凄いスピードで来たのが見えたが回避しきれなかった。
あの鋭いとは言えないくちばしでどうやって破いたのか。
分からない
今はどうでもいい。
そう私は咄嗟に転移魔法を使ってしまった。
この魔法は以前アオイと使った、指定する場所に転移するものではなく、半径5kmのランダム転移という下位魔法。
なのでどこにアオイがいるのかわからない。
重い体を起こしあたりを見渡すと、ちょうど後ろに洞窟があった。
この状態で森を彷徨った時には終わりだな……
どこからまた敵が現れるかわからないから洞窟のほうが安全なのだろうか。
ここが安全なのか分からない
確認する体力が残っていない
不安に思いつつも、意を決し先が見えない洞窟へ足を踏み入れた。
▼△▼
どれくらい歩いただろうか…
途中意識が途絶えながらも歩いていた気がする。
ゾンビの様なおぼつかない足で暗闇の中を歩き続ける。
ポタポタと天井から水滴がたれている音が、不気味な雰囲気をかもし出している。
「ヒィーフゥー……」
息がまともに出来なくなってきた。
今すぐ倒れ込みたい。
だがもし、敵に跡をつけられていて私が倒れた瞬間、襲ってくるのではないか
襲われなくともこのまま死ぬのではないか
私の脳みそが悪い事しか考えられなくなっている。
だが、魔力枯渇になった時の一番の対処法は寝ること。
なので私は今、全力で休まなければならない。
ここがこんなにも過酷な場所だとは思わなかった。
師匠にも行くなと言われたが行ってこのザマだ。
合う顔がない
「っあ……」
何かにつまずき、倒れ込んでしまった。
立ち上がろうとしたが体がピクリとも動かない。
どうやらもう体力が残っていない
魔力も底をつきそうだ。
残りは下位魔法一回分程度だろうか
こんなに死を間近に感じたのはいつぶりだろう
――アオイに悪い事したな……
そう心の中で呟きながら、私はあの子との出会いを思い出していた。
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