第28話 アホ顔再び


 俺達はがマントを貰い、その後再び歩き出した。

 

 数刻経っただろうかある異変に気づいた。



「師匠…」



「うん。分かってる…」



 小声でそうやり取りし速歩きで歩く。


 異変とは臭いだ。

 先程までいた場所は自然の草木の匂いがしていたがここは腐臭がする。



 まるでそうこれは、さっきの死体と同じようなそんな臭いだった。



 俺と師匠の間で緊張が走る。


 

 何者かにすでに囲まれているのではないか

 縄張りに入ってしまったのではないか

 

 悪いことがいくらでも想像できる。



 ただ言えることは俺達は早くここから立ち去らなければならないと言うこと。



 師匠も分かっているか、速歩きだったのが小走りになりっていた。

 慌てて俺も後を追う。



 さっきから目に入るのだが、所々の木の幹に爪で引っ掻いたあとのようなものがある。

 ここに何かがいた証拠だ。


 

 だが俺達はひたすらに走り続けた。



 食べかけの木の実があっても

 服が木に括り付けられていても



 ただひたすらに走り続けた。



 それほどに、踏み入ってはいけない場所だと言う事が本能で感じ取れた。

 本能なんて初めて感じ取れたのだが。



 そうこう考えていたら少しずつだが、腐臭が薄れていくように感じ取れた。



 安心したのか、はたまた疲れたのか分からないが、師匠の走るスピードが落ちていく。

 


「かっぴー」



 不意に場とは不釣り合いの鳴き声が聞こえた。


 

 この鳴き声には聞き覚えがある。



 師匠と一緒に上を見上げたら、アホ顔が見える限りの木の枝にに止まっていた。

 

 気持ち悪い。



「「かっぴー」」



 何匹かが俺たちに気づいたのか、こちらを向き鳴いて来た。



「「「かっぴーかっぴーかっぴー」」」



 それは徐々に鳥から鳥へと伝染していき、やがてすべての鳥がこちらを向き鳴いていた。

 

 俺はその光景に唖然とし動けなかったが



「行くよ!」



 師匠に声をかけられ、歩き出そうとしたその瞬間



「アオイ!逃げ……」



 何か俺に言ってきたが、途中で聞こえなくなった。



 俺は一瞬何が起こったのか理解できなかった。

 周りが一瞬にして見えなくなったからだ。


 

 気づいたときには自分の周りには見えないバリアのようなものが張っていていた。

 

 その時鳥が突っ込んできたということがわかった。



 どうしたものかと思ったのだか、数秒で鳥達は飛んでどこかへ行った。

 


 その時、マントから魔力を感じ取れた。

 どうやら俺を守ってくれたのはこのマントだったらしい。



 俺は無事だ。

 だが、師匠はどうなっている?



 俺は一瞬悪い想像をしてまった。

 だが、師匠は鳥が飛んでくることを事前にわかっているようだった。



「大丈夫」



 自分に言い聞かせ、息を整えながら師匠がいたであろう場所に行く。



 この鳥たちは一体何なのだろうか。



 最初は愛嬌があり可愛いと思っていた。

 だが、ここにいる生物は食物連鎖の頂点と言ってもいいのだ。

 そんな鳥などいるはずがない。



 そうこう考えながら、師匠がいたであろう場所に着いた。


 だがそこにあったのは、血が染み込んだ白いハンカチだけだった。

 


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