第27話 他愛のない会話
「大丈夫ですか!?」
少し経った時、俺が師匠の方へ行った。
「うん大丈夫…」
どう見ても大丈夫の様に見えない。
息が荒く顔色が悪い。
さっきの戦いでなぜすぐ魔法を使わなかったのだろう。
使っていたらこんなにも体力を消耗せずにいれたはずだ。
「なんで魔法すぐ使わなかったんですか?」
師匠は息を整え神妙な顔をしながら答えた。
「あいつに魔力を吸われたから……。あんな魔物初めて見た…」
魔力を吸う?
とても俺には戦っている時そうは見えなかった。
まだまだ鍛錬が足りない証拠なのだろう。
だが、魔力の化け物の師匠がたった一体の魔物に魔力を吸われ、ここまで体力を消耗するのだろうか。
疑問に思ったが、今はそれどころじゃない。
「師匠、帰りましょう」
こんなに体力を消耗した師匠と、お荷物の俺では到底このままこの森を進めないと判断した。
また日を改め来ればいいのだ。
師匠の転移魔法を使って。
「いや進む」
………。
想定外の答えだった。
だが、俺には決定権はない。
俺は弟子で師匠はこの人なのだから。
「分かりました……」
渋々頷いたら師匠が
「これ、戦いの邪魔になるからアオイにあげる」
そう言い渡してきたものは、師匠のチャームポイントである紫色のマントだった。
「戦いの邪魔になる」
と言う事はまだ戦う可能性があるという事だ。
正直止めたい。
「帰りましょう」ともう一度言いたい。
だが、師匠の目にはまだ闘志が残っているように見えた。
俺はこの人の覚悟を踏みにじることはしたくない。
なので、
「ありがとうございます」
受け取った。
付けようとしたが付けれない。
どうしようかと思っていたところ、
「あははは」
口を抑え笑われた。
この人に笑顔が戻ったことはうしいのだが、笑われるのはちょっと嫌だ。
と思い、付けるのに苦戦していたら半笑いの師匠が近づき、
「ここにっ魔力をつけてみて」
「はい…」
端と端を持ちそう言われた。
ようやくその時これが魔道具だということがわかった。
道理でつけるところがないわけだ。
言われた通りの場所に魔力をつけ、肩にかけるとこの服とマントがくっついた。
取ろうとしても外れない。
どれだけ力を入れても外れない。
「あはははは」
また笑われた。
早く笑ってないで教えろよと若干おこりそうになったが、
「あの…これ、どうやったら取れるんです?」
恥を承知で聞いた。
するとまた笑いながら
「っ魔力っを外せばっいいんじゃない?」
っく。
気づかなかったことを恥ずかしく思いながら、マントのつけ外しをした。
笑われたのは尺だが、師匠が俺に大切なものを譲ってくれたのだ。
一度外したマントを魔力でつけ直し
「大事にします」
そういった。
すると師匠は
「はい、大事にしてください」
と、俺をからかっているのかわからないがそういった。
俺はこんな他愛のない会話がいつまでも続くといいなと心底思った。
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