第26話 一騎打ち


 あのあと再び歩き出したのだが、ふと気になり質問する



「これってデートなんですか?」



 ……俺には分からない

 なぜなら恋愛経験ゼロなのだから。



 師匠の事を女性として見始めたのが1ヶ月前。

 それまでは人として見ていなかった。

 


 なのでデートと言うものが何をするのかよく分からない。

 俺はカップルがする儀式のようなものだと自分の中で解釈している。

 なので森の中を歩き回るという行為がデートになるのだろうか?



「う、うんそうだよ」



 どこか焦っているように答えているように聞こえるのだが、これがデートなのか。



 まだデートの儀式を見ていない。



 元の世界にいた時、俺の確かな情報(ネット)から手に入れた情報なのだがデートと言うのは手を繋いだり、一緒にご飯を食べたりと、キャッキャウフフする事らしい。



 ご飯は毎日一緒に食べているのだが、手は一度も繋いだことがない。


 

 それもそうだ



 まだカップルではないのだから



 毎日一緒にいるので、告白するチャンスはいくらでもあったが勇気がなくて言えなかった。

 とゆうよりかは、告白したことによって何か変わってしまうのではないかという、不安が大きかった。



 俺自身この生活で満足しているのかもしれない



 この距離感が丁度いいのかもしれない



 だが、告白はしたい

 カップルになりたい

 そんなことを思っていたら、段々と恋心が高まっていった。



 こんなもやもやしたまま過ごすのは嫌だ



 このデートの終わりに師匠に告白しよう。

 


 そう決意し、前を向き直した時あったのは師匠の背中ではなく、犬の様な鋭い爪でそれでいて人間の様な五本指の手が俺の顔の目の前にあった。




「し…」




 俺が声を上げようとしたその時、その手にはナイフが刺さっていた。




「グォォォォ」




 顔に血のような生温かい液体が飛び散る。


 状況が理解できず師匠の方を見てみると、息を切らし鋭い目つきで俺に襲いかかろうとしていた狼のような二足歩行の生物と睨み合っていた。


 思わず、その緊迫した空気に一歩後ろに下がってしまった。

 


 だが、こんな時なのに俺が襲われそうになったらこんなに師匠が怒るのだと少し嬉しく思ってしまった自分がいた。



 そんな俺をおいて戦いが始まる。



 師匠が懐から二本のナイフ取り出し、逆さに持ち姿勢を低くした。



 一方相手もその動きに反応したのか、前傾姿勢になり下から相手を睨んでいる。



 ………



 しばらく沈黙が続いた。



 最初に攻撃をしたのは、師匠だ



 右側から、斬りける。だが、爪で塞がれた。


 それだけでは終わらない。

 一撃、二撃と連撃を繰り返しているように見える。


 速すぎて見えない。


 こんな師匠初めて見た。



 数秒経った時連撃がピタリと止まった。



 剣先を見てみると、上手く爪でナイフが固定されていた。


 更に衝撃の事実を知る


 師匠が圧倒していたように見えたのだが、体に傷がついていないのだ。



 まさかすべてその爪で受け流したとでも言うのだろうか?



 師匠がナイフを捨て後ろに飛び退く。


 狼の様な二足歩行の生物は「グルルルルル」と相手を威嚇しているのだろか、師匠を最初よりも一層鋭い目つきで睨んでいる



 次に動いたのは敵だった



 爪を武器に、斬りつける。


 師匠は、とっさにまた懐からナイフをとりだし何とか受け流しているように見える。



 少しずつ師匠が一歩また、一歩と押されている。


 敵は我武者羅に斬りつけているようでそうではない。


 だが、疑問に思った。

 なぜ師匠は魔法を使わないのかと。


 さっきのような見えない斬撃を打てば一瞬で片がつくのにと思っていたら




「ーファクシア」




 さっきとは別の魔法使った。


 だが先程とは違いその魔法は敵を絶命する威力には至らなかった。



 見えない斬撃なのだが、威力がまるで違う

 一太刀の浅い傷が相手に付いただけだった。



 だが、その時にできた敵の油断を師匠は見過ごさなかった。



 数秒で敵の懐に入り腹から深く下からナイフを入れ、相手を絶命にまで至らせたのだ。



 いつもの師匠だったら勝って喜ぶはずなのだが、今回はどこか違う。



 息が荒く、顔が色が悪い



 こんな師匠を前に俺はただ立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

 

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