第25話 尊敬します


 あれから20分ほど経った時、少し開いた所に出た。



 周りを見てみると木の幹のくぼみに藁のようなものが敷き詰められており、まるで誰かが寝たあとのような跡があった。



だが師匠は気づいていないのか、前へ進んでいく。




「師匠!これ見てください!」




 これが師匠の気になる事に関係があるのだろうかと思い言ってみた




「ん?」




 俺の声に気づいたのか振り返り俺が指した場所を見た。




「これ何の何の跡ですか?」




 しわを寄せ真面目に考えているように見える。



 ……


 ……


 ……



 長い

 そんなにこれがわからないのだろうか。

 俺よりも知識を持っているはずなのだが…



 「いや、長すぎ」とツッコもうと師匠の顔を見たとき何か人の様な影があった。

 目が青色に光っており、それは明らかにこちらを殺意全開で見ていた。




「師匠!」




 声を荒らげ全力で叫んだ。

 するとあちらも気づいたのかこちらに物凄いスピードで近づいてきた。



 流石に対応で出来ないと判断した俺は師匠を動かそうと手を掴んだが動かなかった。



 何をしてるのだと言おうと師匠を見ると、魔力が感じ取れた。


 

 どうやら魔法を打とうとしているようだとその時気がついた。



 そうなると俺は邪魔をしてはいけない。



 摑んだ手をおろし元いた場所に戻る



 段々とソイツが近づいてきた。



 逃げたい

 こんな思いしたくない

 手が震えているのが自分でもわかる。




「大丈夫」




 突然そう言い師匠が俺の手を握ってきた。



 顔を上げ師匠の方を見る

 すると目があった。




「大丈夫」




 2度目に言われたときにはもう震えが止まっていた。


 師匠の手と声は温かく、俺の恐怖心を解いてくれた

 


 すると突然




「―ファクス」




「グギャャャャャ」



 魔法が放たれた

 思わず目を瞑ってしまった

 こんな断末魔聞きたくない。



 ……



 5秒程で聞こえなくなった。




「終わったよ」




 師匠が俺の肩を叩き知らせてくれた。




「ありがとうございます」 



 

 俺がお礼を言ったら師匠は死体の方へ行った。



 俺もあとに続く。


 

 師匠が倒した奴はの周りには、赤黒い液体が飛び散っており奇麗な緑色の草を汚していた。



 その死体は見るに耐えないものだった。



 体から内蔵のようなものが出ており、四方八方から見えない斬撃のようなもので切り刻まれた跡があった。




「うっ…」




 嘔吐感が湧き上がってきた

 こんなグロい物の見たことがない。



 俺がうろたえていることに気づいたのか師匠が背中をさすってきた。




「すいません」



 

 申し訳ない。

 俺がやった訳じゃないのに見ただけで吐きそうになるなんて。



 俺って弱いな……




「良いんだよ。最初は私もこういうの駄目だったし謝ることじゃない」




 俺の目を見て語りかけてきた。



 強いな師匠は。



 このとき初めて俺は師匠のことを尊敬し




《 いつか俺も師匠のように強い人間になりたい 》




 と思った。


 





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